本は“人生の教科書”である。今回はオーシャンズ本誌でもおなじみのスタイリスト・熊谷隆志さんが、「穴が開くほど読み込んだ」というお気に入りの名作たちを紹介してくれた。
「熊谷隆志のお洒落で悪いか!」を最初から読む August Sander
ドイツの写真家アウグスト・ザンダーの不朽の名作で、多くのデザイナーにとって服飾の教科書。20世紀初頭を生きたドイツ人のポートレート集から透けて見える「生活と衣服の関係」に、学ぶところが多い。
Bohemian Modern – Living in Silver Lake
LAの著名建築家バーバラ・ベスタ―による、シルバーレイクに集うクリエイティブコミュニティの住宅やライフスタイルを紹介した写真集。この地域のアートやカルチャー好きなら必読の、良質な暮らしの参考書。
Sweet Earth – Experimental Utopias in America
自然と調和のとれた、独自のユートピアを目指すアメリカの新旧さまざまなコミュニティの暮らしを追った写真集。熊谷さんがヨセミテへの憧れを募らせていたときに偶然書店で見つけたそう。
Semina Culture
1950年代の西海岸アンダーグラウンドのカタリストでアーティスト、そして雑誌『Semina』発行人ウォレス・バーマンを中心とするコミュニティ文化に迫った本書。多くのクリエイターが感化された。
世界の犬
無類の犬好きである熊谷さんが、常に携帯している愛読書。暗記するくらい読み込んで、犬種や特性にはかなり詳しくなったそう。愛犬ボイドくん(バセットハウンド)は、本書を機に家族の一員に。(成美堂出版)
建築の本であれば庭で、画集はリビングで、というように、熊谷さんは本の内容に適した場所で読むのが癖らしい。読書は趣味やリラックスというよりも、インプットのための神聖な儀式といった位置付けだ。
いまの時代、本はネットでも買えるが、旅先でふと出会った書店でのジャケ買いも楽しい。そして、そこで得たことが次の一冊につながり…。本をめぐる好奇心は、エンドレスに連鎖していく。
<熊谷隆志 プロフィール>くまがいたかし1970年生まれ。渡仏し、1994年スタイリストとして活動開始。1998年以降はフォトグラファーとしても活躍。数々の人気ショップやブランドのディレクションを手掛け、東京・駒沢ではパーソナルショップ、ウィンダンシーを運営。また、2015年末にはファッションやクラフトなど自身の好きなモノだけを集めたCPCMをオープンさせて話題を集めている。グリーンライフにも造詣が深く、趣味はサーフィン。
熊谷隆志=写真
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