OCEANS × FLUX Vol.3
2021.03.07
LIFE STYLE

予算は20ドル。ハワイ最大の蚤の市、スワップミートで出会う掘り出し物

当記事は「FLUX」の提供記事です。元記事はこちら

オアフ島・アロハスタジアムで開催されるハワイ最大級のフリーマーケット「スワップミート」。部屋で眠っていたユーズド品、ガラクタ、お菓子……売ってるものは何でもあり。

子供の頃からスワップミートに通う地元ライターは夫を連れ、20ドルだけ握りしめて掘り出し物を探す。

私の目の前には、キッチュなものがてんこもりだ。サーフボードの形をしたキーホルダー、レインボーカラーがおしゃれなウサギのぬいぐるみ、着るだけでココナッツブラ姿になれるTシャツなど。あたりを見回すと、がらくたが驚きの低価格で売られているが、私にも、私の大切な人にも無用な品だ。

しかし、ここは買いだめ天国で、私は物を溜め込むのが好きな母の娘、ということになる。「私たちへのプレゼントは全部、ここで選ばなくちゃ!」 。私は興奮しすぎて少し苦しくなりながらも、目を爛々と光らせ、声高にそう言う。

夫は、用心深く目の前の光景を観察する。「その……大切な人にあげるもの、を?」。夫は、賛成しがたいというふうにあえてそうたずねると、貝殻で作られた小さな亀の彫像をじっくり見ようと背を屈めた。どの置物も、古ぼけて黄ばんだ敷物の上に並べられ、散らかり放題のまっ暗な家の中で埃を被ってていた。祖母が戸棚の中を置物でいっぱいにして飾り立てていた光景に瓜ふたつである。

私の将来の姿が、あるいは過去の姿がちらっと見えただろうか? これまでに、ここに来たことがあっただろうか?

アロハスタジアムのスワップミートは、毎週水、土、日曜日に、オアフ島アイエアにあるスタジアムの駐車場で開催されている。

答えは「イエス」。というのも、収集癖のある母や祖母がたどった道を、自分も進む運命にあるのかという実際の疑問はさておき、私たち夫婦は今まさしくアロハスタジアムのスワップミートに来ているのだ。

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母から受け継いだDNA

ここは、1979年に始まったごたごたと混み合ったマーケットで、私たちの母もこれまで不要品を売ってきた。都心から離れた田舎や郊外の子供たちと同じく、私も炎天下の中、日差しを受けながら何度となくここで週末を過ごした。

間違いなく誰かの車庫から引っ張り出してきた中古のサーフボードのブースや、ドライフルーツにしたパイナップル、スイカのグミ、自家製のリヒムイ(※訳注:干し梅に塩と砂糖とカンゾウをまぶした甘塩っぱい駄菓子)で山積みになった屋台を素通りし、母のあとについていった。ロゴ刺繍のワッペンを手にした、戦争中の懐古主義にどっぷり浸かった売り主の間を縫うように進み、格安の流行り物に釘付けになっているおばさまたちの間をかき分けていった。

カーニバルを思わせる売り主の大きな声(「かわいいウサギのぬいぐるみだ! これ以上かわいいのがあったら、お金、返すよ!」)が響き渡り、在庫の品が積み上げられていた。さらに、投げ出された家財道具を適当に寄せ集めたブースや、前日の夜に、誰かのヤードセールの品を急遽まとめたお店もあった。中世の村にふさわしいマーケットだった。

母はどうだったかというと、いつでも曖昧な定義である「完璧な」掘り出し物を狙っていた。本当に特価品を狙っている人なら誰もが内心でわかっているように、完璧な掘り出し物というものは基本的に存在しない。

悟りを開くための数々の宗教ロードマップのように、それは目的を達成するための手段であり、探求心に終生の誓いをたてるということだ。完璧な掘り出し物など絶対に存在しないだろう。この先、母がスワップミートに行くのを絶対にやめないのと同じように。そういうものだ。

でも、今日は例外。 完璧な掘り出し物が見つかるはず。

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上限20ドルというチャレンジ

20ドル以下で見つけることが今日の課題だ。状況的にはかなり不利。300ドルの本物の舷窓(※訳注:船の舷に取り付けられた、丸くて小さな窓)か、ロングボードのコレクションにするか、迷うことなどできまい。

モザイク模様の大理石のように見える75ドルの地球儀もダメ(「少なくとも、今回の挑戦ではダメってことよ」と釘を差しておく。「今回の挑戦以外だったらいいわよ」と。残念だけどATMを探してね、と夫に伝えた)。

結婚生活が試されようとしている、ということでもある。クローゼット用の巨大なS字フック(これ以上につまらないものって、ありませんよね)や、「10分も経てば、熱中症になっちゃう、と泣き言を言い出したとき」のために木製扇風機を買うメリットを夫が延々と説明する傍らで、私は、貝殻でできたフグの吊り飾りや、スポーツ用の小さな麦わら帽子、ヴィンテージもののハットピンのコレクションをめぐって、うーん、うーんと悩んでいる。(「帽子なんて、ひとつも持っていないくせに」と夫は力なく抗議する。なぜここへ、夫を連れてきてしまったのか。)

アロハスタジアムのスワップミートでは、キッチュながらくたや自家製のリヒムイなどなど、いろんなものがずらり。

実用主義者はスワップミートに関して誤解している。彼らは、ここに必要とするものがあると思い違いをしているのだ。砂漠のように蒸し暑い駐車場に繰り出し、生活必需品の買い物リストを片手に、ごちゃごちゃしたテントの中を探し回るわけがない。これは、目的が何なのか、という問題だ。

スワップミートには可能性がある。つまり、完璧な取引や珍しい宝石、過去への追憶にかける可能性だ。私は20年前、コンクリートでできたこの神聖な通路を歩き、熟した冷たいプラムを食べながら、靴の山を掘り返し、ようやく、1997年に流行した刺繍入りの厚底サンダルを見つけた。

屋台をいくつも探し回り、私の人形「ケン」にぴったりの赤いアロハプリントのシャツを見つけた! エアブラシで虹を描いた、カスタムメイドのTシャツも手に入れた。そのTシャツは、くたくたになるまで着倒した。

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思い出や想像力で広がるモノの豊かさ

スワップミートで売られているものは、必需品ではない。物語の一部分や分かち合える空想を生み出し、平凡の中で非日常と想像を味わう可能性を売っているのだ。

「ナタリー、いらないよ。ただのトランプじゃないか」 。(5ドル)

あなた、これがただのトランプですって? それなら、トランプにプリントされた、年代物のパンナム航空機やRCAのカセットデッキを見ていたら、1960年代の夢のような記憶が蘇ってこない? むしろ、もっと個人的なことで言えば、ただのトランプから、年季の入ったジョーカーを集めていた今は亡き私の親友を思いだせるのよ? いつか、彼に再会したら、ここからジョーカーを引き抜いてプレゼントしよう。

それ、ただの古ぼけた軍人の墓碑だよ。(10ドル)

スワップミートは、ありふれた日常が空想の世界になりえる場所。

ただの墓碑? つまり、暴力的な物語が生み出した、不気味な遺物、ということ? 小さな年表からは、歴史の発展が読み取れる。私たちはどのような成長過程をたどり、どの道を選ばなかっただろうか? どのような学びを選び、どの学びを切り捨てたのか? 半世紀前に誕生したクラシックロックは、そこに耳を傾ければ聞こえてくるだろうか? あるいは、想像すれば聞こえてくるだろうか?

「マウンテンアップルの木だね。いいと思う」 。(3ドル)

これは、私たちの未来の果樹園ね。将来、育った実を家族で食べる。木は日陰を作ってくれる。そして、食べ物を育てること、夏の果物の季節が授けてくれる魔法、庭の水やりの大切さを子供たちに教えてくれる。

「ナタリー、本気かい? ただのまぬけなフグの置物じゃないか」 。(2ドル)

そうね。だけど、この小ぶりでかわいらしい麦わら帽子を却下するなんて、無理よ。

 

ジョン・フック=写真 ナタリー・シャック=文 翻訳=神原里枝

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# スワップミート# ハワイ# フラックス# フリマ
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