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2018.02.18

時計

「コルム」のCEOに聞いた、時計界に名を残した名作たちのウラ話

創業以来、独創的なデザインの腕時計を発表し続けてきたコルム。2017年9月にCEOに就任したジェローム・ビアール氏に、このユニークなウォッチブランドの歴史と、今後の方向性について聞いた。
コルムとは?
1955年、スイスのラ・ショー=ド=フォンにてルネ・バンヴァルトが創業した時計ブランド。ブランド名は「議決に必要な絶対多数」という意味のラテン語“quorum”に由来。インデックスを国際海洋信号旗で表現した「アドミラル」のほか、「コインウォッチ」「ゴールデンブリッジ」「バブル」という4つのアイコンウォッチをラインナップ。“CRAFT YOUR DREAMS”をモットーに革新的な時計作りを続けている。
 

「“唯一無二であること”を継承していきます」

CEO ジェローム・ビアール氏。1963年、フランス・アヴィニョン生まれ、スイス・バーゼル育ち。リシュモン社にてヴァシュロン・コンスタンタンおよびカルティエの営業・マーケティング責任者として16年勤務し、時計業界において計25年間のキャリアを誇るエキスパートである。2017年9月、中国のウォッチディストリビューター、シティチャンプ・ウォッチ&ジュエリー社の欧州時計部門CEOに就任。コルムとエテルナの2ブランドの業務執行全般を統括する。趣味はテニスとスキー。5人の子供を持つ父親でもある。
コルムといえば時計好きには「アドミラル」が知られている。12角形のベゼルに国際海洋信号旗のインデックス。1957年から2003年まで開催された英国のヨットレース「アドミラルズカップ」に敬意を表し作られた腕時計だ。ただこの時計を知る人のなかでも、ブランドの背景まで詳しく知る人はそう多くないだろう。来日したCEOのジェローム・ビアール氏に、改めてブランドの歩みを伺った。
「創業者ルネ・バンヴァルトは“高い技術を、独創的な方法で”と考えていました。腕時計における高度な技術は、えてして古色蒼然としたデザインで表現されることが多いもの。それを積極的に変えていこうという当時のメッセージは、今も受け継がれています」。
その“独創的な方法”は、ブランドの4つのコレクションを見れば明らかだ。「アドミラル」を筆頭に、「コインウォッチ」「ゴールデンブリッジ」「バブル」の各モデルは、それぞれがまるで別のブランドの時計であるかのような、まさに独創的なデザインである。
「1960年に防水機能を持つスクエアモデル“初代アドミラルズカップ”を発表。その後’64年に、ケースに本物の20ドル金貨を用いた“コインウォッチ”を発表します。当時の腕時計作りにはなかったユニークなアイデアであり、薄く柔らかな金貨をスライスするには高度な技術を要します。このモデルは歴代のアメリカ大統領たちが愛用(※1)したこともあり、一躍ブランドを代表する存在となりました」。
ムーブメント製造においても時計界に名を残す名作がある。それが’80年に発表された「ゴールデンブリッジ」だ。
「当時の著名な独立時計師のひとり、ヴィンセント・カラブレーゼの提案によって生まれました。狙いは“ムーブメントが主役になる時計”。輪列をあたかも橋のように直線的にデザインし、文字盤を省略することで機械の心臓部にスポットを当てました。これにより自社製造ムーブメントの分野でも存在感を示すことができたのです」。
’83年には「初代アドミラルズカップ」のデザインを一新し、12角形ベゼルの「アドミラル」をリリース。その後、アートコレクターとしても知られるサヴァリン・ワンダーマンがブランドオーナーとなった2000年に、前代未聞の新作を発表する。半球状の風防にスカルモチーフのダイヤルを持つ「バブル」だ。形状の独創性もさることながら、高級腕時計で初めてスカルをデザイン(※2)したことで話題をさらった。
「その後’10年代、ワンダーマン氏の資本から離れて苦しい経営を強いられました。しかし現在、業績は回復傾向にあります。危機を乗り越えることができたのは、“高い技術を、独創的な方法で”という創業時の理念を具現する4つのコレクション、“コルム4兄弟”があったから。そのオリジナリティは今、世界のマーケットで確かな存在感を発揮し始めているのです。コルムは常に開拓者であって、ほかの真似をするブランドではありません。“唯一無二であること”を継承し、再び新たな時代を構築したいと考えています」。
 
歴代のアメリカ大統領たちが愛用(※1)
リチャード・ニクソン、ジミー・カーター、ロナルド・レーガン、ビル・クリントンら歴代6人の大統領が使用。「成功者を象徴する腕時計」としてアンディ・ウォーホルら多くの著名人にも愛用された。
高級腕時計で初めてスカルをデザイン(※2)
当時病いを患っていたワンダーマン氏が、痩せ細った自身の顔を見てスカルのデザインを思いついたという。以降、雨後の筍のごとく多くのブランドからスカルモチーフの腕時計がリリースされた。
髙村将司=文


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