2021.10.12
LIFE STYLE

先行販売は3万枚が1時間で完売。「アンダーアーマー」のマスクが異彩を放つ理由

当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です。元記事はこちら

アンダーアーマーのマスク爆売れの背景を取材しました。アメフト、ボブスレーの二刀流アスリート・栗原嵩選手も使用(写真:アンダーアーマー提供)

コロナ禍以降で大きく変化した生活様式のひとつは、外出時のマスク着用だろう。街を歩いていても、マスクをしていない人はほとんど見かけない。マスク着用の常態化に伴い、家庭用マスク市場は当然のことながら急拡大を見せた。

富士経済が2020年11月に発表した調査では、2020年の家庭用マスク市場は、販売金額が5020億円にものぼると予想された。2019年の415億円から、実に12.1倍にも市場が膨れ上がったのだ。

急激なマスク需要の増加によって異業種が続々と新規参入し、市場にはさまざまなマスクが出回るようになった。最近は、デザイン性やファッション性に優れるものも多い。

そんな群雄割拠とも言えるマスク市場において、“スポーツマスク”として異彩を放つ商品がある。アンダーアーマーが開発した「UAスポーツマスク」だ。

日本では、アンダーアーマーの総代理店であるドームによって2020年6月に先行販売を開始。その後、右肩上がりに販売数を伸ばし、大ヒットを記録している。

全国のスポーツ専門店のスタッフが選ぶ「日本スポーツ用品大賞2020」では、「最も売れた商品」「最も革新的だった商品」の2部門で大賞を受賞した。

昨年9月に累計販売数50万枚を突破

「あくまでスポーツをするときのマスクとしてつくられている。そこが他社との差別化要因になっています」と話すのは、ドームのブランドマーケティング部・松坂恭平部長。

大手スポーツメーカーが続々とスポーツマスクの販売を開始するなか、「アンダーアーマーはスポーツマスク市場の第一人者」として市場を牽引している。

オンライン取材に応じてくれたドームのブランドマーケティング部・松坂恭平部長(筆者撮影)

UAスポーツマスクの特徴は、独自設計の3層構造だ。マスクの外側には撥水加工を施した生地を使用し、雨や汗などの水分を弾く。

中間層には空気のみを通す立体構造を採用することで、通気性を確保しつつ、湿気や汗の通過を抑制。肌に触れる内側の裏地には冷感素材を使用し、着用時の涼しさを持続させる。速乾性にも優れており、手洗いをすることで繰り返し使用できる。

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商品開発のきっかけは、世界中を震撼させた“未知のウイルス”への対策だ。2020年3月、アンダーアーマーは新型コロナウイルス感染症と戦う医療従事者用のマスクを開発し、現地の医療機関や民間団体に配布。その後、「コロナ禍でアスリートも困っているという声があった」(松坂氏)ため、医療従事者用のマスク開発で培った経験と技術を生かして、UAスポーツマスクがつくられた。

価格は3300円。先述したように日本では2020年6月に先行販売が行われ、予定枚数の3万枚が1時間で完売。その後、本格販売を開始するとすぐに販売数を伸ばし、同年9月には累計販売数50万枚を突破した。

40%の軽量化を実現した新作を発売

2021年7月には、従来モデルより40%の軽量化を実現した「UAスポーツマスク フェザーウエイト」を先行発売。これまでと同様の3層構造だが、生地が薄く、軽くなったことでシャープなデザインになっている。

40%の軽量化を実現した「UAスポーツマスク フェザーウエイト」。写真右は新色・ウォッシュドブルー(写真:アンダーアーマー提供)

また、ストレッチ性のある独自のベースレイヤー生地を使用し、ノーズワイヤーを調整可能にしたことでフィット感が向上。さらに、運動中にマスクが鼻から滑り落ちないよう、マスク内側の鼻部分には柔らかいスエード調の生地を採用している。

新モデルには、運動時の快適性を追求した改良が随所に見られるのだ。

「フェザーウエイトは、アスリートの声を反映して軽量化しました。アンダーアーマーは『Made For Athletes』というビジョンを持っているので、マスクに限らず、すべてのプロダクトがアスリートを基点につくられています」(松坂氏)。

そのアスリートたちからの反響は上々だ。アンダーアーマーの契約選手たちが新モデルを手にすると、「マスクを持った瞬間に『めちゃくちゃ軽いね』と皆さんに言っていただけました。従来モデルを渡したときよりも反応がよかったですね」と松坂氏。

同年8月からは全国のスポーツ量販店などで本格販売を開始。価格は2970円。一般消費者からも好評で、足元では順調な売れ行きを見せているという。9月17日には新たに2色のカラーバリエーションを追加し、ラインナップを拡充した。

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一躍人気商品となったUAスポーツマスクだが、昨年はほとんど広告を打たずに販売数を伸ばした。機能性の高さが評判を呼び、既存顧客はもちろん、新規顧客の需要獲得にもつながった。

「ECサイトのデータを見てみると、マスクで初めてアンダーアーマーの商品を買ったという人もかなりいらっしゃるんですよ。新規の獲得を狙っていたわけではないんですが、結果的にプロダクトのクオリティーで選んでいただけていますね」(松坂氏)。

新モデルを発売した今年は、GoogleやYouTube、SNSなどで広告を打ち出している。が、ターゲットを広く取るような広告戦略は行っていない。それはなぜか?

松坂氏は「トレーニング中や競技中にストレスなく着用でき、1%でもパフォーマンスを上げてもらうことがブランドのミッション。なので、基本的にはトレーニングや運動をしている人がターゲットです」とその意図を話す。

とはいえ、SNSやYouTubeを使った若年層へのアプローチはつねに意識しているという。アンダーアーマー直営店舗のひとつ「アンダーアーマーブランドハウス新宿」では、インスタグラムのライブ配信を使ったオンラインイベントを定期的に開催。スタッフによる注目商品の紹介や視聴者との質疑応答などを行う。

YouTubeでは松坂氏が企画した「NICE DOME」というチャンネルを運営し、商品企画担当者が実際に商品を着用しながらサイズ感や仕様などを紹介している。

「若年層を意識することで、ほかの年齢層への波及効果もあると思っています。例えば、若年層向けにプロモーションムービーをつくったとしても、ほかの世代の方々がそれを見たときに、昔を思い出して感化されたりしますよね」(松坂氏)。

コロナ禍でも運動できることを発信

現在はマスクが市場に多く出回っていることもあり、昨年に比べると販売数は落ち着きを見せている。しかし、それを悲観するようなことはない。

むしろ、「マスクが売れない状況のほうが世間的にはいいことですよね。もちろん需要に対する準備はしますが、来年以降も新作を出してどんどん売っていこうとは考えていません。それよりもいまは、コロナ禍でもマスクを着用して安心・安全に運動できることを発信しています」と松坂氏。

ライフスタイルモデルの栗原ジャスティーンさんも使用(アンダーアーマー提供)

今年の4月にはエニタイムフィットネスとタイアップし、「BACK TO GYM」というキャンペーンを開催。換気や消毒などによって丁寧にコロナ対策を行っているスポーツジムでの運動再開をアピールした。

また、密にならずにできる運動として、ランニングに関する発信も強化している。今年7月にドームの社員によるユニット「UAラビット」を結成し、デジタルコンテンツなどを通じてランニングの魅力を伝えている。

日本リサーチセンターとイギリスの調査会社YouGov社が、23の国と地域でマスクの着用率についてインターネットで調査したところ、「公共の場ではマスクを着用する」と回答した日本人の割合は2021年1月時点で90%、2月時点で88%と高水準だった。マスク着用が義務化されていないなかでも、日本人はマスク着用への意識が高い。

だからこそ松坂氏は、「アンダーアーマーのマスクはプロダクトとして優れているので、うまく活用していただき、お客さまにはコロナ禍でも安心・安全に運動してもらいたい」と強調した。

 

新妻 翔:フリーライター
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記事提供:東洋経済ONLINE

# アンダーアーマー# マスク# 東洋経済
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