インベーダーゲームやファミコンに始まりポケベルにケータイ、そしてパソコンと、常にテクノロジーの最先端を身近なものとして成長してきた自負がある、我らオッサン世代。とはいえ、時代の波は常に残酷なモノ。今では「IoT」やら「ビッグデータ」やらと、続々登場する新語についていけないのはもちろん、子どもたちが興じる最新アプリやスマホゲームの遊び方すら理解できなくなってしまってはいないだろうか?
ニュースによれば、2020年には小学校で「プログラミング」の授業が始まるという。このままでは「ITオンチのオッサン」として、部下だけでなくチビッ子世代にすらナマ温かい視線で見られてしまうことは必至。せめて、我が子が学ぶ授業内容くらいは理解しておきたいし、なんなら「さすがはお父さん!」と尊敬のマナコで見てもらえるくらいのスキルを身に付けたいものではありませんか。
そんな諸兄にうってつけなのが、最近話題となっている、プログラミングやIoTの概念をホビー感覚で楽しみながら学ぶことができるハイテク・ガジェットたちだ。その多くが子どもと一緒に楽しめるようになっており、それらのガジェットを活用した教室やワークショップも活況だという。
はたして、そうしたハイテク・ガジェットを使えば、オッサンでも本当にプログラミングやIoTの概念を理解することができるのか? 当連載を通じ、体当たりでチャレンジしてみたいと思う。まずは、グッドデザイン賞など数々の賞を得た、話題のガジェット「MESH™」(以下「MESH」)に挑みます。
そもそも「MESH」って、何ができるのものなのか?「MESH」とは、ソニーから発売されている、スマートフォンやタブレット端末と組み合わせて使う電子ブロックのようなガジェットだ(
電子ブロックにチャレンジした連載はこちら)。
現在、7つの“MESHタグ”が発売されており、それぞれ「ボタンタグ」「人感タグ」というように、個別の役割を持っている……という説明だけでは、まったく意味がわからないと思うので、“MESHタグ”がどのようなモノなのか、実際に使ってみることにしよう。
たとえば「ボタンタグ」と呼ばれる緑色のMESHタグ(5980円・税込)がある。
これは「ボタンが押された」という情報を伝える機能を持つタグだ。情報は、無線(Bluetooth)経由でスマートフォンやタブレット端末に送信される。送信された情報を、どのように処理・動作させるかのプログラミングは、端末にインストールした「MESHアプリ」(無料)で簡単に設定できる。
「MESHアプリ」の使い方は、連載の後半で詳しく紹介することになると思うが、上記の写真では「ボタンを押したらスマートフォンから音が鳴る」というプログラムを組んでいる。プログラムといっても、画面に表示されるアイコンをアプリ上でつなぐだけなので、初心者でも悩むことはないはず。この程度なら10秒以内で完成させることができるだろう。
身近なモノを“IoT化”するMESH。使い方自体はとても簡単なのだが……“MESHタグ”は、複数を組み合わせて使うことも可能だ。ここでは「ボタンタグ」に、オレンジ色の「LEDタグ」(5980円・税込)を組み合わせてみよう。
このタグは、ボタンを押したという情報をスマートフォンに送信する「ボタンタグ」とは逆に、指定した色や点滅の具合など、「MESHアプリ」上で設定された情報を受信してタグに装備されたLEDが光るという機能を持っている。「ボタンタグ」がインプット(入力)なら、「LEDタグ」はアウトプット(出力)の役割を持つタグというわけだ。
既に想像がついている人も多いと思うが、上記の写真は「「ボタンを押したらスマートフォンから音が鳴り、さらにLEDタグを光らせる」というプログラム例だ。“MESHタグ”とスマートフォン端末はBluetooth接続なので、Bluetoothの電波が届く範囲なら、タグと端末が離れていても機能する。ここで紹介した作例なら「ボタンタグ」を玄関に貼り付けることで、音と光でお知らせする呼び出しドアベルの完成、となる。このように既存のモノたちに“MESHタグ”を貼り付けることで、モノがスマートフォンやインターネットとつながり、その機能が拡張される。要するに「IoT(モノのインターネット化)」が実現されるというわけだ。
このほか“MESHタグ”は2017年5月現在、
- 「人感タグ」(エメラルド色/6980円・税込)
モーションセンサー内蔵。タグの周囲に“動くもの”があるかどうかを検知して、その情報を端末に送信する。
- 「動きタグ」(水色/5980円・税込)
振動センサー内蔵。タグ自身の振動や向きの変化(“ひっくり返された”など)を検知して、その情報を端末に送信する。
- 「明るさタグ」(青色/6980円・税込)
明暗センサー内蔵。タグの周囲の明るさの変化を検知して、その情報を端末に送信する。
- 「温度・湿度タグ」(青紫色/6980円・税込)
温度&湿度センサー内蔵。温度や湿度の数値や変化を検知して、その情報を端末に送信する。
- 「GPIOタグ」(灰色/6980円・税込)
“MESHタグ”の拡張キット。コネクタが付いており、市販のモーターや、MESHタグに搭載されていないセンサーを接続して利用することができる。
※複数の“MESHタグ”がセットになったお買い得なパッケージもあります。
といったラインナップが用意されている。MESH公式サイトの表現を借りれば、これらのタグを「自由に」組み合わせることで「可能性は無限に広がります」なのである。
使う人の創造力を試される「MESH」。どうやって使うのが“正解”なのか??「MESH」の概要説明はこんなところで十分だろう。では早速、「MESH」を使ってIoTっぽい“何か”を作ってみようと思うのだが……。
「自由に」とか「可能性は無限に」って言われてしまうと、急に戸惑ってしまうのが筆者を含む一般的なオッサンというもの。この“MESHタグ”、おそらくは「ユーザーの自由な発想を制限したくない」というメーカーの配慮なんだろうが、製品パッケージに詳しいマニュアルや活用法が同梱されていないため、なおさらに己の創造力や基本的なIT能力を試されている感じなんですよね。
「そこがイイんじゃない!」っていう前向きな方も多いんでしょうが、特にIT系にコンプレックスのあるオッサンにとっては、そういう姿勢が結構コワイんです……。
「MESH」の公式サイトには、ユーザーから寄せられたMESHの活用事例が“レシピ”として紹介されており振動センサーがついた「動きタグ」を射的のマトに取り付け、玉が当たった(的が動いた)ら当たりの音を鳴らすといった比較的簡単そうなものから、『残量が一目でわかるティッシュ箱』といった、いかにも高度なスキルを要しそうなものまで、数多くの“レシピ”がジャンルやシーン別にまとめられている。
もちろん、これらの“レシピ”を真似すれば、「ボクにもできた!」というG馬場的満足感を、ある程度味わうことができるだろう。とはいえ、そこに留まっていたのでは、ぶっちゃけ市販のハイテクおもちゃを買ってきて遊ぶのと、あまり変わりがないような気もする。
そもそも“レシピ”には、「MESHアプリ」でプログラムを作成するための手順が詳しく記載されていないものも多く、ちょっと高度なものになると、どうすれば完成するのかが、プログラミング未経験のITオンチには、さっぱりチンプンカンプン。結局のところ、簡単な“レシピ”をいくつか試してみたところでIoT云々を理解する前に、「MESH」自体に飽きてしまうという、まさに往年の電子ブロックと同じ結末を辿りかねない予感がプンプンとするのだ。これでは、子どもと一緒に楽しむどころか、さらにITコンプレックスをこじらせてしまうおそれすらある。さて、どうしたものか……。
やはりここは、「MESH」の“正しい”楽しみ方について、教えを乞うのがいちばんだろう。というわけで「MESH」の開発者を訪ねることにしたのであった。「MESH」の楽しみ方はもちろん、IoTを理解する上で重要なお話が聞けましたよ。詳細は次回!
取材・文:石井敏郎
(C)2016 Sony Corporation
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MESH公式サイト