OCEANS × Forbes JAPAN Vol.74
2021.09.01
LIFE STYLE

ベルリンの人気店オーナーに聞く、大麻由来「CBD」市場のこれから

当記事は「Forbes JAPAN」の提供記事です。元記事はこちら

ベルリン発のCBDショップ「Hempvizer」オーナーPaulina。昨年オープンしたカフェ併設の店舗前で

2017年にドイツで大麻草由来のCBD(カンナビジオール)の取り扱いが合法的に解禁されてからというもの、様々なCBDショップが首都ベルリンでオープンしている。

経営者たちが軒並みこのレースに参加しているなかでも、堅実かつ着実にミラノやバルセロナなどにも店舗数を拡大しているのが「Hempvizer」だ。

ドイツの首都ベルリンにフリードリヒスハイン=クロイツベルク区、ノイケルン区のショップを展開したのに続き、2020年のコロナ禍にミッテ地区で初となるカフェ業態となる店舗をオープンした。ロンドンで経営学を学んだポーランド出身の若き経営者Paulinaに、ドイツそしてEUにおけるCBD市場の現在について話を聞いた。

 

自分たちの体験をシェアしたいというところから始まった

──いつ頃お店を始めましたか。

パートナーと一緒に2018年の夏ごろベルリンでオープンしました。2人ともCBDをスキンケアの目的や、緊張や不安を和らげるために利用していたこともあって、誰もがCBDに気軽にアクセスできるべきだと考えました。せっかくならメンタルヘルスの問題を抱えている人に届くようにシェアしようと考えたのが始まりです。

私たちとしては、まずは「失うものはないからやってみよう」という感覚。極端な話、「失敗してもビーチでのんびり暮らせばいい」と思っていました(笑)。

学生時代にロンドンのミドルセクス大学でビジネスを専攻したことから、お店を経営するビジネス的なことやコンセプトは最初からはっきりしていましたが、CBDに対するビジネス領域について門外漢でした。なので、まずは店の場所探しとコンセプトメイキングに時間をかけました。

──ヨーロッパにおけるCBD市場のリサーチについてはどのように?

ドイツでCBDが合法になったのは2017年で、まだまだ新しいマーケットです。マーケット全体に改善の余地がありますし、新しい情報が入ってくる可能性もあります。

合法化の後、私たちはすぐにオープンしたので、まだ臨床段階でしたがドイツやほかのEU加盟国でマーケットを広げてきました。

──ベルリンを1つ目の拠点にした理由とは。

私が住んでいる街でしたし、ドイツの中でも新しい文化に対する寛容さがあります。市場を調べた上で、ここでやろうと決めました。現在ミラノとバルセロナの1店舗ずつを含む計6店舗を経営しています。

私とパートナーは、いつも連携して動いてるので、彼がミラノに行くときは、私はベルリンに残ったり、その逆もまた然り。経営上、離れ離れになることもあります。

スペインやミラノに行ってベルリンに戻ってくるのは、それなりにハードでもありますが、犠牲を多く払えば、何でも成し遂げられると思うのでやりがいを感じています。

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──大麻草のハイになる成分であるTHC含有量のレギュレーションについて調べるのは大変でしたか。

そうですね。例えば、EUにおける基準として、THC 0.2%以下が目安になっています。しかし国ごとにそれ以上に厳格な国もある一方で、イタリアは0.5%まで許容されています。そのため我々の製品はラボでテストしてから店頭に出しています。(注釈:現在はEUの基準を米国と同じ0.3%に引き上げる方向性で法整備が進んでいるという。また日本ではTHC含有量が0%でないと取り扱えない)

CBDにおいても「特定の方法(Certain way)」でのみ使用が認められていますが、「特定の方法」が具体的に何なのかを調べるのは、簡単ではありません。

要するにはっきりとなにがよくてなにがダメなのか、明記されていないのです。それぞれの店舗が自身の方法で、手探りで違法にならないようにやっているというのが正直なところです。

 

ストレスフルな現代に 全世代に向けて「ウェルビーイング」を

──具体的な店づくりにおけるコンセプトは?

ウェルビーイングです。ストレスフルな状況や精神的に参りそうな時にも影響されず、自分のベストな状態で1日を過ごせる日常を送ることにフォーカスしています。

社会生活を送る中でストレスは誰もが抱え込むもの。そういうこともあってスピリチュアルなマインドフルネス的意味合いではなく、より具体的に心と体を健康にしようという意味です。

──最初に売り始めた製品はなんでしょうか。

最初は、CBDオイルやリラクゼーションティーのようなベーシックな物から作り始めました。「誠実な製品を届けること」を大切にしているので、パッケージだけがきれいで中身が伴わない、なんてことがないように気をつけています。

他のCBDのブランドの宣伝の仕方や製品の作り方に賛同できなかったという背景もあり、次第により良いものを届けたいと思うようになりました。

なので、ミラノにある栽培施設で、栽培し主要な製品の品質改良をしています。値段が上がっていっても、いいものを購入していると安心してもらえるようなモノづくりをこころがけています。

注文数だけにこだわるCBDストアがある一方で、我々、製品展開を増やし選択肢を与えられるようにしていきたいです。

店には洗練されたデザインのオリジナル商品が並ぶ

──最近ではどのような商品が人気でしょうか。

コスメ商品です。昨年化粧品のラインを展開し、大きくフェイス・ボディーヘア・ワークアウトというカテゴリに分けて販売しています。

これらの商品は基本的にTHC成分の含有量がゼロなので、弁護士やパイロットなど血液検査を要する仕事に就く人にも安心して使ってもらうことができます。

CBDオイルは舌の裏で摂取するとお腹で吸収され、脳内でも作用する効き目の長いものです。私もいつもバッグに入れて持ち歩いています。忙しかったり、ストレスを感じたりしたときに使います。

私も含め、忙しい現代社会を生きる人たちの長い一日を乗り切るには欠かせないものだと思います。

人気なCBDのコスメライン

──顧客層はどのあたりをターゲットにしていますか。

ヒトの体は100歳まで成長を続けるので、高齢者も子供も我々のターゲットです。我々が提示するのは手植えのピュアなものなので、てんかんを持つ子供にも使われます。

今は高齢者も抑うつした気分になることが当たり前の時代なので、若い人だけでなく年配の方もCBDを必要としています。

10代の子どもを連れてくるお客さんもいて、「あれが欲しい」とおねだりしているのを見るのはうれしいですね。製品にバリエーションを持たせることを大切にしています。

子供に人気のエディブル(食用の商品)
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──ドラッグのイメージを払拭するために、どのような事柄に気をつけていますか。

「外国人のラッパーが“weed”(大麻、マリファナ)を吸ってハイになっている」といった典型的なイメージを避けるよう努めています。イメージビジュアルもインスタグラムなどで戦略的に行っています。

企業名は出せないですが、有名な高級ブティックアパレル関係のビジュアルディレクターが、最近私たちのインスタグラムアカウントを手伝ってくれています。

そもそも、CBD製品を摂取してもハイにはなりません。ハイになるのは、大麻草の中にあるTHCという成分によるもので、CBDはそうしたいわゆるweedとはまったく違うものです。

──経営を拡大していくフェーズで、大変なことはありましたか。

学ぶことがたくさんありましたし、犠牲もトラブルもありました。一番のトラブルは警察とのやりとりでした。

CBDについて何も知らない警察が突然店にやってきて、我々をドラッグディーラーだと思い、すべてのものを没収していきました。我々に損失を被らせることが目的のように、関係のないステッカーでさえ没収していきました。

とても恐ろしい事だと思います。没収された損失額もありましたし、弁護士にも多くの費用を費やさねばなりませんでした。それに伴うストレスもありました。その対応はフェアではないですよね。警察はサンプルを押収して確認することだってできたはずですから。

──ただ、このカフェは交番の目と鼻の先にあるのが印象的です。

確かにそうですね。年々CBDに対する理解は深まっているようで、今では駅前の警察官もお客さんとしてCBDの製品を買いに来てくれます。

CBDというものがまだ未知のものだったときに没収されたので「必要な犠牲」だったのかもしれません。5年後10年後にはもう少し環境が整ってくると思います。

 

コロナ禍にオープンしたカフェ 地元客の意外な反応

──今日取材しているこのカフェ付きの店舗は、去年パンデミックの最中にオープンしたんですよね? カフェをオープンしたことで気づきはありましたか。

カフェをオープンしたのは、フードを適切に提供し、「お客さんの日常にCBDを取り入れる方法」を教えるという目的がありました。

ロックダウン中は店の経営に集中して、フォカッチャのような自家製のペイストリー(パンやケーキなどの菓子類)を販売し始めました。

結果として、日々の生活のアドバイスを求めて店に訪れ、いろんな人に様々なことを聞かれるなかで、たくさんのことを学びました。特に驚きだったのは、私の祖父母の年代の人もたくさん訪れてくれたことです。

──これから実現したいことは?

今はオンラインより実店舗にフォーカスしています。お金をかけて検索エンジンでトップになるよりも先にやることがあるかもしれません。それはCBDにあるイメージを転換させていくことにもつながるからです。

オンラインも充実させ、海外のユーザーにもアプローチしていきたいです。例えば、いまは、EU内のCBDが合法の国でのみマーケットを展開しています。他の国へ進出するには法律なども知らないといけないので、弁護士も必要になります。

マーケットができたばかりなので、需要と可能性に溢れるいわゆるブルーオーシャンで難しさは感じていませんが、市場価値がある程度見え、値段が高くなっていったとしても、経験値の蓄積がある分、結果は自ずとついてくると考えています。

 

冨手公嘉=文 小鉄裕子=写真

記事提供=Forbes JAPAN

# CBD# フォーブス# ベルリン
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