三代目 J SOUL BROTHERS・岩田剛典さん「悔しい思いをするほど成長できる」
パフォーマーであり役者でもある三代目 J SOUL BROTHERS・岩田剛典さん。
涼しげな表情とは裏腹に芝居に対する気持ちは熱く、貪欲、そして泥くさい。後編ではそんな演じることへの熱い思いを語ってもらった。
前編はこちらから
主演映画で自身が演じたキダとの共通点は冷静な判断力と強い情熱
「比較的周囲の意見を聞くタイプだとは思いますが、お芝居だけは自分の感覚しか信じません。自己評価が悪かったときは、次の現場へのモチベーションがすごいですね。『次を見てろよ』みたいな(笑)。そういう気持ちは昔からありますし、今後もなくなることはないと思います。
どんなに周囲が評価をしてくれても、自分の中でダメだったらそれはもうダメ。僕はネガティブな気持ちからモチベーションを引き出すタイプなので、悔しい思いをするほど成長できているように感じています」。

芝居への熱量はわかった。だが、こうして自分自身のことを俯瞰で見られることも、役者としての才能である。どこか他人事のように、冷静に自己分析をする岩田。
「もともと“気にしい”なんです。自分の意見を譲らないところもありますが……(苦笑)。今の自分は役者であると同時に、三代目 J SOUL BROTHERSの一員でもある。
そういった意味ではいろいろな人の人生を背負って活動をしている部分もあるので、モノ作りに対して、いいモノだけを追求して作り上げるという思いもありつつ、ビジネスの面も考えなくてはいけない。クリエイションとビジネス、このふたつがあるから俯瞰で物事を見る癖がついているのかなと。
とはいえ、昔からそういう気質かも。用心深いといいますか、臆病なんだと思います(笑)」。
ここまで自分を客観視できるとなると、衝動的に行動することはあまりないのかと疑問をぶつけると「そりゃありますよ、人間ですから」と、笑いながら答える。
「先日急に休みができたので、友人と一緒に温泉に行きました。急だったのでほぼ無計画でしたが、逆にそれが良かったのかすごく楽しかったです。
温泉も本当に久しぶりで、かなりリフレッシュできました。木々の匂いなど、自然の空気に触れたおかげで心身ともに癒やされました」。
主演映画『名も無き世界のエンドロール』で、岩田が演じたキダも、物事を冷静に俯瞰してみる男。そういった部分は岩田と重なる。そしてもうひとつ共通するのが人に対する接し方。冷静である一方、ハートは熱い。
「自分にとって大事な人のためなら、とことん尽力します。また感性は人それぞれだと思うので、初対面の人や気になる人と接する際は、直接会って話すようにしています。
たとえ自分が接してみて嫌だなって思うことがあっても、それはその人の性格の問題ではなく、意外と自分に足りない部分を刺激されて、自分が勝手に嫌な気持ちになっていただけだったりしますから。
きっと年齢を重ねていくとどんどん守りに入っていきそうな予感がするので、人との接し方に限らず、何事も積極的に経験をしていきたいです」。
現在31歳。まだまだこれからという気もするが「10年なんてあっという間に過ぎると思っています」と、若いのにどこか達観している。
では自身が描く10年後とは? 三代目 J SOUL BROTHERSの一員として活動を始めて10年。世界レベルのエンタテインメントを創ってきた男は、周囲の評価がこれほど高いにもかかわらず満足しない。冷静だった口調が少しだけ熱を帯びる。
「川上から川下までじゃないですが、できることならすべてを自分でコントロールしたいと思っているんです。ファッションやアートなど、分野は何でも。
いろいろなビジネスをプロデュースする人間になりたいです。さすがにひとりでやるのは無理なので、同志として賛同してくれるようなチームや環境づくりをして、10年後を迎えられたらと。
そうすれば、その先10年がまた開けるかなと思います。まさにEXILE HIROさんですね」。
そう語り、水で喉を潤すと「ありがとうございました」と、律儀に礼を述べてから席を立ち、別部屋へと入っていった。雅やかで涼しげな雰囲気は先ほどと同じだが、胸中を知った今は、その背中が遠くからでも少し大きく見えた。
岩田剛典の物語はまだ始まったばかり。エンドロールが流れる様子はもちろんゼロだ。
岩田剛典●1989年生まれ、愛知県名古屋市出身。2014年に開催された「EXILE PERFORMER BATTLE AUDITION」で合格しEXILEに加入。現在はEXILE、三代目 J SOUL BROTHERSのパフォーマー活動を中心に、役者業、CM出演等、各方面で活躍中。1月29日(金)から主演映画『名も無き世界のエンドロール』が公開中。
江森康之=写真 桶谷梨乃(W)=スタイリング 下川真矢(BERYL)=ヘアメイク オオサワ系=文