20代から好かれる上司・嫌われる上司 Vol.44
2021.06.04
LIFE STYLE

「緊急事態だから頼む!」を連発する上司は20代から嫌われる

「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……

緊急とは「重大で即座に対応しなければならないこと」

メールのタイトルに「緊急」とか「至急」という文面を見ると驚いてしまいます。

ところが「何か大変なことが起こったのか!」とすぐメールを開くと、単に「短納期」というだけのことだったりすることも多く、肩透かしを食らわされた気分になります。

辞書を引くと、緊急とは「重大で即座に対応しなければならないこと」とありますから、単に急ぎの案件のことは、正確には緊急とは言わないようです。「重大さ」「大切さ」が伴わなければならないからです。

もちろん、急ぐ必要があるからには一定以上の重大さはあるとは思いますが、問題は「なぜ急がねばならないのか」です。

 

なぜ、それが緊急になってしまったのかが重要

その案件が「緊急」になった原因が、直前に突発的に起こったのであれば、仕方がありません。「確かに、それは事前には想定しがたいよね」ということであれば非難もできません。

ところが、もし「いや、そんなことが起こることは事前に容易に想定できますよね」ということであれば話は違います。

緊急事態宣言をされてしまうと、こちらが計画していた手順をすべてすっ飛ばして、緊急とされたことを優先しなくてはならなくなります。

今時、電話ですら「他人の時間を突発的に奪う」と嫌われているのに、予想できることで緊急事態を作り出したのであれば、嫌われるのは当たり前です。

 

人の時間を軽視していると見られてしまう

チームマネジメントをする人には、限りあるメンバーたちの時間を有意義なものにする責任があります。

世の中ですべての人に平等に与えられているのは時間であり、時間こそが人生です。つまり、その人の時間を奪うことはその人の命の一部を奪うことと言っても過言ではありません。

ですから、「時給を払っているのだから、メンバーの時間など何に使ってもいいだろ?」ではなく、メンバーが自分の命を賭けるに足る使い方にする必要があります。

お金など時間をかける対価の一部に過ぎません。仕事における充実感や成長感、達成感などの幸福感を最終的にもたらさない使い方を強要するのは、人の時間、人命を軽視していると思われても仕方ありません。

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「びっくりさせるな!」(ノー・サプライズ)は仕事の基本

繰り返しますが、それでも、想定しようがなかったことに対する緊急事態宣言であれば、百歩譲って容認せざるをえません。

しかし、通常の仕事において、想定できないような突発的出来事などどれほどあるのでしょうか。

ユニクロの柳井さんが「これが私の最高の教科書だ」と帯に書いた『プロフェッショナルマネジャー』(プレジデント社)の著者ハロルド・ジェニーンも、「びっくりさせるな!(ノー・サプライズ)」が仕事の基本であると説いています。

問題は発見や対処が早いほど解決は容易になるためです。チームリーダーの仕事は、まさに「早期発見・早期対応」により、無駄にメンバーの時間を使わないことなのです。

 

プロジェクトマネジメント能力の不足の表れ

「いや、メンバーの時間を軽視などしていない」と言うなら、その人はプロジェクトマネジメント能力が不足しているのかもしれません。

プロジェクトマネジメントとは「プロジェクトを決まった納期とコスト内で完成させるスキル」のことです。目標を達成するためのタスクを洗い出し、各タスクに人をアサインして、かかる時間を見積もり、計画をたてて、進捗管理をする。

言ってしまえば「たったそれだけのこと」です。ですが、緊急事態宣言を連発してしまうのは「たったそれだけのこと」ができないからなのです。しかし、なぜ、一見すると簡単にみえることが、できない人が多いのでしょうか。

 

自己理解と他者理解が甘いことが原因

それはずばり、自分とメンバーのことをよくわかっていないからです。

まず、自分がある仕事をする際に、どんな手順でどんな能力・スキルを使ってやっているのかわからなければ、プロジェクトマネジメントをする際に、完全なタスクの洗い出しができません。

大きなタスクの抜け漏れがあれば、それがのちに「あ、あれやってなかった!」と緊急事態宣言を引き起こします。

もし、タスクが漏れていなかったとしても、メンバーの力量をきちんと把握できていなければ、かかる時間が正確に見積れません。

「この人ならこの時間でできるだろう」が間違い、これものちの緊急事態宣言につながります。

 

やっぱり他人に興味がないのでしょう

つまり、自己理解と他者理解ができていなければ、緊急事態の無いプロジェクトマネジメントはできないのです。

そして、自己理解と他者理解のベースは、それぞれ自己反省と他者観察であり、そのまたベースは他者への興味・関心です。

他者に興味がないから、自分が行った行為を振り返って説明したり改善したりしようという動機が生まれない。他者に興味がないから、他者をじっくりみて、その人がどんな能力・性格・志向の人かを把握しない。

それらが最終的には人の時間を奪い去る緊急事態宣言を連発することにつながるのでしょう。

そういう「人の命を軽視する上司」が、部下から嫌われてしまうのは当然の道理だと思います。

連載「20代から好かれる上司・嫌われる上司」一覧へ

「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……
組織と人事の専門家である曽和利光さんが、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「職場の20代がわからない」の続編となる今回は、20代の等身大の意識を重視しつつ、職場で求められる成果を出させるために何が大切か、「好かれる上司=成果がでる上司」のマネジメントの極意をお伝えいたします。
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組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス
『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム)
曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。

 
石井あかね=イラスト

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