やっぱり気になる最新キット。すべてが進化したという「新グフ」の実力やいかに!
子どもの頃に熱中した「ガンプラ」に再入門し、大人ならではの完成度を目指してきた本企画。遂に前回で「あの頃の俺に届けたい」憧れのガンプラを完成させることができた。今回は番外編として「その後のガンプラ」に触れておきたい。
「”あの頃”ホビー再入門」を最初から読む1980年に第1弾が発売され、当時の少年たちの間で社会現象とも呼べる大フィーバーを巻き起こした「ガンプラ」。発売40周年を迎える2020年に向け、2017年より「GUNPLA EVOLUTION PROJECT」もスタート。更なる精度と楽しさを追求したモデルが続々発売される予定となっていることからもわかるように、今なお日本が世界に誇るホビーの最前線に立つ存在となっている。
今回の企画では、本サイトの対象となる「オッサン」に向け、敢えて当時のガンプラである「旧キット」の製作に挑戦したわけだが、ここで改めて気になるのは、やはり「最新のガンプラってどうなってるの?」ということだろう。記事中でもたびたび「今時のガンプラは塗装も接着剤もいらないらしい」と書いてきたものの、果たしてそれで本当に、満足のいくガンプラが完成するのだろうか?
というわけで、早速買ってみた。製作するのはもちろん、比較対象となる「グフ」である(HGUC 196 機動戦士ガンダム グフ 1/144スケール)。以下、連載で製作した旧キットと区別するため「新グフ」と呼ぶことにしよう。
Amazonに記載されている商品説明によれば「現代的なプロポーションでグフをREVIVE! 広い可動域で多彩なアクションポーズを再現可能」という新グフ。実売価格は1200円程度だ。スケールは同じなのに、箱の大きさは旧グフの倍以上。その主な理由は、旧グフの数倍にも及ぶパーツ数にある。
写真に収めたものでも全体の半分弱。見ればわかるように、すでに色分けされているほか、透明だったりクネクネと曲げられたりと複数の素材が用いられている。一見すれば、パーツの少ない旧グフよりも難易度が高いのでは? と思えてしまうわけだが。
しかし、この新グフを含む最新のガンプラは、塗装も必要なく、接着剤も使わず、ニッパーひとつで完成してしまうというのだ。そう言われたら引き下がらないのがオッサン。だったらホントに、ニッパーだけで作ってやろうじゃないの。
たとえ素手でも! というか素手でも全然やり遂げられる!?
「なんか切りやすい!?」
製作を始めてまず感じたのはそこだ。旧キットのパーツを切り離す際の感触が「パツパツ」だとすれば、最新キットのそれは素材によっても異なるが概ね「サクサク」といったところ。そのためなのか、ニッパーだけでも少し注意しながら切り離せば、切り離し跡が大きくは気にならないのだ。さらに切り離し部の大半が、組んだ時に目立ちにくい部分に設けられているのも凄い。確かにこれなら、切り離した跡をデザインナイフで削ったり、やすりで磨く必要がほとんどない。
謳い文句どおり、接着剤ももちろん不要。立体パズルを組み立てる感覚で、指示通りパーツをパチパチとはめ込んでいけば良い。継ぎ目にあたる部分が、すじ(ライン)としてデザインに活かされるような設計となっている点にも感服。上の写真を見て、どこに切り離し跡があるのか、どこが継ぎ目なのか、パッと見で判断するのは難しいのではないだろうか? パーツが多いことを考慮したこともあるのか、右腕と左腕の工程がわけられているなど、説明書もかなりわかりやすく進化している印象だ。
関節が細かくわかれていたり、柔軟性のある素材でできていたりするのは、最新のガンプラならではの特徴だろう。
新グフの場合なんて、なんとモノアイが動かせるじゃない! 当時はガンプラどころか超合金でも、こんな細かいギミックはなかったよなぁ…。
…というわけで。なんと組み立て開始から2時間弱で、ここまで来てしまったのである。あとは各パーツを胴体にハメ込むだけで完成だ。もちろん塗装も継ぎ目消しもしていない。正直、ここまでの工程なら、あの頃の自分と大人になった今の自分とで、まったく変わらぬ出来栄えになっているだろう。こ、これが最新のガンプラの実力なのか…。
時代が変わったようだな…。新旧グフ対決、衝撃の結末とは??
さぁ、これが2時間かけた「新グフ」の完成例だ。
比較として、約2ヵ月かけて完成させた旧グフ(汚し塗装前)を、新グフと並べてみたのだが。ほー、見た感じ、新グフも塗装したみたいじゃない!? という驚愕よりも先に、正直なところ…
わー! 同じ1/144スケールなのに新グフのほうが背が高い! スタイルがいい!! あと顔が小さくてホリが深い!!
というプロポーションの進化に衝撃を受けてしまったのは、やはりオッサン世代だからなのか。数十年の歳月がもたらした体格向上。イマドキの若い子にモテるのは、やっぱり新グフなんだろうなぁ。俳優に例えるならヴィン・ディーゼルとチャールズ・ブロンソンくらいのギャップがあるぞ。う~ん、マンダム。
“性能”面での違いも歴然。関節各部を自由に動かせ、どんなポーズも思いのままな新グフに対し、
可動部も少なく、関節の安定性も新グフにかなわない旧グフは、マスキングテープで足元をサポートしてあげても、ついついこんな感じに(;・∀・)。身につまされるとは、このことである。
塗装もせず、接着剤も使わず、ニッパーだけで、本当にハイレベルな「新グフ」が完成してしまった最新のガンプラ。スペック的な話だけをすれば、明らかに旧キットより最新キットがオススメ…となるわけだが、旧キットには旧キットにしかない味わいや愉しみがあるのはいうまでもないこと。何より、我らオッサン世代にとっては、いささかスマートさに欠けるあの姿こそが、当時熱中したガンプラの姿なのだから。
まぁクルマに例えれば、最新キットはBMWミニで、旧キットはローバー・ミニってところでしょうかね。扱いやすく高性能なのはBMWだけど、手間がかかるところが楽しいのはローバーみたいな。少なくとも両方を製作した感想として断言できるのは、最新キット、旧キットの両方とも「ガンプラ」をつくる喜びが味わえるという点では、まったく差がなかったところ。旧キットの製作過程に敷居の高さを感じた人は、最新キットから「再入門」してみるのもオススメですよ。
さて、次はどんなプラモを作ろうかなぁ。
文:石井坂浩二郎
協力:株式会社バンダイホビー事業部
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