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2018.08.01

ライフ

郷愁に浸るか、子育てに役立てるか。マンガ『アニウッド大通り』

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子供は父親の背中を見て育つ。よく言われる格言だが、親としてはどんな背中を見せるべきなのか。働く背中、人と真摯に向き合う背中と数あれど、好きなことに熱中している、心の底から楽しんでいる背中を見せてあげることは、子供の情操教育にいい作用をもたらすのではないかと思う。
今回紹介する『アニウッド大通り』(記伊 孝/星海社)では、偉大な父親を見て育つ子供たちの姿がのびのびと描かれている。本作は80年代を舞台にしたノスタルジックな家族の群像劇。元々は記伊氏が電子版のみの個人出版で発表した作品だったが、その内容が大きな話題を集め、書籍化に至ったという。
『アニウッド大通り』(記伊 孝/星海社)
本作に登場する真駒(まこま)家は、4人家族。小学生の樹貴(たつき)、妹である園(その)、父・和樹(かずき)と母・美幸(みゆき)の4人で構成された、どこにでもいるような家族だ。そんな一家の大黒柱である和樹の職業は、アニメ監督。それを見て育った樹貴も、小学生ながらにしてノート一冊分のマンガをどんどん描きあげてしまうという才能の持ち主だ。
本作は樹貴の目線から幕を上げるが、前述の通り群像劇であるため、エピソードごとに主軸となるキャラクターが変わっていく。そのなかでも注目したいのは、やはり父親である和樹のエピソードだ。一見すると、自由奔放に好きなことをやっているかのような和樹。しかし、そこにはクリエイターならではの苦悩が滲み、仕事を失い窮地に陥る場面も。それをどう乗り越えていくのかもまた、本作の読みどころだ。
そして本作を語る上で外せないのが、その背景の緻密な描き方。ジャポニカ学習帳や『アニメージュ』『機動戦士ガンダム』や『りぼん』など、郷愁を誘う小道具があちこちに散りばめられている。彼らが飾り気のない団地に住んでいることも相まって、読者は懐かしさに捕らわれ、少年時代へとトリップしてしまうだろう。
ちなみに、記伊氏は宮崎駿監督が主催する「東小金井村塾」に在籍していた経験を持ち、当時の様子を描いたコミックエッセイが巻末に収録されている。おそらく、アニメ界の巨匠と過ごした日々も、本作のエッセンスとなっているのだろう。
’80年代のノスタルジーに浸りながら読むも良し、子を持つ父親としての苦悩に共感するも良し。どちらの切り口でも楽しめる、一粒で二度おいしい作品だ。
五十嵐 大=文
’83年生まれの編集者・ライター。エンタメ系媒体でインタビューを中心に活動。『このマンガがすごい!2018』では選者も担当。



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