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2020.10.02

時計

ヘミングウェイが愛した腕時計は、2020年代の男も渋く彩る存在だ

年を重ねると、身に着けるアイテムには存在としての“重み”も大事、と思えてくる。腕時計もしかり。その選択には、年相応の品質はもちろん、生まれた背景まで吟味したい。
「プロミネンテソロテンポ」SSケース、縦52×横33.75mm、自動巻き。45万円/クエルボ・イ・ソブリノス(ムラキ 03-3273-0321)
角形が個性的な腕時計、クエルボ・イ・ソブリノスは、まさにその眼鏡にかなう、大人の男を引き立てる一本だ。実は、ヘミングウェイが愛した時計店の血脈を引き継ぐ由緒正しきブランドでもある。
そう聞けば、なおさら遠目からも漂うセクシーさが感じられるではないか。早速、気になるこの時計の魅力を解き明かしていきたい。
 

古き佳きキューバの匂い漂う、知る人ぞ知るその由緒

遡ること100年余りとなる19世紀末のこと。カリブ海の真珠とも謳われたハバナは、ステイタスのあるリゾートとして、世界中の名士たちが集まった。
1882年、彼の地のメインストリート・キンタ通りにオープンした宝飾店「LA CASA(ラ・カーサ)」が、のちのクエルボ・イ・ソブリノスである。
100年以上前に誕生したクエルボ・イ・ソブリノスの店舗写真。今となっては大変貴重。
文学・科学・映画・政治といった世界の大舞台で活躍するセレブリティたちが、必ず立ち寄ったといわれるこの名店。
今も残っている顧客リストの中には、文豪アーネスト・ヘミングウェイや、英国元首相ウィンストン・チャーチル、物理学者アルバート・アインシュタインといった、名だたる、しかも、物にこだわることでも知られる偉人たちが名を連ねているのだ。
それもそのはず、この店を訪れることは、当時、パリのヴァンドーム広場におけるジュエラーを訪れるのと同義だったのだから。
ヘミングウェイやチャーチルなど、名だたる偉人の顧客リストはこの金庫で発見された。
それほどの隆盛を誇りながらも、20世紀半ば、キューバに起こった政治混乱の中で惜しくも閉店。その後、およそ40年という長い時を経たのち、2002年に復活を果たす。
ラテンの精神を受け継いだ個性的なディテールと、スイス時計ならではの高品質で、高級時計界において異彩を放っている。
創業当時のモデルを引き継ぐブランドの定番「プロミネンテ ソロテンポ」。SSケース、縦52×横33.75mm、自動巻き。45万円/クエルボ・イ・ソブリノス(ムラキ 03-3273-0321)
「プロミネンテ ソロテンポ」の詳細はコチラ
こうした歴史に立脚したクエルボ・イ・ソブリノスのデザインは、今も変わらない価値をもって燦然と輝く。この角形モデル「プロミネンテ ソロテンポ」を特徴付けるのはレクタンギュラーケース。これは、ブランドの初期から存在した、ヴィンテージファン垂涎のスタイルだ。
1920年代に流行したアール・デコの意匠に、1930年頃の古典主義の要素を汲みつつ、モダンに昇華しており、世に数多あるラウンドウォッチとは一線を画すものに仕上がっている。
子細に見れば、ダイヤルにはカリブ海をイメージした細かなギョーシェが施され、なおかつ、クラシカルなフォントによるアラビアンインデックスと線路型の分目盛り、そして6時位置には扇型に切り取られた日付表示の枠が象られている点も、その美観に拍車を掛けるものだろう。

特製のヒュミドール型ケースに収まる点からも、ブランドのルーツを感じられる。このような、ラテンを思わせる男らしいスタイルが、ブランドのアイデンティティを大きく形作っているわけだ。
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