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中心街「熱海銀座」の変容からわかる、再生の現状

ツアーの出発は、もちろん「MARUYA」がある熱海銀座から。単に宿があるから、というだけではなく、ここを起点とすることが、熱海の歴史と現在を知るうえで重要とのこと。
 

「『MARUYA』の場所は、まさに熱海銀座商店街のど真ん中。お向かいには、熱海の発祥にも大きくかかわる、和銅三年(710年)開業の『小沢干物店』さんがあります。もともと漁師だった小沢さんの先祖が、不漁でも暮らしが成り立つようにと神様に祈願したところ、この地に温泉が湧き、来宮神社の御神体が海岸に流れ着いたという伝説が残されているんですよ」。
ツアー当日は、奇しくも来宮神社例大祭の当日。この日、小沢干物店は営業を止め、店内を祭礼のために解放するのだという。

いまでこそ「銀座」という名がついているが、熱海銀座の歴史は、それこそ平城京の時代にまで遡ることができるわけだ。
「そのほか、熱海銀座を街歩きツアーの起点とするのは、つい最近まで全体の 3分の1以上が空き店舗となっていたこの商店街が、地元の方々と熱海を応援する若い世代との協力により、新しい姿へと再生されつつあることを知ってほしいという気持ちもあります」。

ゲストハウスの利用者と街の人々が交流できる『MARUYA』のカフェスペース(MARUYA terraceについては、こちらの記事を参照)を筆頭に、熱海の“再生”を感じさせる新店舗の数々を見れば、この地に来るまでに抱いていた熱海のイメージは大きく変わることだろう。
 

過去と未来がコンパクトに詰まった熱海を、街歩きで積極的に愉しむ

その一方で、もちろん熱海には歴史的な建造物や史跡も多く残されている。

例えば、銘菓・百年羊羹で知られる「常盤木羊羹店」は、昭和23年の熱海大火で焼失する前の、古き良き熱海の建築様式を残す貴重な老舗。『MARUYA』から5分ほど歩くだけで、このような景色に出逢えるのも、昔と今とがバランス良く同居する、熱海の街ならではの魅力である。

そのほか、熱海温泉の“中心”となる史跡・大湯間欠泉跡や、湯前(ゆぜん)神社といった名所を巡り、街歩きツアーは30分ほどで終了となる。

コースによっては、この後で中心街に戻り、かつての「赤線地帯」跡を巡ることもあるそう。今はスナックなどの飲食店が軒を連ねる、温泉街の歓楽街といった風情だが、そのそばを歩けば、かつての妖しい魅力の残り香を感じることができるかもしれない。もちろん、バーやスナックに突入し、地元の紳士淑女たちと交流を持つのもアリだ。

この地を二拠点居住の場としたり、移住の地に選んだ方々が口を揃えて言うように、街を選ぶということは、即ちその地に住む人々との暮らしを選ぶということ。その手段として、まずは『MARUYA』のようなゲストハウスを拠点に熱海の街を深く知ることは、かなり有効ではないかと、今回の街歩きツアーを通じて感じた。
もちろん、魅力的な旅館やホテルも多数あるが、そうした観光施設での滞在では知ることが難しい、熱海の“暮らし”に触れるためにも、世代的にはやや敷居が高い感もあるゲストハウスという「冒険」を、選んでみてはいかがだろうか。
guest houseMARUYA
住所:静岡県熱海市銀座町7-8 1F
電話番号:0557-82-0389
http://guesthouse-maruya.jp/
 
石井敏郎=取材・文 小島マサヒロ=撮影


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