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房総半島からアゼルバイジャンへの挑戦


オーガニックゆえにコストも手間もかかる手絞り豆腐。当然、うまくいくことばかりではない。
「豆腐は生産に限りがあるので明日の売上どうしようって頭を抱えたこともあるし、お客さんがあまり来ない日だって、もちろんあります。でもそれで不安に引っ張られたくないから、努力する時間を増やすようにしています」。
中途半端なことはせず、自分のやりたいことを突き詰めた仕事が、安藤さんの日々の自信にも繫がっているようだ。
安藤さんは揺らがない。再婚に踏み切ることに不安はなかったのかと尋ねた際も、はっきりと断言した。
「生きるってことはしんどいことも多いけれど、それでも家族や愛する人と一緒にいられることは何にも代え難い素晴らしいことだと僕は思っています。だから再婚するときも、ネガティブな感情は一切なかったですね」。
現在、安藤さんは新たな挑戦として、アゼルバイジャンでの日本料理店の立ち上げのために動いている。ただ現地で店を開くとなると家族とはバラバラになってしまう。しかし安藤さんに不安の二文字はないようだった。
「お金の不安だって考えだしたらキリがない。でも、家族それぞれが楽しんで生活することが何よりも大事なんじゃないかな。僕はもう一度、旅の再スタートが切れるって今からワクワクしています」。
旅で吸収した食の知識と日本食の細やかで丁寧な仕事を、今度は異国の地で伝え、表現する。インドでのひとり旅と大きく違うのは、今度は守るべき家族が待っているという点。それが安藤さんの強さと自信の、なによりの源なのだ。
 
藤野ゆり=取材・文


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