アラフォー世代にとって、ブラックジーンズのファーストコンタクトは“イカ天”だと思う。’80年代後半のバンドマンの制服は、リーバイス505か606のブラックだったからだ。
セカンドコンタクトは、’91年のデルカジ(モデルカジュアルの略)。アニエスベーのシャツになぜかタイを締めた彼らが選択したボトムは、古着の501のブラックだった。
その2つを例外とすれば、ブラックデニムは常にブルーデニムの陰に隠れた“脇役”だった。しかし、昨今ではブルーデニム並みに、ブラックデニムのバリエーションが増えている。
写真のスタイリングをじっくり観察してほしい。長らく流行が続いているMA-1にブルーデニムを合わせたら、往年のヨシダエーサク先生のコスプレになってしまわないか? 下半身をミニマルにまとめてくれるブラックデニムは、アウターの表情を劇的に変える万能性を備えている。そしてその多くはストレッチ入りだから、再挑戦しやすい環境は整っている。
サイ ベーシックス
太腿からテーパードするキャロットシルエット。真っ黒な色みと裾の断ち切りのバランスが面白さ。
ヴェイパライズ
スマッシング・パンプキンズの元メンバー、ジェームス・イハが監修するヴェイパライズ。ちょい太めのストレートは、やっぱり音の匂いがする。
アールティーエー
今のLAの空気感を体現しているブランド。こちらは、斜めのコインポケットや内膝の切れ込みなど、細かい技が光る。
ヴィンス
NY発のヴィンスは女子に大人気。こんな美しいシルエットのデニム、女子に独占させておくのはもったいない。
オールドパーク
前後左右をずらして2つのユーズドジーンズを縫い合わせる。ただそれだけのことなのに、オールドパークのリメイクは強烈にセンスがいい。
エンハーモニック タヴァーン
ありそうでなかった黒のワイド。右後ろポケットのジッパーにはYKKの最高級、エクセラを採用。
いよいよ名脇役が、“月9の主演”になる日が来たようだ。断言しよう。ブラックジーンズは、もっとメジャーになる。
熊谷隆志=写真(人物) 鈴木泰之=写真(静物) 菊池陽之介=スタイリング NORI=ヘアメイク