FUN! the TOKYO 2020 Vol.43
2020.02.19
LIFE STYLE

まもなく採火! 意外と知らない「オリンピック聖火」の長い歴史

当記事は、「東洋経済ONLINE」の提供記事です。元記事はこちらから。

2016年リオ五輪のプレビュー採火式の様子
2016年リオ五輪のプレビュー採火式の様子(写真:AP/アフロ)

2020年東京オリンピック・パラリンピック、気づけばもう7月24日のオリンピック開幕まで半年を切っている。

現在は、新型コロナウイルスによる肺炎の猛威で日本も世界も、オリンピックの話題どころではないという感を否めないが、3月に入れば「いよいよ」というムードになるのかもしれない。

3月12日、東京オリンピックの聖火が採火される。

採火式の模様など、これから目にする、耳にすることが多いと思う。聖火が「生まれる」のは、オリンピック発祥の地、ギリシャの中でも、古代オリンピックが行われていた世界遺産オリンピア(Olympia)。その遺跡の中で、採火式が行われるのが「ヘラ神殿」という。2019年6月に、行ってきた。どんなところなのか、今後のニュースなどを見る際に参考になれば幸いだ。

オリンピアの街は、ギリシャの首都アテネの北西、アテネから車で直行すれば約5時間で着くだろう。ペロポネソス半島にある小さな田舎町といっていい。

古代オリンピックの起源とは

オリンピアの遺跡は、街からは車で10分ほどで着く。ここが、2800年ほど前から行われた古代オリンピックの舞台になった場所だ。

オリンピア・スタジアムの跡地(筆者撮影)
オリンピア・スタジアムの跡地(筆者撮影)

入ると、練習場、闘技場、選手村、スタジアムなど競技関連施設や神殿などの遺跡が点在しているが、ほとんどが崩れている。

古代ローマ帝国による破壊、地震などの天災によって原形をとどめている建物はほとんどないが、世界で初めての「オリンピック・タウン」が確かにここにあった。

聖火の採火式が行われる神殿は、この遺跡の中で最も古いとされているヘラ神殿。ヘラというのはギリシャ神話の最高神ゼウスの妻の名前で、オリンピア遺跡ではそのほか、ヘラクレス、ニケ、アポロンといった聞いたことがあるようなギリシャ神話の神々の名前が建物や彫刻につけられている。

オリンピアのヘラ神殿(筆者撮影)

古代オリンピックの起源は諸説あるが、ヘラクレスらが登場する神話ではなく現実的で有力なのは、紀元前8世紀に疫病の蔓延に困ったこの地方の王イフィトスが、アポロンの神託を受けて、当時ギリシャに多くあった都市国家(ポリス)間の争いをやめて、農閑期の8月に競技会を始めたのが起源という。

競技は紀元前776年に始まり、394年にローマ皇帝によって廃止されるまで、4年に1度、1200年ほど続いた。今の陸上競技のほか、レスリングや戦車競技など戦争に関連する競技も多かった。

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オリンピア遺跡見学の順路で行くと、ヘラ神殿は最後のほうになる。逆にたどればすぐ着くので、ヘラ神殿だけ行きたい人は順路を逆走すればいい。

オリンピア・ヘラ神殿とヘラの祭壇(手前)(筆者撮影)

順路どおりに行ったので、ここでは途中を省略して、ヘラ神殿に行く。

オリンピア遺跡の詳細についてはこの記事『行ってみました世界遺産!オリンピア(ギリシャ)』でも紹介している。

古代オリンピックでも、聖火は灯されていた。プロメテウスがゼウスから火を盗んで人間に与えたという、学校で習ったことがあるかもしれないギリシャ神話に基づき、ゼウスへの感謝の意味でゼウス神殿やヘラ神殿などに火を灯していたという。

当時のギリシャでは現実と神話がいい意味で交じり合っていたのだろう。

ヘラ神殿は紀元前7世紀に建てられたギリシャでも最古級の神殿で、太い柱が今も立っている。ほかの建物に比べてよく残っているほうだが、それでも神殿の面影はない。

ここが採火式の会場となる。実際の採火式は非公開で女性のみで行われるそうで、巫女の服装をした女優たちによって凹面鏡で太陽光が集められ、トーチに採火する。採火式で太陽からもらった火は、オリンピック閉会式で空に帰っていく。そんなシーンを見たことがある人も多いだろう。

メディアに公開されるのは前日のリハーサルで、そのとき採火した火は、本番で天気が悪くうまく採火できなかったときに聖火として使われるという。

意外と知らない聖火リレーの歴史

これまでのオリンピックで採火式の写真がネット上にもいろいろとあるが、ヘラ神殿に実際に行って見比べてみると、神殿内では行っていないようだ。前回のリオデジャネイロ大会のときの写真を見ると、ヘラ神殿のすぐそばにある「ヘラの祭壇」のあたりで採火されている。太陽の位置との加減なのだろう。

オリンピア・ヘラ神殿の遠景(筆者撮影)

3月12日に採火される聖火は、その時点ではまだ東京オリンピックのものではない。

まずはギリシャ国内で1週間、聖火がリレーされる。3月19日にアテネ市内のパナシナイコスタジアム(第1回アテネ大会会場)で「聖火引継式」が行われ、ここでギリシャから東京に引き渡される。

聖火リレーについて簡単な歴史を知っておいても、これから楽しめるかもしれない。

フランス人のピエール・ド・クーベルタン男爵の提唱によって1896年に第1回近代オリンピックがアテネで開催されたが、オリンピックで初めて聖火が灯ったのは1928年アムステルダム大会。陸上で織田幹雄が三段跳びで優勝し、日本に初めて金メダルをもたらした大会だ。

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1936年ベルリン大会から聖火をオリンピアで採火し、リレーするようになった。このときは陸路でたいまつによってベルリンまで運んだという。

第2次大戦後、最初の大会となった1948年ロンドン大会から聖火リレーは国際オリンピック委員会(IOC)憲章で正式に採用され、リレーもさまざまな方法が編み出される。

オリンピア・ヘラ神殿にある説明板(筆者撮影)

1948年ロンドン大会では初めて船で聖火が運ばれた。1952年ヘルシンキ大会では空輸された。

1976年モントリオール大会ではオリンピアで点火した聖火を電子パルスに変換して人工衛星で中継し、レーザー光線でカナダ・オタワに届ける宇宙リレーが行われた。2000年シドニー大会では水中リレーも行われた。人類の技術の進歩を映し出すのも聖火リレーだ。

ちなみに前回1964年の東京大会では、アジアで初のオリンピック聖火とあって、アテネからイスタンブールに送られた後、アジア各国をリレーして当時アメリカの統治下にあった沖縄に入り、そこから日本全国4コースに分かれてリレーされている。NHKの昨年の大河ドラマ「いだてん」や2017年の連続テレビ小説「ひよっこ」を見た方はピンとくるかもしれない。

リレーの最後、「聖火台への最終点火者はだれか?」というイベントが始まったのは1952年ヘルシンキ大会だ。陸上長距離金メダル9個のパーヴォ・ヌルミは最後まで秘密にされた。その演出がうけて、以後の大会でも最終点火者は秘匿されるとともに、趣向を凝らした点火方法もでてくる。筆者が取材した1992年バルセロナ大会ではアーチェリーで聖火を飛ばして点火させたのにはびっくりした。

日本全国をまわる聖火

東京2020大会組織委員会HPによると、「東京の聖火」は3月20日に宮城県の航空自衛隊松島基地に到着し、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島県に「復興の火」として灯される。

同26日に福島県楢葉町・広野町の「ナショナルトレーニングセンターJヴィレッジ」から全国をリレーされ、7月24日、新国立競技場に入ってくるのはだれか、最後に点火するのはどんな趣向だろうか。

 

赤坂 厚:スポーツライター
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記事提供:東洋経済ONLINE

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