ニューノーマルな時代の「大人カジュアル」ガイドブック Vol.33
2020.10.23
LIFE STYLE

食が人の輪をつなぐ。シェフ・米田肇が考える料理とその存在意義

春先、日本を代表する三つ星シェフが、コロナ禍における飲食業界の危機を政府に訴えた。

話題のシェフが考える料理とは。そして、その存在意義とは。

 

「料理とは、あらゆる事象を表現できる伝達手段」

 上の写真の料理名は「地球」。鮮やかで均整の取れた美しい一皿だ。作ったのは、宇宙や自然の均衡と調和を表現した世界観が国内のみならず海外からも評価されている、大阪市西区のレストラン「HAJIME」の米田肇シェフ。

彼の料理は見た目のバランスだけではなく、口の平均的な大きさや人体の塩分濃度などから導き出したサイズや分量など、緻密な計算に基づいて生み出される。

大阪市西区のレストラン「HAJIME」の米田肇シェフ。
米田 肇●1972年、大阪府生まれ。大学では電子工学を学び、卒業後、一度はエンジニアとして就職。その2年後には料理人へ転身しフランスで修業。帰国後の2008年に独立開業。翌年には、早くも「ミシュラン・ガイド」の三つ星を取得し、以降10回を数える料理界のトップランナー。

「オープン当初に掲げていたフランス料理は、数年続けるうちにやりきったような感覚が生まれて、自分の料理とは何だろうと立ち止まったんです」。

そこで、独自の美意識やアイデンティティを探求。たどり着いたのが、地元・大阪の自然だ。

「春に芽吹き、夏に青葉が繁り、秋には紅葉、冬になると動物たちがいなくなり、どこに行ったかな?と大きな石をどかせば虫たちがうごめいている。こうした自然の営みに、調和が取れた世界の美しさを感じたんです。これは自分固有の美意識だ、と」。

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コロナ禍になぜ、立ち上がったのか?

一方で、緻密さも米田さんの料理の真骨頂。大好きな読書が料理に対しての気づきを与えてくれた。

「哲学や宗教、自然科学や経営本など、興味の赴くままに読みあさっていました。自分の料理について考えたときにすべてが結びつきました。どの事象とも類似点だらけだと。そのとき、料理は森羅万象を表現できる、万能な伝達手段だと思えたんです」。

そこで時計と料理について類似点を聞いてみる。

「見えない概念を空間に見せる時計は、細かい部品を組み上げた途端、命が宿る。同様に、完璧に均整が取れた料理は、皿の上に作り上げた瞬間、生命を宿したように輝くんです。どこか似ていませんか?」。

最後に、コロナ禍で飲食業界に大ダメージを与える危機に立ち上がった動機をうかがった。

「もちろん、使命感もありました。何事も伝えることを諦めたくない。署名で全国の人々へ、知人を伝って政府へと、あらゆる方向から働きかけました」。

米田さんの周りに多くの人が集った結果、活動が実り、補助の方向へと舵が切られた。それも料理が結びつけた人と人の輪。「ゆくゆくは、宇宙で料理を作りたい」と料理の可能性を追いかける米田さんの、未来への思いに終わりは見えない。

 

久間昌史=写真(料理) 松本あかね=写真(人物) 髙村将司=文

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