ミニマリズムの旗手として、’90年代後半〜2000年代前半にかけて一世を風靡したヘルムート ラング。’05年にファッションの世界から身を引き、現在は現代美術家として活動するラングだが、最近はその功績が再評価されつつある。
彼が生んだ銘品のひとつに、無造作にペンキを振りかけたペイントデニムがある。’90年代後半に生まれたこのありそうでなかったデニムは、瞬く間に多くのフォロワーを生み、結果としてデニムの加工のひとつとして定着した。OCEANSとしては最近、そんなペイントデニムが気になって仕方がないのだ。
A.P.C.
パリのミニマリズムを牽引してきたA.P.C.による、カラフルなペイントデニム。赤の無地のニットを羽織っただけで、デニムがまるで装飾品であるかのように声高に主張している。
ハバノス
程良く色落ちした’80sっぽい色みに、これまた最良のバランスでペンキとダメージを付加。“大人のペンキデニム”の好例だ。
ビズビム
プロダクトとしての完成度は世界最高峰。さりげないペンキ加工がニクい。
ロンハーマン デニム
ヴィンテージと見紛う出来栄え。その再現力には驚くほかない。
マインデニム
トップスはとびきりシンプルに。こう見えて着こなしは意外と簡単なのだ。
ネサーンス
ネサーンスのデニム柔道着は、前立ての5本ステッチのアタリが美しい。
最初は労働の結果として付着し、ラングがファッションに転化したペイントデニムは、今では“着るオブジェ”に昇格したのかもしれない。いつまでも華やかでいたいのならば、ペンキで“補色”してみるのはどうだろうか。
熊谷隆志=写真(人物) 鈴木泰之=写真(静物) 菊池陽之介=スタイリング NORI=ヘアメイク 増田海治郎=文