いくらこちらが、うまくやっていこうと心を開いてみても、相手はウンでもなければスンでもなかったり、相も変わらずの「一言多いしゃくに障るヤツ」であったりするかもしれないのだ。ひとたびその経験を味わってしまえば、「やっぱ無理……」と心を閉ざさざるをえなくなってしまい、協働は失敗に終わってしまう。
マインドフルネスという仏教由来のメソッドがはやっている。Googleなどの研修にも導入されたことで、日本に逆輸入されてきた。
マインドフルネスとは簡単にいえば、心の平穏を保ち続ける技術。ごちゃごちゃとした自分の嫌な気持ちを客観視する「心の整理法」だ。
それを人間関係の改善に役立てられないだろうかと考えて生まれたのが、「マインドフルコミュニケーション」である。詳しくは、拙著『マインドフルネス 「人間関係」の教科書』にまとめたが、人間関係のこの難しさを再構築し直すのに唯一の方法であると感じている。
映画のジャイアンの例えのように、人間同士の関係を激変させるには「敵の敵は味方」の比喩を肯定的に用いてみること。つまり、ふたりの間に、同じ目標を設定し直すことである。その目標になるのが、「お互い理解しあおう」というゴールなのである。
「なんだ、そんなことか……。それができないから困っているのに」と思われるに違いない。ここからが重要だ。先ほど例に挙げたように、こちらが心を開いて接しようとしたとき、相手がいつもどおりの、無礼な対応をしてくるとする。このとき、2人は言わば「敵と敵」のままである。さてどうするか。
同じ目標を生み出す「アサーション」と「傾聴」のチカラ
「敵と敵」が同じ目標(お互い理解し合おうという気持ち)を持つための第一歩は、自分の正直な気持ちを伝えることである。相手が自分にとって都合の悪い言動に及んだとき、思わず相手を非難したくなるものだが、そこをグッとこらえて、まず伝え方を変えてみる。ポイントはこの3つである。
・私を主語にする
・直接的な影響だけを述べる
・客観的な事実だけを伝える
たとえば職場で、こともあろうか、相手がたばこを吸い出すとする。禁煙じゃない場所ならいいかもしれないが、あなたは大の嫌煙家、さてどうする? 思わず非難の言葉が口から出てきそうになる。
「なにやっているんだ! 僕が嫌煙家なのは知っているだろ! お前は思いやりがない人間だな!」
そんな気持ちをグッとこらえて、
(1) 私を主語にして
(2) 自分への直接的な影響と
(3) 「今、ここ」の客観的な事実だけを述べる言葉に変えてみる
するとこうなる。
「僕は煙が苦手で、のどが痛くなるし、においが服について洗濯しても取れなくて困っているんだ」
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