PREMIUM BRAND × DAILY STYLE
DIOR HOMME ディオール オム
11年にわたりメゾンを率いてきたクリス・ヴァン・アッシュが、今シーズンをもって退任する。そのラストコレクションは、ディオールへのオマージュに溢れた、特別なものになっている。
若さと成熟。まさに37.5歳が持つ二重性に着目した今季のディオール オム。その息吹を感じる2つのスタイリング。
赤×黒のボーダーニットを合わせたタイトなグリーンスーツや、同じくグリーンのリアルファー付きのモッズコートには、どこかユースカルチャーのムードが漂う。ピリッと張り詰めたような緊張感が、夜の街によく似合う。
ブランドを象徴する「スカー」のステッチで閉じたラペルホール、4Bの変形ダブルブレスト、スーツの芯地を思わせる生地を使ったフェイクレイヤード。テーラードにはまだ遊ぶ余地がある。そんな意気を感じる仕様の数々。Vゾーンは、黒シャツの上から着たニットポロで飾った。
1947年、ムッシュ ディオールが初めてのオートクチュールのショーで発表した「バー」ジャケット。メゾンの伝説的なアイテムを再構築することで、メンズのアイコン的存在であるブラックスーツは新鮮さを取り戻す。ムッシュへのリスペクトを込めた、クリス・ヴァン・アッシュのアプローチが秀逸だ。
コートを着た男性●キャメルと黒のツートーンデザインがアウトドアライクなナイロンコートに、トライバルモチーフのジャカードニットをイン。仕上げは同系色のスラックスで。モードであっても、アウトドアであっても、トラッドであっても、好きなものを好きなように着る。このミクスチャーの手法はストリートで学んだこと。それが我々のリアルであり、変わらない価値観の根底にあるものだ。
ドロップショルダーの短丈ブルゾンの背面には、左胸と同じくディオールのアトリエのアドレスが刺繍されている。その下にあるのは、レイブシーンの象徴という“タトゥー”モチーフだ。時代を変えた’90年代ムーブメント。その熱狂に向けたクールな眼差しが、次なるファッションのうねりを作り出す。
田邉 剛=写真 荒木大輔=スタイリング 松本和也(W)=ヘアメイク