「クルマ好きは時計好き」とも言われ、両者の間にはある種のシンパシーが通じ合う。
流麗なデザインの内に、猛々しいパワーや精緻なメカニズムを秘めること。実用性と趣味性をあわせ持ち、個人の価値観やスタイルを表現すること。現代の効率性や合理性とは相反するものの、充足感をもたらし、気分を高揚させること。こんな共通項が挙げられるだろう。
そうした関係から生まれるのが、クルマとのコラボレーションウォッチだ。
例えばこちらのウブロ「ビッグ・バン フェラーリ チタニウム」。フェラーリとウブロは、現代のラグジュアリーという価値観で結び付き、スポーティで高性能、革新技術へのチャレンジを続けるという点で共通している。
このジャンルはドライビングに適したクロノグラフ機構や高い視認性、軽快でスポーティなデザインが特徴だが、最近では機能性以外にヘリテージな世界観を共有するものも多い。その魅力が伝わってくる4本を紹介しよう。
BREITLING for BENTLEY
ブライトリング・フォー・ベントレー/ベントレー スーパースポーツ B55
スマホとコネクトする、新エンジンを搭載ブライトリングとベントレーのパートナーシップは、2002年のコンチネンタルGTのデビューとともに開始。そして今回、最新のコンチネンタルGTの発表に合わせ、新たなモデルが誕生した。自社開発・製造のキャリバーB55を搭載し、ラリー/レース/レギュラリティラリーという3種類のプロフェッショナルなクロノグラフ機能を採用。しかも計測データはスマートフォンに転送され、専用アプリで管理できるコネクテッド・クロノグラフという特別仕様だ。
TAG HEUER
タグ・ホイヤー/タグ・ホイヤー カレラ キャリバー ホイヤー01 クロノグラフ
伝説のレースに由来するブランドアイコン「カレラ」の名は、1950年代に実在した伝説のレース“カレラ パン アメリカーナ メキシコ”にちなむ。誕生から半世紀以上経つ今もロングセラーを誇るブランドのアイコニックコレクションだ。ケースは12ピースから成る複雑な構造が特徴で、自社ムーブメントのキャリバー ホイヤー01を搭載。主幹モデルはスケルトン仕様だが、本作はクローズド文字盤でケース径も小さめに。そのスピード感あふれる佇まいはスーツ姿にも馴染む。
VACHERON CONSTANTIN
ヴァシュロン・コンスタンタン/ヒストリーク・アメリカン 1921
華やかなりしモータリゼーションを伝える本モデルは1921年に、アメリカのマーケット向けに製作されたものがオリジナル。文字盤がやや傾いているのは、クルマのハンドルを握った状態で正対し、時刻を読み取りやすくするためだ。スクエアなクッションケースとのバランスが美しく、コーナーに備えたリュウズもユニークなデザインに華を添えている。アップルハンドや斜体インデックス、レイルウェイトラックなどのヴィンテージ感漂うスタイルから、まるで当時のエレガントなモータリゼーションが伝わってくるかのようだ。
OMEGA
オメガ/スピードマスター レーシング マスター クロノメーター
誕生60周年を迎え、レースの原点に戻る“ムーンウォッチ”で名高い「スピードマスター」だが、その出自はカーレーシング用。今年で誕生60周年を迎え、原点に戻る。1968年に初採用されたチェッカーフラッグ風の目盛りを再現、サブダイヤルも大きくして視認性を向上。レザーとラバーを組み合わせたストラップにはパンチングが施され、さりげなくオレンジが覗く。マスター クロノメーターを取得する自社キャリバー9900を搭載。
モータースポーツウォッチを着ける男とは、決して走り屋やスペックをそらんじるようなマニアにあらず。走る快感を知り、その開放感を大切にするような男だ。たとえクルマを降りても、時計のビートがエンジンの鼓動と一体になり、走り続ける。そんな男にふさわしい時計なのである。
星 武志(エストレジャス)=写真 石川英治(Table Rock. Studio)=スタイリング