Watchの群像劇 Vol.45
2021.03.20
WATCH

ブレゲの“ブルーエナメル”時計が教えてくれた、色褪せない想い

「腕時計と男の物語」とは……

長い闘病生活を送っていた義母が亡くなった。コロナ禍で面会もままならなかったが、せめてもの救いは最期を看取れたことだ。そして今僕らは、主のいなくなった妻の実家の片づけをしている。

夫に先立たれた義母が一人で暮らしたのは、先代から受け継いだ古い家屋だった。

窓の一部には昔ながらのレトロな板ガラスが今も残る。その窓越しに見る少し歪んだ庭の風景は、冬の寒さを滲ませているようだった。そして重ねた歳月が醸し出す風格は、腕元のブレゲ「クラシック 5177 グラン・フー・ブルーエナメル」にも似ているように思えた。

ブレゲの “ブルーエナメル” ウォッチが教えてくれた、色褪せない思い出
腕時計257万円/ブレゲ(ブレゲ ブティック銀座 03-6254-7211)

ブランドを象徴する深いブルーのダイヤルは、800℃の高温で焼成するグラン・フー エナメルによって生まれる。独自調合の釉薬がガラス質の被膜となって表面を覆い、独特な艶感と光沢を生み、経年劣化も防ぐ。長い歴史によって培われた伝統的な装飾技法だ。いつの日かこの時計が僕の腕から我が子へと渡っても、今と変わらぬ美しさを湛えていることだろう。

「ねぇ、ちょっと来て。面白いものが出てきたわよ」。手招きをする妻が見入っていたのは一冊のアルバムだった。覗き込むと写っているのは幼い頃の妻だ。義母に抱かれた赤ん坊から始まり、立ち歩きする様子やおめかしした七五三、入園式。その姿はしだいに女の子らしくなってくる。

「不思議なものねぇ。写真を見ていると撮られた瞬間がまるで映画のシーンみたいに甦ってくる。カメラを構えた父さんや周囲の笑い声までも」。

そう呟いた瞬間、これまで気丈に振る舞ってきた妻の肩が震えた。そして僕の目の前にいる、妻であり、母である彼女は、この家で溢れんばかりの慈しみの下、育った娘に戻っていた。

彼女を大切に守ってきたのは、あの窓ガラスのような見えない愛情だったに違いない。だが大人になった彼女に僕は何をしてあげられたのだろう。本心を理解することなく、キャリアアップと育児を二者択一させ、家庭という世界に閉じ込めてはいなかったか。そんな思いが込み上げた。

普段意識することはなくても人は皆、誰かに見守られ、支えられている。たとえそれがガラスのように脆く、壊れやすいものだったとしてもなくてはならない。彼女を守るのは、これからは僕の番だ。

そんな誓いとともに、そっと妻の肩を抱いた。写真の少女の瞳がもう一度輝いたように見えた。

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名門の様式美にブレゲ・ブルーのモダニティが漂う

K18WGケース、38mm径、自動巻き。257万円/ブレゲ(ブレゲ ブティック銀座 03-6254-7211)

BREGUET
ブレゲ/クラシック 5177 グラン・フー・ブルーエナメル

現行コレクションでは初めてグラン・フー エナメルのブレゲ・ブルーをダイヤルに採用した。深いブルーは、ブランドカラーであると同時に、通常ブレゲ針に施される伝統的な青焼きの色合いを思わせる。そして細く伸びた指針は、シルバーのロジウム仕上げにより、美しさがさらに際立つ。

シンプルを極めたクラシックなスタイルにも、チャプターリングには星やダイヤモンド、百合の細密なモチーフが並び、さりげなく華やぎを添える。

 

※本文中における素材の略称:K18=18金、WG=ホワイトゴールド

「腕時計と男の物語」とは……
男には愛用の腕時計がある。最高の相棒として、その腕時計は男と同じ時間を刻んできた。楽しいときも、つらいときも、いかなるときも、だ。そんな男と腕時計が紡ぐ、とっておきの物語をここで。
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川田有二=写真 石川英治=スタイリング MASAYUKI(The VOICE)=ヘアメイク 柴田 充=文

# ブレゲ# Watchの群像劇# エナメルダイヤル# 腕時計
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