最近の傾向のひとつに、色や素材など、あえてイメージの異なるものを“違和感”として取り入れながらセンス良くまとめたアイテムがあげられる。定型デザインに縛られず、自由なミクスチャー感を楽しむブランドが今増えているのだ。そこから生まれるオリジナリティは、スタイリングの重要なカギになりそうだ。
FENDI
フェンディ
ヘミングウェイの言葉にインスパイアされたメッセージ(右足は「THINK」)が刻まれるヒールの赤いラバータグ。今季のテーマ“フェンディ ボキャブラリー”を象徴するディテールに加え、ニットアッパーの一部をラバーコーティングしてボリューミーなソールを配するなど、素材で遊び近未来的な見た目に。言わばこれは“文学的ストリート”な一足!?
DOLCE & GABBANA
ドルチェ&ガッバーナ
ゴートスエードにラムレザー、ナイロンと多彩なマテリアルを職人技でまとめたスポーティなアッパーは、シンプルな色使いだからこそ、素材の繊細な表情が浮かび上がる。そして随所にゴールドのパーツを配して品良く飾り、ハイストリートなムードを演出。ブランドのフィルターを通すことで、レトロランニングなデザインがこんなにも洗練される。
TOD’S
トッズ
東京・表参道店限定の発色の良い赤のラムファーをライン使いした斬新さに目を奪われるが、ヒールカップにトッズの“顔”であるラバーペブルが配され、後ろ姿も新鮮に。表裏のカーフレザーで切り替えたアッパーは季節感と上質さを漂わせ、靴作りを原点とするブランドの矜持が表れる。
DIOR HOMME
ディオール オム
隆盛を極めるニットアッパーのブラックに、鮮烈なブルーのエラスティックバンドとミルキーなミッドソール、ネオプレン×ナイロンのベルトでアクセントを加え、フューチャリスティックなオーラを纏う。「レイブ」や「ニューウェイブ」と、時代を先取ってきたサウンドをテーマにした今シーズンらしく、その斬新なルックスは次なるトレンドを予感させてくれる。
COACH
コーチ
‘70sにインスピレーションを受けたというこちらは、ノスタルジックなフォルムのランニングシューズを赤を利かせたカラーブロックの表情でモダナイズ。ヒールには野球のグローブに用いるステッチを施していたり、スエード×スムースレスレザーをパーツによって巧みに使い分けたりと、丁寧な職人技が随所に光る。
右: ATLANTIC STARS × B’2nd アトランティックスターズ×ビーセカンド
アトランティックスターズは、’80年代のランシューをベースにモダンさを加え現代に蘇らせる気鋭ブランド。メタリックなレザーアッパーやポップな星のワッペンにその矜持が見てとれる。反面、すべてイタリアにてハンドメイドという実直なモノ作りにグッとくる。
中右: MIZUNO ミズノ空洞のあるソールは「インフィニティウエーブ」という緩衝性と反発性を併せ持つ波形のプラスチック材をを2枚重ねた独自のもの。モノトーンながら、人の筋骨をイメージしたアッパーデザインもインパクト絶大!
中左: DIESEL ディーゼル
デニムでも知られるイタリアブランドの一足は、近未来的なミリタリーデザインが面白い。スリッポン型のニットアッパーを迷彩柄で仕上げ、大胆にエラスティックバンドを配している。
左: REEBOK CLASSIC リーボック クラシック
‘97年に発表された「DMXラン 10」。当時革新的だったクッショニング技術を搭載し、好配色のオリジナルカラーを纏いながら堂々復刻したのが今作だ。ナインティーズが再燃している今の気分にドンピシャで刺さる!
テイストの異なるモノを取り入れる。それは、ちょっとした“違和感”を生むきっかけにもなりかねないと思うかもしれない。ただ、それをうま〜く溶け込ませることで唯一無二の“個”を生み出せる。これらのアイテムが、それを教えてくれている。
清水健吾=写真 松田有記=スタイリング