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2018.08.22

かぞく

レス問題、妻の心境わかる?マンガ『あなたがしてくれなくても』

「大人のCOMIC TRIP」を最初から読む
特別な事情がないのに1カ月以上性交渉がないカップルは、「セックスレス」に定義されるという。これは離婚事由にもなり得る、非常に深刻な問題だ。だがそれを、“主に男性だけが悩んでいる”と捉えている人はいないだろうか?
そんな“レス夫婦”をテーマにしたマンガがある。それが『あなたがしてくれなくても』(ハルノ晴/双葉社)だ。
『あなたがしてくれなくても』(ハルノ晴/双葉社)
主人公である吉野みち(よしの・みち)は、結婚して5年になる32歳のOL。仕事と家事を両立させ、とても充実しているように見えるが、夫・陽ちゃんとレスであることに悩んでいる。そこに現れたのが、会社の先輩である新名誠(にいな・まこと)。結婚7年目を迎える彼もまた、レスであることに苦悩している。そして、共通する悩みを抱えたふたりは、精神的につながっていくが……。
本作の特筆すべき点は、セックスレスという問題を主に妻の視点で描いているところにある。子供を作ろうと約束したにも関わらず、夫にのらりくらりとかわされる。張り切って新しい香水をつけても、決して褒めてはくれない。やがては、「期待されるとプレッシャーになる」と拒絶される。そういった夫の何気ない言動が、妻の心に小さな傷をつけていくのだ。
みちは特別性欲が強いというわけではない。彼女が求めているのは、「夫に愛されている」という実感なのだ。好きだからこそ、体を重ねたい。その感情は、ごく自然なもの。
その一方で、合間には陽ちゃん側の視点も挿入される。「嫌いになったわけじゃない」「正直いつかはしなくなるんだし」といった“男の本音”には、耳が痛くなる読者も少なくないだろう。しかし、夫婦関係とはお互いに歩み寄ることが大切なもの。お互いを思いやらなくなってしまえば、みちと陽ちゃんのように、見えない溝が深まっていくばかりだ。
女性にも性への欲求はある。そして、夫に向けられるそれは、「愛情の証明」であることも多い。そんな事実を知れば、きっと妻に対する接し方も変わってくるはず。本作は、マンネリを感じ始めた夫婦にこそ読んでもらいたい一作だ。あなたは、これを隣人のエピソードだと片付けることができるだろうか?
五十嵐 大=文
’83年生まれの編集者・ライター。エンタメ系媒体でインタビューを中心に活動。『このマンガがすごい!2018』では選者も担当。



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