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管理費の価値がわかったのは、皮肉にも一戸建てに住み替えてから

何事もお金を払うことには、その代わりに得られる対価が必ずついてくるものだ。例えば、英会話でもゴルフでも何かを習うために月謝を払うとして、何も習わない場合と比べて月謝を払うのが損だとは思わないだろう。なぜなら、よほど教え方がまずくない限り、月謝を払う代わりに習い事のスキル上達という対価が得られるからだ。
翻って、マンションの管理費を払って得られる対価とは何だろうか。先に管理費は「共用部」の維持管理にかかると書いた。もう少し具体的に言うと、エレベーターや給水機などの機械設備や照明類の保守点検費や電気代、敷地内の清掃や植栽管理の費用、そして管理員さんの人件費などになる。ただ、こう書いてしまうと、対価がどれだけあるかピンとこないかもしれない。実は、以前、マンションに住んでいたころの筆者もそうだった。そして、筆者が管理費の価値を実感したのは、皮肉にも管理費がかからない一戸建てに住み替えた後だった。
一戸建てに住むと、生活に伴うさまざまな作業を負担しなければならない。近隣と共同のゴミ置き場の掃除当番が回ってくればゴミ回収車がくるまで出かけられない。敷地内の草むしりや伸びすぎた植栽の刈り込みは、春先から秋にかけて年に4~5回発生する。汗まみれで半日かかる重労働だ。また、家の道沿いに小さなゴミやタバコの吸い殻がポイ捨てされているのは日常茶飯事だし、ひどいときはペットの糞が置き去りにされていることもある。放置するわけにもいかず掃除するのだが、マナーの悪い赤の他人の尻ぬぐいをするのは、何ともやるせない気分になる。
だが、マンションならそうした作業や心理的な負担は一切発生しない。つまり、委託業者や管理員さんに生活上の煩わしい作業をすべておまかせできることが管理費の対価なのだ。加えて、ゴミ捨てが24時間365日可能なこと、宅配BOXや大規模物件なら共用施設を利用できることも管理費の対価に含まれる。
「発生しないこと」の価値はわかりにくい。しかし、忙しい現代人のライフスタイルにおいて、生活上の手間やそれに費やす時間を自分の生活から排除できるなら、月額1万5000円程度のコストは決して高くない。そう筆者は思うが、オーシャンズ読者のみなさんはいかがだろうか。
取材・文/山下伸介
1990年、株式会社リクルート入社。2005年より週刊誌「SUUMO新築マンション」の編集長を10年半務め、のべ2700冊の発刊に携わる。㈶住宅金融普及協会の住宅ローンアドバイザー運営委員も務めた(2005年~2014年)。
2016年に独立し、住宅関連テーマの編集企画や執筆、セミナー講師などで活動中。
画や執筆、セミナー講師などで活動中。


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