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2021.10.24

ライフ

渋谷「ユーロスペース」支配人が語る映画館の現在地 〜渡辺真史さんが聞く〜

周囲とは違う空気を放つモダンな外観。渋谷の雑多な通りを抜け、ミニシアター「ユーロスペース」支配人の北條誠人さんを訪ねた。
訪ねたのは渡辺真史さん●1971年、東京都生まれ。ベドウィン & ザ ハートブレイカーズのディレクター。ローカルとインターナショナル、2つの視点で東京をクルージング。
渡辺 桜丘町にあった時代から通っていたので、懐かしい場所でもあります。
北條 ありがとうございます。
渡辺 その頃のミニシアターって今以上に稀少な存在でした。僕が観たいマニアックなドキュメンタリー系の作品が頻繁に上映されていて、すごく思い出に残っているし、勉強になりました。
北條 今でもここはサブカルやアングラに強い映画館だと思います。
渡辺 5年ほど前、あるサーファーのドキュメンタリー映画を観にお邪魔したことがありました。決して隣の客としゃべりはしないんだけど、どこか劇場内に一体感があって。
北條 広義で親密な体験ができるのもミニシアターの醍醐味です。
渡辺 スマホで手軽に映画が観られるけれど、映画館にしかない感動や匂いみたいなものってありますよね。
北條 そうですね。僕の場合、家で観た映画ってほとんど覚えていないんですよね。でも、配信されているものでスクリーンで観れば感動が倍なのに、と思う作品は映画館で上映してみたり。
渡辺 迫力がまるで違いますよね。
北條 そういった名作、旬な作品、新しい作品、新人も巨匠も等しくステージに立てるのが面白いところです。
渡辺 確かに。ミニシアターならでは。
ミニシアター「ユーロスペース」
北條 今では、映画を観に行くっていう行為自体が面倒かもしれないけど、それが思い出にリンクする。例えば好きな女の子と待ち合わせして、電車に乗って、どのシートに座って……。逆に言えば、内容がハズレだったとしても、そこまで悔しくなかったり(笑)。
渡辺 このご時世だと、観に行くことが余計にスペシャルに感じますよね。正直、コロナの影響はどうですか?
北條 とにかく「みんな生き残れ」というテーマで動いていますね。感染者を出さないよう予防は徹底しています。
渡辺 どうしても空間の密度が高い映画館は難しい問題です。ところで、北條さんはどんな映画が好みですか?
北條 やはり力のある映画。鬼気迫る絵柄や俳優の表情、あとは訳がわからないけど、なんかパワーを感じるもの。そういう作品をチョイスします。
渡辺 作り手のパッション。その重要性は、服も同じかもしれません。
北條 特にミニシアターの場合、働くスタッフも“好きが杖をついて歩いている”ような人間ばかりですから。
渡辺 そういう方がいる業界って、やはり健全だなと感じます。
——静かな平日のロビー。そこに集う人々の目には、確かな力があった。
「ユーロスペース」
住所:東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 3F
電話番号:03-3461-0211
※営業は上映時間により異なる

若木信吾=写真 増山直樹=文


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