20代から好かれる上司・嫌われる上司 Vol.10
2020.01.23
LIFE STYLE

「先に帰っていいよ、僕がやっておくから」という上司は20代から疎まれる

部下を先に帰らせる上司

「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは・・・

部下の負荷を減らしているのに

この「働き方改革」時代において、部下に仕事をさせすぎる上司は「無能」のレッテルを貼られてしまうリスクがあります。スケジューリングやタスクの割り振りなどのプロジェクトマネジメント能力や、部下の能力をきちんと見立てて適材適所を実現するアサイン能力などが足りないと思われてしまうかもしれません。

そのために、最近の上司たちは、そう思われないように必死です。部下の残業時間を減らすために、自分が部下の仕事を引き取ってやってしまうというケースが増えています。負荷を減らし、サポートしてくれているわけですから、感謝されてもいいようですが、どうも若手部下からの心証はよくないようです。

 

任せるのか、任せないのか

パナソニック創業者の松下幸之助氏は、マネジメントの要諦は「任せて任さず」と言っていたそうです。まず、上司たるもの、部下に仕事を与えるとき、もしも経験や実績がなかったとしても、その長所を見て潜在能力を信頼して大胆に仕事を任せることで、人を育てることが上司の役目である。

加えて、任せっぱなしではダメで、ずっと部下を観察し続けて、危ういときにはすかさず助け舟を出すことが必要。これが「任せて任さず」という意味です。ただ、話はよくわかりますが、実際に行うにはどこまで任せたらいいのか、その「線引き」が難しいところです。

 

「線引き」を誤るとどうなるか

部下の能力やキャパシティを見誤って、過重な仕事を任せすぎてしまうことのリスクはわかりやすいと思います。部下がオーバーヒートしてしまい、仕事が立ち行かなくなるだけです。一方、そういうことを恐れるがあまり、一度任せた仕事を早く引き上げすぎても大変なことになります。

上司としては、かわいい部下に失敗はさせたくないということかもしれませんが、仕事を途中で取り上げられた部下としては、「自分を信じてくれていないのだ」と思うことでしょう。特に最近の若者は周囲からの承認欲求が強い人が多いため、想像以上にダメージを与えてしまうかもしれません。

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誰が仕事のコントロールをするのか

このように、仕事の任せ方、引き取り方の「線引き」はとても難しいものですが、それではどうすればうまい具合にできるのでしょうか。それは、「部下自身にコントロールさせる」ということです。自分のキャパシティをいちばんよくわかっているのは自分です。

上司が推定して任せたり引き上げたりするのではなく、部下が自分自身でアラートを上げたり、もう少し頑張ると宣言したりすることがしやすくすることができれば、それが最も適切なバランスなのではないでしょうか。

しかし、言うは易く行うは難し、です。セルフコントロールは簡単にできるものではありません。どうすればできるようになるでしょうか。

 

セルフコントロールの前提は「自己認知」

まず、セルフコントロールに必要な要素は、部下が自分を理解していること、「自己認知」ができていることです。できていないのにできていると思っていては、適切に自分がこなせる仕事量やレベルがわかりません。長い時間をかければ仕事を通じて試行錯誤をしていくことで、自分の力量はわかるものですが、「働き方改革」時代ではなかなかそういう時間をかけることもできません。

そこで上司の出番です。上司が部下の見立てをきちんとフィードバックしてあげることで、部下が自己認知を高めるサポートをするのです。特に、若い部下であれば、まだまだ成長中でしょうから、弱点をきちんと告げる必要があります。

 

弱点を「うまいこと」伝える力が必要

ただ、日本人は直接的なネガティブフィードバックを世界で最も嫌う民族と言われています。自己認知を高めてセルフコントロールできるよう弱点を告げているのに、嫌われて信頼を失っては元も子もありません。

ここで上司が必要なのは「受け止めやすいよう、うまいこと弱点を悟らせる」力です。

「人格否定ではなく、改善すべき行動を具体的に示す」「あなたはこうなるべきと突き放して言う(Youメッセージ)のでなく、僕はあなたにこうなって欲しい期待を込める(Iメッセージ)」「唐突に断言せず、質問を投げかけて自分で考えさせる」「問題が生じたときに、すぐフィードバックをする」などとさまざまな手法があります。

 

最大の壁は上司自身の「気後れ」

このようなスキルはもちろん役に立つのですが、スキルさえあれば部下にネガティブフィードバックがうまくできるわけではありません。実は、最後の関門は上司自身がネガティブフィードバックを躊躇する気持ちです。

「部下から反論されないだろうか」「モチベーションを下げてしまわないか」「気まずい関係にならないだろうか」「自分も完璧でないのに」という気後れです。

この壁を超えずに、部下へのフィードバックを避け、挙げ句の果てに部下から仕事を取り上げて自分でやってしまう。それでは結局部下の信頼は得られないのも当然です。まさに「嫌われる勇気」ですが、部下が自律できるようにするためには、上司が勇気を持って部下にネガティブフィードバックができるかどうかにかかっているのです。

曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。

 
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「20代から好かれる上司・嫌われる上司」
組織と人事の専門家である曽和利光さんが、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「職場の20代がわからない」の続編となる今回は、20代の等身大の意識を重視しつつ、職場で求められる成果を出させるために何が大切か、「好かれる上司=成果がでる上司」のマネジメントの極意をお伝えいたします。上に戻る

石井あかね=イラスト

# 20代から好かれる上司・嫌われる上司# マネジメント# 働き方改革
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