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2021.02.03

ライフ

スガキヤ好きなら誰もが知ってる“ラーメンフォーク”はMoMAも認める一級品

「藤井隆行の視点。私的傑作批評」とは……
スガキヤは、愛知県発祥で東海・関西地方を中心に展開しているラーメンチェーン店です。
僕の地元の奈良では、ジャスコ(今はイオン)のフードコートに入っていて、小学校1〜2年くらいまで、母と買い物に行った帰りにスガキヤに連れて行ってもらい、ラーメンとソフトクリームを食べるのが楽しみでした。
味は魚介ベースのとんこつスープといたってシンプルなのですが、思い出に残っているのが子供用に提供されるラーメンフォーク。フォークの歯に麺を巻きつけ、スプーンの凹みでスープをすくって飲むのですが、当時は特に意識もせず使っていました。
MoMAも認めた懐かしのラーメンフォーク
それから時を経て、最近たまたま寄った表参道のMoMA デザインストアでこのラーメンフォークを見つけ、「何でここにあるんだろう?」とびっくり。
「そうか、外国人は箸が苦手だから誰かがラーメン用に作ったんだな」と勝手に納得しながら商品紹介を見たら「SUGAKIYA」と書いてあって、さらにびっくり。いったいいつのまにグッドデザインの仲間入りを!?
そこで調べてみたところ、割り箸の大量消費による森林破壊を憂慮したスガキヤが、1978年にノリタケと共同開発して製作。僕の記憶ではフォークの3本の歯は右側に寄っていたけれど、2007年にリニューアルして中央に4本配置され、使い勝手も大幅に向上してグッドデザインとして世界に羽ばたいたようです。
懐かしさのあまり2本買って帰り、我が家では取り分け用のツールとして活躍しています。
5×20cm 1800円/MoMA(モマ デザインストア オンラインストア 0120-977-459)
MoMAの「スガキヤ ラーメンフォーク」
フォークとレンゲが一体化したラーメンフォークは、ステンレス製で適度な重さが心地良く、ラーメンだけでなくさまざまな麺類や料理全般にも便利。計算された機能美はMoMA(NY近代美術館)のお墨付き。
思えば、子供の頃に使っていたのが普通のフォークだったら記憶には残っていないわけで、“へんなフォーク”だったからこそインパクトがあった。そこに機能性が加われば、デザインとしての価値が高まるわけです。
奇抜すぎずありふれてもいない、まさに「ありそうでない」のがグッドデザインの条件。スガキヤを知らない人が見ても、ちょっと使ってみたいなと思わせる力があります。
時の荒波を乗り越えてずっと存在し続けるデザインって、理屈よりも直感に響いているんじゃないかと思います。 いいモノって説明がいらないんです。
[藤井隆行 プロフィール]
東京を代表するブランド「ノンネイティブ」のデザイナーで、ファッションからライフスタイルまで一貫したこだわりを持つ。年末年始は人生で初めて、自宅を構える葉山で過ごす。その際、焚き火にハマり、焚き火台を買い換えようか現在考え中。
「藤井隆行の視点。私的傑作批評」とは……
世の中のありとあらゆるプロダクツから、「ノンネイティブ」藤井隆行さんが独自のセンスと審美眼でモノをセレクト。デザインとは? 実用性とは? 買い物の醍醐味とは? ブランド名や巷の情報に惑わされず、本当に自分に必要なモノと出会う方法を指南。
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竹内一将(STUH)=写真 町田あゆみ=文


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