OCEANS

SHARE

iPhone XSからiPhone XRへの最も大きなコストダウンの要素は、ディスプレーだ。需給が逼迫し価格も高止まりする有機ELディスプレーの代わりに、液晶ディスプレーを採用している。アップルはこれに「Liquid Retinaディスプレー」と名付けた。
液晶ディスプレーを採用しても、前述のようにTrueDepthカメラを搭載するため、これを避ける「ノッチ」と呼ばれる部分も用意しなければならないし、デバイスの縁までディスプレーを敷き詰めるデザインを実現しなければならない。そのため、端末のフチに沿うように角を丸めてカットしたり、ノッチを避ける形状を美しく整えるための苦労が絶えなかったという。
ノッチがあるスクリーンにおける有機ELディスプレーのメリットは黒に出る。消灯=黒であるため、ノッチと黒い表示が同じように見える。しかし液晶の場合、黒の表示はバックライトを遮るため、輝度が明るくなれば黒に白がにじんでくる。
iPhone XRでは、50%前後のディスプレーの明るさまでならば、しっかり光をブロックし、ノッチとディスプレーの黒表示の差がほとんど感じられない。輝度をそれ以上上げるとディスプレー部分とそれ以外の差が認識できるようになる点は、有機ELを採用するiPhone XR Maxとの違いと言えるだろう。また、ディスプレーの解像度はフルHDに届かず、1792×828ピクセルに留まっている。横長に構えると、映像のサイズは短辺の長さに依存するため1080pに届かず、720pを上回る程度の解像度だ。
このディスプレーのドットの細かさは、iPhone XSやiPhone 8 Plusに劣るが、326ppiというドットピッチはiPhone 8と共通だ。このサイズで問題を感じていなければ、長さ・幅が拡大しただけなので、iPhone 8までのiPhoneで精細さに問題を感じなければ、iPhone XRも快適に利用できるはずだ。
6.1インチという新しいサイズは、5.8インチのiPhone XSでは対応していなかった画面分割もサポートしている。メールやメッセージ、メモ、設定などのアプリを横長に使う際、メニューやリストとコンテンツを同時に利用できる。

カメラには新たにポートレートモードを採用

iPhone XRのコストダウンのもう一つの要素はカメラだ。iPhone XRからは望遠レンズが省かれ、26mm/f1.8(35mm換算)のカメラが1つ用意された。センサーはiPhone XSで採用されたものと同じ、大型化、高速化された新しいセンサーだが、レンズは新しくデザインされたものが採用されている。
iPhone XRのポートレートモードは、広角かつ明るいレンズで利用でき、iPhone XSよりむしろ使いやすかった(筆者撮影)。
望遠レンズがないため、ズームしたいときはデジタルに限られ、倍率も望遠レンズを併用したものよりも限られる。この点はiPhone 8以前の4.7インチモデルのiPhoneの使い勝手と大きく変わらないだろう。
しかし新たにポートレートモードが採用された。望遠レンズがないため2つのカメラを使って被写体と背景を分離する仕組みではないが、iPhone XR向けにアルゴリズムを追加して、機械学習的に被写体と背景を切り分ける仕組みとなった。


3/3

次の記事を読み込んでいます。