家では住宅事情や家族のこともあって、音量を上げて好きな音楽を聴くことができない! という方も少なくないでしょう。そんな方におすすめのリスニング・スポットはクルマの中。誰にも邪魔されることなく、好みのボリュームで音楽に浸ることが可能です。
「オーシャンズコンピ」を最初から読むイヤホンやヘッドホンで聴くのと大きく違うのは、身体全体に音を感じることができるところなので、そのような聴き方にふさわしい曲を10作選んでみました。ベース・ミュージックからアンビエントまで、心ゆくまでお楽しみあれ!
Siren Song (feat. Angel Deradoorian) / Flying LotusFlying Lotusのこの曲は、全般的にいえば静かなムードですが、音圧感はやはりさすがといわざるを得ないでしょう。近年のエレクトロニック・ミュージック~ベース・ミュージックは、やはり内臓が震えるほどのボリュームで聴きたいところです。
Child of Rage / Oneohtrix Point Never緻密なプログラミングと音処理、ドラマティックな展開にぐいぐい引き込まれるこの曲は、映画『Good Time』のサントラも大評判のOneohtrix Point Neverの2015年のアルバムから。音の洪水を身体で受け止める感じで楽しみましょう。
Marilyn (feat. Micachu) / Mount Kimbie小さな音だと引っ込んで聴こえることも多いベースの音を車内でボリュームを上げて堪能するなら、こんな曲はどうでしょう。Mount Kimbieの最新作から、ベースが曲を牽引するこちら。ミニマルな構成がMicachuのボーカルを引き立てます。
スローバラード / RCサクセションクルマの中の歌といえば、この曲を思い出す方も多いのではないでしょうか。「カーラジオから、スローバラード」なんていうのが本当にカーラジオから流れてきたら感動ものですが、そんな偶然を待たずに自分で用意しておくのもいいのでは。
I Put A Spell On You / Screamin’ Jay Hawkins傑作『パターソン』もそうですが、ジム・ジャームッシュの作品はクルマと音楽が印象的なものが多いように思います。『ストレンジャー・ザン・パラダイス』では、この曲が繰り返し流れてきました。この「叫び」、ぜひクルマで爆音にてどうぞ。
Haunting Ground Dub / Bim Sherman大きな音で聴きたいのはレゲエやダブ。ブイブイ唸るベースを全身で浴びたいものです。とりわけ、エフェクトたっぷりのダブは、低音だけでなく飛び交うディレイ音も楽しめるのでおすすめ。こちらはエイドリアン・シャーウッドによるダブミックスです。
Usui Kuki / Phew他人の介在しない空間であるクルマの中なら、ちょっとアヴァンギャルドな音楽もまわりを気にせず思う存分聴くことができます。80年代初頭からブレない活動を続けるアーティストPhewの2017年のアルバムから、比較的取っつきやすいこちらを。
1886年の3つの歌より「エレジー」 / 高橋悠治』
※試聴プレイヤー未対応楽曲
静かで繊細な音楽を、いつもより少しだけ大きな音量で聴いてみると、それまで聴こえてこなかった残響音や細やかなタッチが耳に飛び込んできます。ソロ・ピアノ作品でもその効果は覿面。サティ演奏の名手、高橋悠治の最新録音盤からの一曲です。
The Clear Moon and the Wind. / Cosmic Voices from Bulgaria声だけの音楽に圧倒されるのもよさそうです。オペラなどの重厚なものでももちろんいいのですが、神秘的なハーモニーがほかに類を見ないブルガリアン・ヴォイセズはいかがでしょうか。筆者は三宅純氏のライブで一度観ましたが、すごかったです。
ff / 坂本龍一車内リスニングの締めくくりは、坂本龍一の『async』から、澄み切った音のゆったりとしたアンビエント・チューンで。時間の概念を忘れさせるような、ゆるやかに移り変わる曲を身体全体に染み込ませて、明日への英気を養いましょう。
<プロフィール>青野賢一1968年東京生まれ。ビームス創造研究所 クリエイティブディレクター、ビームス レコーズ ディレクター。ファッション&カルチャー軍団ビームスにおける“知の巨人”。執筆やDJ、イベントディレクションなど多岐にわたる活動を展開中。