30代は積み重ねてきたものを壊して再構築する時期こうした旺盛な活動は、今思えば主夫として育休を取ったことがきっかけだ。もっといえば、子供を持ったことがすべての始まりともいえる。
「子供と向き合うことで、自分の新たな使命ができたような気がしました。何か行動を起こせば、どんどん世界は広がっていく。僕が思うに、30代って、それまで自分が積み重ねてきたものを一度壊し、そこから再構築してもいい時期ではないでしょうか。40代をどう過ごしたいのかが固まらない人には、回り道してみるのも楽しいですよ、って言いたいですね」。
ただし、柔軟な生き方をするには家族の理解やサポートが不可欠だ。鈴木さんは取材中、妻への感謝を何度も口にしていた。夫婦それぞれが相手に協力する二人三脚があったからこそ、鈴木さんの現在のライフスタイルがある。
「育休を取る以前から、結婚当初から、妻に思いっきり仕事をしてほしいという思いがあったんです。彼女はもっと上っていける人で、それを僕が支えていきたい。裏側で支えるほうが僕の性に合っているんですよ」。
兼業主夫という生き方は、そのための方法のひとつ。一人ひとりのライフスタイルによって、選択肢は無限に広がる。「30代なら、回り道してみるのも楽しい」という鈴木さんの言葉がなんとも印象的だった。
藤野ゆり(清談社)=取材・文