大人も知らないニオイの世界 Vol.1
「スメルハラスメント」が問題となるなか、自分のニオイが気になる人も多いはず。一方で、ニオイの感じ方は人それぞれで、人によっては「むしろ好き」という人がいるから不思議。身近なだけに意外と知らない“ニオイ”の奥深い世界を、一緒に探ってみませんか?
30代をすぎると気になり始める体のニオイ。毎朝入念なニオイ対策をしてから出勤する、という男性も少なくないでしょう。ところで、そもそも体の“ニオイ”はなぜ発生するのでしょうか。臭気判定士で「におい刑事(デカ)」としても活躍されている松林宏治さんに聞きました。
汗そのものは臭くない!? 不快な体臭の原因は……「よく『汗臭い』などと言いますが、実は汗自体は99%が水なので、ニオイはほとんどないのです。僕らが身近に感じるニオイの主たる原因は、皮脂などに付いた細菌や雑菌。高温多湿な環境で、菌の活動が盛んになってニオイが発生するんです」。(松林さん、以下同)
革靴を履く機会が多いビジネスパーソンが気になっている “足のニオイ”も、汗そのものではなく、靴の中が蒸れることで皮膚についている菌が繁殖することによって起こるようです。ちなみに、菌が原因の体臭は「皮脂の汚れを落としたり、乾かしたりすることで防ぐことができる」とのこと。
一方で“口臭”や年を重ねると気になり始める“加齢臭”については、別の原因も考えられるといいます。
「口臭のなかには内臓の病気のサインになりうるものもあり、口臭のニオイを嗅いで診断をされる医師もいらっしゃるそうです。また、加齢臭は、不摂生やストレスなどにより体の脂肪分が増えることによって発生します。つまり、“菌”のしわざではなく、自分の体の中の異常や変化を知らせるニオイなんです。ですから、いくらケアをしてもニオイが気になる場合は、生活習慣の見直しや医療機関への受診も検討したほうが良いかもしれません」。
“いい香り”が不快なニオイに変わる理由体臭のほかにも、柔軟剤や香水など本来は“良い香り”のはずのものが、不快なニオイとして問題となることもあります。いったいなぜなのでしょう?
「ニオイの“快・不快”は、個々が生まれ育った環境で左右されるといわれています。つまり、いくら良い香りであっても、昔から親しみがないものであれば拒絶してしまう人もいるかもしれないということ。香水や柔軟剤のなかには、日本人には馴染みのない香りもあるので、特に快・不快に個人差が出ると思われます」。
松林さんいわく、ニオイの好き・嫌いは、「4歳までの生活環境や体験で決まるという説もある」といい、個人差は非常に大きいよう。いっそ、香りのまったくない“無臭”の状態のほうが万人に快適になりうるのでは……?
「一般的に『ニオイがない』と言われている状態も、何かしらニオイは存在しているんですが、人の嗅覚では気にならない程度のことを指しています。確かにそのレベルであれば多くの人は快適に過ごせると思います。ところがもし完全なる“無臭”の状況下に置かれると、人間は逆にパニックに陥るとも言われているんですよ」。
強すぎても困るニオイですが、どうやら、完全なるニオイの排除も考えもののよう。神経質になり過ぎず、上手に付き合っていきたいものですね。
【取材協力】
臭気判定士・松林宏治さん
1976年、愛知県名古屋市出身。1999年、南山大学経済学部卒業後、一般企業を経て2003年、消臭専門会社である共生エアテクノを設立。脱臭装置の設置、悪臭調査と対策提案・設計などを行っている。「クサイに挑むプロフェッショナル」として、“におい刑事(デカ)”の異名で、数々のメディアでも活躍中。2016年、電子書籍『臭気判定士・におい刑事(デカ)が教える!ニオイで女性に嫌われない方法』を上梓。
・共生エアテクノ
・臭気判定士/におい刑事(デカ) におい110番~深呼吸空間を創造します~周東淑子/やじろべえ=取材・文