20代から好かれる上司・嫌われる上司 Vol.13
2020.03.06
LIFE STYLE

「失敗しても責任は私がとる」という上司は20代から避けられる

責任をとる上司

「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは・・・

理想の上司は、昔「星野仙一」、今「内村光良」

明治安田生命保険が毎年全国の新入社員となる人を対象にしたアンケート調査「理想の上司」ランキングというものがあります。

男性部門だと、最近では4年連続でタレントの内村光良さん(ウッチャン)が1位でした。「親しみやすい」「優しい」イメージが選出理由の70.5%を占めています。女性1位の水卜アナウンサーも同じ理由が61.1%でした。

約20年前の2000年代だと、闘将と呼ばれた故星野仙一監督がトップになったりしていたわけですが、若手が求める人物像がかなり変わってきたのはこんなことからもわかります。

 

「厳しさ」と「面倒見の良さ」が共存していた星野監督

私は元々愛知生まれで、その後関西で育ったこともあり、中日→阪神と監督をされた星野さんはずっとファンでした。そのイメージは、鉄拳制裁も辞さない厳しさと、その裏側にある「最後の責任は俺が取る」という包み込むような面倒見の良さでした。

楽天の監督時代、日本一の後、メジャーに挑戦したいマー君(田中将大投手)を、戦力減が確実にも関わらず全面的に支援したのは記憶に新しいところです。自分の指導についてきたメンバーの人生すべてにコミットする。誰もがその姿に惚れ込んだものでした。


今の時代、他人の人生にどこまでコミットできるのか

私はこの星野監督の人間像、上司像は今でも十分通用すると思います。

しかし、それは「本当に厳しさと面倒見の良さが両立するなら」です。星野監督の社会的影響力や人脈、財力があれば、確かに部下の一生の面倒を見る、という言葉も現実的かもしれません。

また、四半世紀前なら、組織で働く会社員の上司でも、「ちゃんと会社の方針に従っていたら、悪いようには絶対にしない」と確信を持って言えたかもしれません。しかし、皆さんもご存知の通り、当時の「約束」は後の日本の「失われた数十年」の中で反故となってしまいました。そんな今、「お前の人生の面倒は見るから」と言える人はどれだけいるでしょうか。

「自由と自己責任」からは、もう後戻りできない

この数十年で「指示に従えば、責任は取る、面倒は見る」の代わりに流布した言葉が「自由と自己責任」です。

「自由にして良いから、自分で責任を取りなさい」ということですが、本当は「もうあなたの面倒は見られない、責任は取れないから、その代わりに自由にしていいですよ」というのが本音でしょう。

今では、雇用形態から人事制度、異動の仕組みまで、あらゆるところで「自由と自己責任」が広がり、日本の企業社会の常識となっています。そんな時代に「失敗しても責任を取る」という言葉がどこまで信用されるでしょうか。

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「責任を取る」という言葉の意味を明確に

若手は、もし上司が「失敗しても責任を取る」と言った場合、まず「責任って何?」と思うことでしょう。失敗しても自分の評価に影響がないということでしょうか。

それならまだ好感を持たれ、納得すると思いますが、もし「上司が非を認める」とか「謝罪する」というような意味であるのならば、「そんなことしてもらっても別に意味はない」と思うでしょう。

ですから、上司は「責任を取る」と言うなら、意味を明確に定義しなければ、その言葉は若手社員の耳には空疎に響くだけでしょう。

格好悪くても「自分で選ばせること」が誠実では

私は、今の時代、究極的には上司であっても責任など取れないことが多いでしょうから、相当な覚悟があるのでなければ、軽々しく「責任を取る」などと言わないほうが良いように思えます。

つい、星野監督みたいに器の大きな人間になりたいあまりに、自分の責任担保能力の範囲を超えて「責任を取る」と言ってしまいがちですが(私もそうです)、それは悪く言えば「騙し」になりかねません。

そうであれば、若手から格好悪く見えたとしても、「最後は君が責任を取るのだから、自分で選んだらいいよ」と言うほうが誠実ではないでしょうか。

責任など取らなくていいから、ちゃんと指示してほしい

実際、冒頭の調査で新入社員が上司に期待することの1位は「的確な指示をしてくれること」でした(44.4%が支持)。「責任を取る」に近い「面倒見の良さ」は、低いわけではありませんが5位でした(25.0%が支持)。

この調査結果を踏まえて想像するに、若手が上司に思っているのは、「責任を取るとか取らないとかよりも、ちゃんと的確に指示をしてくれる方がうれしい」ということではないでしょうか。

責任を取るから言うことを聞け、ではなく、自分で責任を持って選択をするから、納得がいくまで細やかに丁寧に説明をしてほしいのです。これからの時代、上司は度量さえあればいいというわけではなく、部下が自分自身で行動を選べるようにサポートをするタイプのほうが喜ばれるのかもしれません。

曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。

 
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「20代から好かれる上司・嫌われる上司」
組織と人事の専門家である曽和利光さんが、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「職場の20代がわからない」の続編となる今回は、20代の等身大の意識を重視しつつ、職場で求められる成果を出させるために何が大切か、「好かれる上司=成果がでる上司」のマネジメントの極意をお伝えいたします。上に戻る

石井あかね=イラスト

# 20代から好かれる上司・嫌われる上司# マネジメント# 責任
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