ファミコン世代だって、その気になれば最先端のITを理解できるはず!! もうすぐ小学校でプログラミング教育が始まる時代。大人のホビーとしても楽しめるガジェットで遊びながら、IoTやプログラムにも強い(子どもにナメられない)スマートなオッサンを目指してみませんか?
「MESH」を使えばイヌからメールを受け取ることも可能に!?
“IoTっぽいモノづくり”の実践例として、我が家の愛犬・イヌちゃん(10歳・メス・仮名)が、よく寝ているときに自動的にカメラで撮影するだけでなく、寝ていることをメールで知らせてくれる「イヌのインターネット化」装置を開発すべく、ここまでにプログラミングまでの工程をほぼクリアしたわけだが……。「イヌのインターネット化」装置を装着する前に、前回紹介できなかった「メールを送信する」プログラムの手順を記しておこう。ネットに接続するので面倒なのかと思いきや、こちらの手順は意外と簡単だった(基本となるプログラムの手順は
前回の記事を参照してください)。
最初にメール(Gmail)と連携させるための準備を行う。画面下の「タグリスト」の右端にある「連携タグ」欄の「追加」をタップ。「新しいタグを追加する」画面が表示されるので、ここで「Gmail」をタップする。続く画面の指示に従い、使用するメールアカウントなどを設定すれば準備は完了。ちなみに、同様にEvernoteやFacebook、LINEなどとも連携ができるようだ。
準備が完了すると「Gmail」のタグが利用できるようになる。ここでメールの送信先と件名、送りたい文章を入力すれば設定は完了だ。「カメラタグ」とコネクタで接続すれば、写真を撮った後で指定した文章がメールで送信されるようになる。
ただし、残念ながら今回は撮影した写真をメールで送信することはできなかった。筆者が見つけられなかっただけなのかもしれないが、どうやら、現時点でメールに添付書類をつける機能は用意されてないみたいである(メーカーに確認したところ、今後のアップデートで対応する予定があるとのことでした)。とはいえイヌちゃんが寝ていることが、離れた場所でわかるだけでも十分以上に感動的。なんといっても、自力でここまでプログラムできたんだから、ひとまず「オレって偉いし凄い!」と自慢しても良いのではないだろうか。
家庭科のお裁縫感覚で仕上げる「イヌのインターネット化」装置
さて、これでプログラムの工程が完了となったが、「イヌのインターネット化」実現のためには、最後に完成した装置をイヌちゃんに装着するという工程をクリアしなければならない。
イメージ的には、こんな感じでイヌちゃんの背中に装置を装着したいところ。この位置に装着すれば「動きタグ」が上向き、または下向きになった状態がすなわち、イヌちゃんの「寝ている」姿勢となるわけだ。
もちろん、イヌちゃんの体に直接装置を埋め込むことはできないので、装置を装着するための工夫を考える必要がある。
もっとも手堅そうなのは、イヌちゃんの洋服に「動きタグ」を貼り付ける方法だろう。しかし、残念なことに我が家のイヌちゃんは、洋服を着るのがあまり好きではない。
とすれば残る選択肢はひとつ。イヌちゃんの首輪に「動きタグ」を貼り付けるしかない。とはいえ、首輪に直接貼り付けてしまったら、「動きタグ」を他に利用することができなくなるし、消しゴムサイズとはいえプラスチックの塊が直接お肌に触れるのは。イヌちゃんにとっても不快なことだろう。
そこで「動きタグ」を格納するケースをつくってみることにした。
材料はフェルトとマジックテープ、そしてアイロンの熱で布を接着する「補修シート」だ。どれも100円ショップで買うことができる。
「動きタグ」の大きさに合わせてフェルトを裁断し、「補修シート」で接着。
さらにフタとなるフェルトを「補修シート」で接着し、マジックテープを取り付ける。
最後に、首輪とケースにマジックテープを取り付ければ……
「動きタグ」が格納された「イヌのインターネット化」用特製首輪の完成だ。工作の所要時間は30分程度。小学校の家庭科で教わる程度のスキルがあれば十分だ。フェルトを使うことで、ファンシーな出来栄えを狙っているところが我ながら心ニクい。では早速、イヌちゃんに特製首輪を装着してみよう。
わー、すごいカワイイ!! 「お弁当しょってどこ行くんでちゅか~?」とか、ネコナデ声で話しかけたくなるくらいのキュートさである(イヌだけど)。しかし、この首輪を装着することで、我が家のイヌちゃんとインターネットが接続されてしまったのだ。キュートさの中に隠されたIoT。いやはや、なんとも「未来」って感じがしますなぁ。
最後に、寝ているイヌちゃんの写真を撮るためにスマートフォンを設定すれば、「イヌのインターネット化」システムの完成だ。果たして、うまいこと動作してくれるのだろうか?
IoTを理解するために大事なのは、ITよりも「モノづくり」のセンスだった
結果をご報告すると今回の「イヌのインターネット化」は、現状で自己評価60~80%くらいの完成度となっている。
プログラムに関しては、寝ている状態を判定する「時限装置」(前回の記事参照)を解除する振動センサーの指定に課題が残った感じだ。センサーを敏感にしすぎると、かすかな動きでも反応してしまうし、反対に鈍くすれば時限装置を解除してくれない。このあたりは、様子を見ながら最適な設定値を見つけるしかないだろう。
それよりも大きめの課題となるのが、「イヌのインターネット化」用特製首輪の工作面だ。装着当初はいい感じで「お弁当を背中にしょってる」状態になっているのだが、気が付くと……
こんな感じの、まるで「ウイスキーをぶら下げてるセントバーナード」みたいな姿になってしまうのだ。とはいえ、この状態は「お弁当」の正反対なので、実はセンサーは背中側にあるときと同様に働いてくれる。だったら最初からセントバーナード状態での運用としてしまってもよいのだが、この状態だとさすがに若干、イヌちゃんの居心地が悪そうなんですよね。首輪をキツめにすればズレないのだろうが、それも明らかにイヌちゃんには不愉快だろう。イヌちゃんの快適さを維持しつつ、「動きタグ」が理想的な位置をキープするための工夫は、まだまだ続ける必要がありそうだ。
最後の課題は、イヌちゃんの寝姿を撮影するためのカメラ位置。現状のように真横に置くのがベストなのだが、これだとイヌちゃんが動き回ったときに三脚が倒れてしまうのは必定。スマートフォンのカメラでは望遠にも限界があるため、別の場所に固定するような工夫が必要だ。また、カメラを設置してから気が付いたのだが、これではスマートフォンを持ってお出かけをすることができない。離れた場所で「寝ています」メールを受け取るためには、「イヌのインターネット化」用に別の端末を用意しなければならないのだ。加えて、今使ってるスマートフォン、実は背面カメラが故障中で、せっかくプログラムが上手に動作しても、そもそも写真を撮ることができなかったんですよね……って、それじゃ当初の目的をまったく果たせていないじゃないの! しょぼん。
というわけで、5記事分にわたりお送りした、「MESH」による“IoTっぽいモノづくり”への挑戦は、これにておしまい。連載を通じて得られたいちばんの発見は、
「IoTってプログラムやIT以上に「モノづくり」の発想とスキルが重要なんだな」
ということだった。だとしたら、たとえ子どものほうがIT的に先を行ってたとしても、あまり焦る必要はないのかもしれない。いかにも難関そうに思えたプログラムや、プログラムを組むために必要な論理的思考も「MESH」のような仕組みなら、案外容易に慣れてしまうことができそうだし。
何より、今回の「イヌのインターネット化」装置のように、一昔前なら研究者クラスでないと取り組むことができなかったに違いない実験を、夏休みの工作感覚で実践できてしまうのは、本当に凄い時代が来たものだとシミジミしてしまいました。
この「MESH」のように、大人と子どもが同じレベルで楽しめる知育系のハイテクガジェットは、まだほかにもたくさんあるようなので、皆さんもぜひ、自分の目と手で「未来」を実感してみましょうよ!
取材・文:石井敏郎
(C)2016 Sony Corporation
■MESH公式サイト
http://meshprj.com/jp/