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2018.02.02

あそぶ

モヤモヤした過去と決別したいなら。マンガ『やれたかも委員会』

「大人のCOMIC TRIP」を最初から読む
「あのとき、勇気を出していれば……」。
過去の後悔を判定する、『やれたかも委員会』の面白さ
人間は一日に「約9000回」の選択に迫られるという説がある。仕事、家庭、友人関係……。実にさまざまなシーンで、なにかを選択することを求められているのだ。
「あのとき、こうしていればよかった」。長い人生のなかで、誰もが一度は思うことだろう。当時は勇気がなかった。決断力がなかった。もしも自ら行動を起こしていたら、どうなっていたのだろうか……。それは誰にもわからない。だからこそ、人は選び取らなかったほうの道の先にあるものを夢想しては、ときにモヤモヤした想いにとらわれてしまう。
『やれたかも委員会』(吉田貴司/双葉社)
今回紹介する『やれたかも委員会』(吉田貴司/双葉社)は、女性と“やれたかもしれない”一瞬について描くラブコメだ。毎回、ひとりの男性が女性との思い出を独白し、それに対し、「やれたかも委員会」の面々が「やれた」「やれたとは言えない」を判断していく。
描かれるエピソードはどれもほろ苦く、男性ならば共感度が高いものばかり。宅飲みをしている最中に、急にベッドに横になったあの子。家に誘われたものの、終始バラエティ番組を観るだけで終わってしまったあの日。クラブで出会いキスまでしたのに、お持ち帰りできなかったあの夜。いずれも、男性側にあと少しの勇気さえあれば、どうにかなっていたのではないかと思わされるシチュエーションだ。
それらに対し、委員会メンバーであり、胴着に身を包んだ謎の男・能島明と、サングラスをかけた無表情なミュージシャン・パラディソは「やれた」と判定する。しかし、唯一の女性メンバーである月満子は、毎回「やれたとは言えない」との判断を下し、その理由を冷静に分析する。本作のおもしろいのはそこだ。
男性からすれば「絶対にやれただろう」というシチュエーションも、女性の目線で切り取ると非常にグレー。やはり、女性という生き物は複雑なのである。
過去の思い出を振り返ったからといって、それで現在が変わるわけではない。けれど、「あのとき、こうしていればよかった」を客観的に判断してもらうことで、心の奥でくすぶっていたなにかが昇華されるのも確かだろう。人は明確な答えを求めがち。本作に登場する男性陣は、つまり我々そのものなのである。
本作は2018年1月27日(土)よりAbemaTVで実写ドラマ版が放送されている。男たちの悲哀に満ちた「やれたかもしれない」過去とは、いったいどのようなものなのか。マンガと読み比べても面白そうだ。本作には、自身のなかに眠るモヤモヤとした過去を“ジャッジ”し、決別するためのヒントが隠されている。
五十嵐 大=文
’83年生まれの編集者・ライター。エンタメ系媒体でインタビューを中心に活動。『このマンガがすごい!2018』では選者も担当。


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