日本が世界に誇る、伝統的なモノづくり。今あらためて注目が集まっているジャパン・メイドの中から、今回は素材も技術もオンリーワンのプロダクトにフォーカスしたい。
素材に使われている「虎斑竹(とらふだけ)」は、日本全国でも高知県須崎市安和の、全長わずか1.5kmという狭い谷間でしか成育しない貴重な竹。
その名の通り、虎のような模様が入っているのが特徴だ。他の地域に移植しても虎模様は出ず、なぜこの地域でなければならいのかも科学的に解明されていない、奇跡の竹なのだ。
その歴史は古く、江戸時代には虎斑竹に関する記述が残っている。米の代わりに年貢として献上されていた時代もあるらしい。ちなみに、日本の天然記念物としてはじめて指定を受けたのは、この「虎斑竹」なのだとか。
そして、虎斑竹の成育・採取・加工を行う「竹虎」の創業は1984年(明治27年)。薬剤や化学肥料を使用していない無農薬の竹材を、さまざまな商品にしていく。一本一本、美しい模様とツヤを出すために火入れをし、まっすぐに成型し、精緻に加工する。すべての工程に、熟達した職人による手仕事が欠かせない。
そんな唯一無二の道を通って作られたこのドリッパーは、虎斑竹を細かく割って、緻密に編み込んだ独特の風合いが特徴。神秘の竹とジオメトリックな編み目のギャップが生む美しさに、いつまでも眺めていたくなる。
持ち手や縁には籐が使われていて、すべて自然素材ならではのナチュラルなニュアンスが、リラックスタイムをより豊かに演出してくれる。
機能そのものは、通常のコーヒードリッパーと何ら遜色ない。日常に寄り添うアイテムなので、背筋を伸ばす必要もない。しかし、そのストーリーやたたずまいは、持つ者を惹きつける。自分用にはもちろん、プレゼントにしてもグッドチョイスになること確実だ。プリミティブなデザインの魅力が分かってきた今日この頃だから、いつもの一杯が格別なものになるだろう。
[問い合わせ]山岸竹材店電話番号:0889-42-3201https://www.taketora.co.jp中山秀明=文