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2017.02.14

ファッション

『マージン・コール』 / 大企業の中で “闘うサラリーマン”の生きざまを描く


オッサンの醸し出す哀愁やチャーミングさに惹かれる若い女性は意外と多いという。しかし、女性ならではの「ツボ」を理解するのはけっこう難しい。そこで、映画に精通する女性ライターに、オッサン主演映画とその俳優の魅力を伺ってみた。所作や独特の雰囲気、生きざまなど、作品の役柄から見る「格好いい男性」とはいったいどんな人物像なのか。魅力を語ってもらった。
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今回は男社会で働く実直な男を演じたケヴィン・スペイシーをピックアップ。30代、40代になると、上司からは「なんとかしろ」、部下からは「なんとかしてくれ」と、中間管理職ならではの“板挟み状態”になったことはないだろうか? そんなとき、男としてどう振る舞うべきか。ケヴィン・スペイシーから“競争社会で生き抜く”極意を習おう。
 
【今回の先輩オッサン】
ケヴィン・スペイシー(サム・ロジャース役) / 『マージン・コール』
ケヴィン・スペイシー(サム・ロジャース役)
恋をする中年男性から凶悪犯罪者まで、自由自在に演じる天才俳優
ケヴィン・スペイシーは幅広い役を演じる名俳優のひとりだ。『セブン』(1996年)では凶悪犯罪者、アカデミー助演男優賞を受賞した『ユージュアル・サスペクツ』(1996年)では、ある事件の容疑者、アカデミー主演男優賞を受賞した『アメリカン・ビューティー』(2000年)では、娘の親友に恋をしてしまう中年男性……どんな役も自分のものにしてしまうカメレオン俳優。 映画を中心に活躍しているが、最近はネットドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』に主演するほか、脚本家、プロデューサーとしても活躍しており、50代に入ってからは映画好き以外からも注目を集めている。
男性は“ちょっとミステリアス”くらいが魅力的に見える
若い頃からちょっぴりおでこの広さが目立ち(失礼……!)、主人公にセクハラする役で登場した『ワーキング・ガール』(1988年)の頃は老け顔の20代だったが、年齢を重ねるほど、本来の格好良さやシブさが際立って見えてきた。50代を迎えた今がいちばん格好いいんじゃないかと思うほどだ。なのに、現在もなぜか独身。 プライベートを語ることはあまり好きではないらしいが、ミステリアスなところがあったほうが男も魅力度は増すものだ。SNSの普及で有名人との距離がぐっと近くなったけれど、ミステリアスな男性に興味をそそられることもある。

会社のピンチに直面したとき、頼りになるのは「慌てず冷静な判断」をする上司
そんなケヴィン・スペイシーが会社倒産をも招く危機的事態に向き合うサラリーマンを演じた作品がある。2008年に発生したリーマン・ショック(世界同時金融危機)を題材にした映画『マージン・コール』だ。彼が演じるのはウォール街で働く金融マンのサム。一夜にして8兆ドルもの資産を失いかねないピンチを迎えた彼らの決断模様を描いた金融サスペンスである。
突然のリストラは当たり前の業界の中で勤続34年を誇るデキる男だ。どちらかと言えば気難しく無愛想なキャラクターに見えるが、誰よりも信念が強く正義感がある。リストラされるかもしれない危機感がありつつも社員たちを奮い立たせるシーンのサムの話術は素晴らしく、リーダーシップを感じる。
サムには部下がいて上司もいる、そのさらに上には社長がいる。まさに中間管理職の世代には共感必至の板挟みの立場であり、組織の中で働くサラリーマンのひとりだ。まず、34年勤務ということからまじめな“働く男”であることがわかるが、サムを見ていると、厳しい競争社会で生き抜くためのコツがいくつかあるように思った。
それは第一に、仕事に対してまじめで正義感があること。第二に、どんな状況であっても会社のための最善策を考えること。第三に、生き抜くための選択を間違わないこと、などだ。決して口数の多い人物ではないけれど、おしゃべりではないからこそ、いざというときに発する言葉に重みがある。

犬の前で優しい表情を浮かべる人は、間違いなく素敵だと思う
大量解雇が行われても、会社の存亡がかかった事態であっても、動じないサムが弱さを見せる瞬間がある。飼っている犬の体調が悪く、長く生きられないかもしれない……と、犬をいたわるシーンだ。
仕事では決して見せない優しい表情や仕草で犬を思いやる姿に、「ああこの人も優しいところがあるのだ」とほっとさせられる。
こんな上司のもとで働きたいと思わせる、「仕事人」の姿に心奪われる
物語の後半、社長から納得のいかない理不尽な指令を受けたときのサムの対応には特にシビれた。信念を持って仕事をするというのはこういうことなのかと──サムのような上司のもとで働きたいとも思った。「仕事人」として信念を貫く者、野心を抱き続ける者、勝ち残る者──会社の危機と己の危機に直面しながら生き抜こうともがく男たちの生きざま、働く男の姿はやっぱり格好いい。
 
【information】
『マージン・コール』

DVD発売中 発売元:ツイン、ミッドシップ
販売元:アメイジングD.C.
ライター
新谷里映(しんたに りえ)
映画ライター、コラムニスト。女性誌「ESSE」、映画誌「J movie magazine」「CINEMA SQUARE」、ウェブ「cinemacafe.net」「NYLON JAPAN」「T-SITE」などでインタビュー、コラムなどを執筆。日テレ「PON!」の映画コーナーやラジオに出演するほか、映画のトークイベントのMCとしても活動中。http://rierieshintani.tumblr.com/
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