トレンディーエンジェル力とは……
「斎藤さんだぞっ」のフレーズでもおなじみの芸人・トレンディーエンジェルが持っている、 世に出た要因のひとつとなった「力」のことである。
それは、ネタの面白さとは別で、簡単に言ってしまえばタレント力みたいなものである。
面白いか面白くないかということはひとまず置いといて、彼らが何故ここまで受け入れられたのか?というところを考察していきたい。
きっとそこに、オッサンのタメになるヒントがあるような気がするのである。
「街角OSSANコラム」を最初から読む【コンプレックスを武器にするということ】ご存知の通り彼らの好感度は非常に高い。
それを裏付けるように、数多くのCMに起用され、女子高生からの人気も高い。
トレンディーエンジェルといえば、「ハゲ」ネタが代名詞だ。
欧米ではどの国にも必ずあるひと枠で、それを売りにすることは決して珍しいわけではない。
彼らも順風満帆で来たわけではない。出始めは戸惑いもあったようだ。
しかし、M-1で優勝することで知名度を上げ、「笑ってもいいハゲ」という今の地位を築いたのである。
コンプレックスを隠さずオープンにすることで、「正直者」「裏表が無さそう」 「ウソが無い人」などの良いイメージにつながり、彼らの好感度を押し上げているのだろう。
また、世間が持つ「ハゲ」に対するネガティブなイメージを、笑いに変えポジティブに転化し、 そこにプライドを持つという態度に、「勇気」と「芯の強さ」も感じ取ることができる。
コンプレックスをプライドにするという逆転の発想である。
これらの要因全てがプラスに働き、彼らの現在を下支えしているのだ。
しかし、これは中々高度なテクニックで、すぐに実践できる要素ではない。 我々オッサンが見習うべきはもうひとつにある。
【減点法より加点法】また、彼らは「加点法」で評価されている点も見逃せない。
加点法とは、点数の低いところから、どんどん加点して評価を上げていく方法で、 「ハゲ」を前面に出す「自虐」を駆使し、最初の点数を下げ、そこから点数を上げていく。
イケメンはどうしても初期点数が高い。
そうなると人はマイナス面に目がいきやすくなり、「あれ? イケメンなのに声が変」とか 「イケメンなのに足が遅い」など減点法で評価してしまう。
また「優しい」や「しっかりしている」などのプラス面に対しても、 初期点数が高いと「良かった」「やっぱり」などサプライズ感が無く、 加点される点数が低く見積もられてしまう。
高いパソコンなら、初期スペックは高くて当然だよね?という評価をされてしまうのである。
一方、見た目が悪く初期点数が低い人は、「声が変」「足が遅い」などのマイナス面に対して、 初期点数が低いから「しょうがない」「そりゃそうだよね」と減点が少ない。
反面、「優しい」「運動神経がいい」「強面なのにお年寄りに席をゆずっている」などの プラス面に対して、「意外!」「そうなんだ!」とサプライズ感が強くなり、 結果大きな加点につながる。
安いパソコンなのに、「ワードにエクセル……映像編集もできるの!」とお得感が強くなるのと 同じである。
しかもどちらも上限が無いため、加点法の場合100点を超えてしまうこともある。
トレンディーエンジェルは「ハゲ」という大きなコンプレックスで、初期点数を下げ、「ハゲなのに歌がうまい」「いい声」「よく見るとイケメン」などで点数を積み上げ、結果として高得点をたたき出しているのだ。
それを如実に表したのが、スキャンダルへの強さだ。
二股疑惑が報道されたにもかかわらず、たいしたダメージを受けていない。
減点法の芸能人なら、致命傷になっていたはずだ。
しかし彼らは、ここまで積み上げてきた加点で、そのマイナス面を打ち消してしまった。
スキャンダルという減点でもビクともしなかったのである。
この加点法こそが、トレンディーエンジェル力の源でもある。
これこそが、我々オッサンがすぐに実践できる要素だと私は考える。
元々、年を重ね見た目の初期点数は低くなっている我々だからこそ、 「エレベーターのドアを開けてあげる」や「歩くスピードを合わせる」などの ちょっとした優しさや気遣いで、加点される点数は多くなるはずである。
この加点を意識することで、今後のオッサンライフはより優雅なものになると私は考えるのである。
文:ペル・ワジャフ准教授
次回を読む