OCEANS × Forbes JAPAN Vol.7
2020.05.09
LIFE STYLE

実践者たちが語った「テレワークの本音」。意外と盲点な課題はどこに潜んでいる? 

当記事は、「Forbes JAPAN」の提供記事です。元記事はこちらから。

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緊急事態宣言は7都道府県から全国に拡大した。政府はすべての事業者に対し、テレワークを原則とし、やむをえない場合でも出勤者を最低7割減らす取り組みを求めるなど、新型コロナウイルスとの戦いは新たなフェーズに入ったといえる。

しかし、テレワークの実施状況は企業規模や業種により差があるのが現状。東京商工会議所が4月8日に発表した「新型コロナウイルス感染症への対応に関するアンケート」調査結果によれば、テレワークを実施している企業は26.0%、実施検討中は19.5%という。

回答企業属性は従業員50人未満の企業が51.1%と、中小企業寄りの数字とはいえ、まだまだ低いと言わざるを得ない。

テレワーク導入済の企業にしても、余裕をもって緊急事態宣言を迎えたかといえばそうではない。会社員の知人に話を聞くと、こんなところに課題があったのか、という発見があった。それはテレワークの前段階、「道具と手段」だ。いきなりテレワークといわれても、機材や通信環境が揃ったオフィスとはわけが違う。戸惑いがあって当然だ。

そこで、テレワークの実施状況、利用しているツールの種類(パソコンなど)や通信回線、映像/音声会議の実施状況などを40代・50代の20名にSNSで取材した。アンケートツールは使わず属人ベースで取材した都合上、いわゆる大企業勤務者が多いことを付しておく。

テレワークを実施してみて……

20名のうち、職場にテレワーク導入済と答えたのは18名、うち12名が4月13日現在テレワーク中という。導入済だが適用外の6名に含まれる保険会社勤務のHさん(50代・男性)は、「部署と自分の職種がテレワークに適さないから」と答えた。団体職員のMさん(40代・女性)も、「持ち出し不可の個人情報を扱う部署のため難しい」という。

目下テレワーク中というIT企業に勤務のKさん(50代・男性)は、「2月16日の週から40%くらい、3月以降は80%くらい」の割合で実行しているのだそう。道具は「会社支給のノートPCと自前のスマートフォン」、テレビ会議はないものの、音声会議は実施されているとのこと。以前からテレワーク導入に賛成だったこともあり、今回の事態は冷静に受け止めているという。

4月第1週からほぼ完全にテレワークという銀行系シンクタンク勤務のJさん(50代・男性)は、「自前のノートPCを使用している」という。その理由を訊ねると、「会社支給のPCや携帯電話を持ち出す手続きが面倒。万一紛失すると警察へ届け出なければならない」ため、やむを得ずだそう。テレビ会議/音声会議については「事業拠点間以外は使用しない」とのことで、従業員間の連絡は基本的にメールなどテキスト/ファイルベースだという。

外資系IT企業に勤務のGさん(40代・男性)も、4月第1週からテレワーク入り。道具は会社支給のノートPCだが、「作業しやすいよう個人的に外付けディスプレイを導入した」そうだ。テレビ会議は利用せず音声会議のみだが、画面共有(参加者がPC画面を相互に閲覧できる機能)はよく使う、とむしろテレワーク慣れしているよう。

大学教員のMさん(50代・男性)は、授業と会議以外は年中テレワークのようなものと前置きしつつ、「会議やゼミはあっさりオンライン化したものの、現在は授業のオンライン化で頭が痛い」と、職種ならではの苦悩を明かしてくれた。

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作業の多くは文字/ファイルベース

この4名が共通して口にしたことが、「通信設備・通信料金の自己負担」。自宅に光ファイバーなどの固定回線を引いているか、(スマートフォンを使う場合の)携帯電話会社との契約プランは定額制かといった確認が行われたことはなく、いわばなし崩し的にテレワークに利用されたという。PCなどのハードウェアと使用するアプリ/サービスの確認はもちろんのこと、その運用に欠かせない通信環境の確認と支援も必要なのではないか。

テレビ会議/音声会議の利用率は、メディアで紹介されるほどではないようだ。企業内弁護士のCさん(50代・男性)によれば、「コミュニケーションは音声と画面共有がメイン。テレビ会議にすると、参加者の環境次第では音だけになるため使われなくなった」とのことで、映像伝送が安定しないトラブルの多さが伺えた。

テレワーク実行中の12名のうちビデオ会議をよく行うと答えたのは、広告会社に勤務するUさん(50代・男性)のわずか1名。他の11名は音声会議を利用してはいるものの、作業の多くは文字/ファイルベースで、過半の6名が画面共有をよく使うと答えたことが印象に残った。

テレワークで浮き彫りになった住宅事情・家族事情の課題

よく使われているという音声会議は、聞く・聞かせる双方への配慮が見られた。通信会社勤務のAさん(40代・男性)からは、「ノートPC内蔵のスピーカーではなく、スマートフォンに付属のイヤホンを使っている」と、家族への配慮が伺えた。

IT系企業勤務のFさん(50代・男性)からは、「他の人のPCから子どもの泣き声が聞こえることも。環境次第ではインカム(コールセンターなどで利用されるマイク付きヘッドホン)を使うほうがいい」という意見も。「画面共有などの通常作業はPCだが、音声会議はスマートフォン。社内ネットワークの負荷軽減にもなる」(携帯電話会社勤務のNさん、50代・男性)と、職場のノウハウが生かされる例もある。

テレワークには住宅事情・家族事情も反映されるようだ。団体職員のJさん(40代・女性)からは、「1LDKなので会議の内容が筒抜け」と都心住まいのDINKSらしい悩みが。通信会社勤務のNさん(50代・男性)は、「部屋のドアに『会議中』という貼り紙をしている」というオーソドックスな対応だが、前出の企業内弁護士Cさんは、「ヘッドホンを装着していると『いまは静かにして』という子どもへのアピールになる」と、敢えて音声会議中以外にもヘッドホンを着けるのだそう。

PCを家に持ち込み画面の向こうに見える同僚と仕事を進める、というイメージが先行している「テレワーク」。実際には、同僚の通信環境に難があると安定したビデオ会議は難しく、自分の周囲にも家族がいて生活音がある。オフィス並みの仕事環境に近づくためには、PCやスマートフォンといった”道具”だけでなく、高速なネットワークと静かな環境という”手段”の充実も必要なようだ。

 

海上 忍=文

記事提供:Forbes JAPAN

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