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たとえば、古田氏の場合には監督との兼務になって以降、出場機会は大幅に減少。成績もダウンしました。おまけに監督として見ていたチームも不振にあえぐ結果に。仮に選手に専念していたら、あと数年は活躍できたのに……と兼務を惜しむ声がありました。あるいは監督に専念していたら負担は少なく、監督としての成績は違ってきたかもという意見を当時の専門家や野球ファンからは聞かれました。
監督と選手の二刀流は、双方にとってプラスが限りなく少ないことが明らかになってきましたので、プロ野球界では取り組むケースは今後ほとんどなくなることでしょう。
さて、今回はその監督と選手の二刀流が、一般社会で見てもいかに困難であるかについて、みなさんと考えていきたいと思います。

プレイングマネジャーの負担

監督と選手の二刀流をビジネスの世界に転じて考えると、管理職と現場社員の兼務ということになります。いわゆる、プレイングマネジャーです。こちらは増加傾向になります。なかでも中間管理職層においてはプレイングマネジャーをしている人が大多数。リクルートマネジメントソリューションの調査によると7割がプレイヤーとしての業務も行っているとのこと。
ちなみに筆者が社会人になった四半世紀前の職場では、大半の管理職がマネジメントを専業でやっていました。管理職はいつも席に座って、悠々と歩き、部下に「ちょっと来なさい」と声をかけて呼び出しては叱るという姿が印象的でした。現場の仕事は管理職になればやらないのが当たり前でした。
それが徐々に現場の仕事を管理職もやるべし……という風土が社内に入り込み、気が付くと大半の管理職がプレイングマネジャーになっていました。兼務は当たり前のように感じている人もいるかもしれませんが、管理職に相当の負担がかかるいびつな状態に変わっている状態だと思います。
取材した専門商社の管理職Sさんは、現場営業時代の取引先を継続して担当しながら、5人の若手社員のマネジメントを任される立場。当然ながら業務量が大幅に増えて、帰宅時間が大幅に遅くなっているようです。部下たちは働き方改革で残業はさせられない。ところが部下たちの取引先からの依頼は増える一方。経験も浅く、時間も足りない部下たちのフォローがドンドン増える状態です。
「私が若いころにイメージしていた管理職と全然違いました。現場の仕事はむしろ増えているくらいです」
と嘆くSさん。Sさん以外の複数の管理職に取材しても、同じように現場の仕事を先頭に立ってこなしながら、マネジメントをしている実態が浮かび上がってきます。ならば、できるだけ現場の仕事は現場の部下たちに任せるようにすべきでしょうと訊ねてみたのですが、
「それが理想なのはわかっていますが、環境的に許されない状態なのです」
との回答が返ってきます。職場における業務量が多く、自身がプレイヤーとして加わる必要があるとか、自分にしかできない(と認識している)業務があるなど、本人的には致し方ないとしか言いようがないようです。


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