OCEANS

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それだけではありません。どちらの国も第2次世界大戦後、敗戦国として、いわゆる焼け野原の状態からスタートしました。必死の努力で経済復興を遂げたことも、また、それ以降には、つねに自国通貨が強かったために、経済を質的に向上させなければならなかったことまで同じです。
しかし、もちろん「違い」もあります。
私がドイツにいた20年の間には特に、日本とドイツの違いは大きくなっていました。ドイツという国の力が、強くなったのです。
それは、両国の調査データからも見て取れます。OECD(経済協力開発機構)の調べによると、ドイツの労働時間1時間当たりで見た労働生産性は65.5ドル、日本は42.1ドル(2015年)。つまり、単純に比較すれば、ドイツは日本の1.5倍以上の生産性があるのです。
そんなドイツ人は、いったいどのような働き方をしているのでしょうか?
象徴的な例を挙げるとすれば、
・休暇は年に5~6週間分は取る
・日々の残業は限定的
・毎日、やるべき仕事を終わらせるとすぐに帰宅し、夕飯を家族で囲む
どうしてこれだけ余裕のある働き方ができるのか、しかも一定の成果を出せるのでしょうか。
国が産業の国際競争力を戦略的に育てているという前提はありますが、そのうえで国民一人ひとりに、日本と比べてはるかに「柔軟性」がある、ということが理由として挙げられます。意外に感じる人もいるかもしれませんが、言葉を換えれば「いい加減」、もっと言うと「完璧を求めない」(割り切っている)ともいえる態度を持っているのです。
要は「いつも100点を目指す」のではなく、「場合によっては70点でもいい」――そのメリハリこそが、効率化につながる。これが、ドイツが日本に比べて生産性が高い(投入労働時間が少ない)理由のひとつといえます。

思い切った「権限移譲」が必要なとき

ただ、単に「アサインメント」が決まっていれば、効率的に、スピード感を持った仕事のやり方ができるかといえば、そうではないと思います。
「フラットな組織」と「現場への権限委譲」が前提として必要です。
私がドイツの会社(メッツラー社)に勤務して、「仕事がしやすいな」と感じた点のひとつは、社員相互のヒエラルキーが限定的で、組織構造がフラットに近く、風通しが良いところです。
日本では上司と部下の上下関係、同僚同士でも年齢や入社時期などがとても重視されますが、ドイツ人に限らず一般に外国では無関係です。自分より年上だから、1年先輩だからといった理由で、へりくだったり、逆に威張ったりするということはいっさいありません。


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