5人の目利きの証言。LAから上陸した「OK the store」はなぜ愛されるのか
先ごろ東京・代官山にオープンした「I’M OK(アイムオーケー)」という店をご存知だろうか。カリフォルニア・ハリウッドに本店を構える「OK the store(オーケー ザ ストア)」の海外1号店である。
「OK the store」は雑貨やインテリアを中心に扱う小さな店で、本国にも2店舗しかなく、海外進出は今回が初。知名度こそ高くないが、ポール・スミスやトム・フォード、アメリカの中枢・ホワイトハウスのデコレーターまで、世界中の目利きが足繁く通う「知る人ぞ知る店」としてファンを集めている。一体、人気の秘密はどこにあるのか? 答えを探るべく、来日していたオーナー、ラリー・シェーファーを訪ねた。

ハンチング帽に黒縁メガネ、襟元にスカーフ、そしてジャケットの下にはベスト……いつものラリーさんのスタイルだ。「I’M OK」のオープン前日に開かれたレセプションパーティーには、上機嫌な彼の姿があった。

そこに“セイハロー”しにくるゲストの中には、著名なクリエイターや芸能関係者の姿もチラホラ。彼らはいったい、何に惹かれているのか? 確かな審美眼を持つ5人の“目利き”たちに、ラリーさんの店の魅力を聞いてきた。
証言者① ブライオン・メリットさん(元NIKEグローバル責任者)

「僕は20年前、『OK the store』のオープン初日にたまたま店の前を通りかかってフラッと入ったんだ。ラリーとはそれ以来の友人だよ」。
そう語るのは、わざわざアメリカからお祝いに駆けつけたブライオン・メリットさん。ラリーの親友で、なんと最近までナイキでグローバル戦略責任者を務めていたという、とんでもない“目利き”である。
「ラリーの店は何が特別かって? 彼のセンスは卓越していて素晴らしく、モノでも本でも、どれも欲しくなるんだ。店に行くだけですごくワクワクするんだけど、店を出たときはいつも『また買っちゃった』って頭を抱えているよ(笑)。一歩お店に入ると、自分のためのモノが必ず何かあると思わせてくれる。そんな特別な店が日本にもできたなんて、とってもナイスなことだと思わない?」。
証言者② 野村友里さん

料理人やレストランの経営、本の執筆、果ては映画の監督まで、マルチな活躍を続ける野村友里さんも祝福に訪れた。ラリーさんとは20年前に「OK the store」を訪れて以来の友達だ。
「当時のアメリカは世界的に見ても“大量生産・大量消費の国”というイメージがあったと思いますが、ラリーの店は違いました。『アメリカにもひとつひとつ丁寧にモノ作りをしている作家がいる』と、ラリーは自分の店で示していたんです。『OK the store』は私に、アメリカのいろんな一面を見せてくれました。私自身も“作り手”目線で彼を見ると、やはり作家のことをとても大切にしてくれている人だって感じます」。
ちなみに、野村さんはかつて、「I’M OK」のテナントが入る建物の2階に住んでいたのだという。あまりの偶然にオドロキ。
証言者③ 杉山慎治さん

杉山慎治さんは原宿のライフスタイルショップ、プレイマウンテンで店長兼バイヤーとして手腕を振るったのちに、恵比寿でジュエリーショップ「ソース」をオープンさせた、まさに“目利き”のひとり。
ラリーさんとも定期的に情報交換するなど強い信頼関係でつながる杉山さんによれば、「『OK the store』はライフスタイルショップのはしり」なんだとか。
「カリフォルニアに『OK the store』ができる前は、靴は靴屋で、服が欲しいなら服屋に行くというのが当たり前でした。でも彼は、オープン間もない頃から『僕が選んだものならどんなジャンルでも、お客さんは気に入ってくれる』って言ってたんです。初めは『えっ⁉︎』って思いましたが、事実でしたね。『OK the store』はライフスタイルショップの原点であり、彼はその概念を見つけた人ですよ。同じ人が何度行っても新しい買い物ができる。それは彼にしかない“眼”があるからです」。
証言者④ 岡本敬子さん

パーティーには服飾ディレクターの岡本敬子さんの姿も。岡本さんは、かつて雑誌『リラックス』の編集長などを歴任した夫の岡本仁さんとともにラリー宅に泊まったこともあるほど親交が深い。
「セレクトショップにもいろいろな店がありますが、流行にとらわれることなく、オーナー自身の価値観でちゃんとモノを選んでいるお店は安心できますよね。『OK the store』はそういうショップのパイオニア的なショップです。ラリーが選んだアイテムっていうだけで親近感が湧きますし、ちょっと扱いの難しそうなモノでも手にとってみようかなって思える。ラリーは、私にとってそういう人なんです」。
証言者⑤ 熊谷隆志さん

カリフォルニアとは縁の深い熊谷隆志さんもレセプションパーティーに訪れた。
「カリフォルニアには何度も行ってるから、向こうではもちろんラリーさんのことも『OK the store』の評判も聞いていましたよ。でも、なかなか行けていなくって。今回『I’M OK』のオープンを聞いて、絶対に行こう!と決めてました。めちゃくちゃセンスいいですね。世界からお客さんが集まる理由がわかりました。ラリーさんとも話せて良かったです」。
「僕たちの店」が代官山にある!

アメリカから遠く離れた日本でも愛されてやまないラリーさん。そもそも「OK the store」はどういう思いでスタートさせたのだろう。
「僕は昔、家具業界にいたんだ。それはそれで面白かったんだけど、扱っている家具はどれも高くて、店に遊びにきてくれた友達が何も買わずに帰るというのが日常茶飯事だった。まぁ家具はなかなか買い換えるものでもないしね。だから僕は、お客さんたちに『ここは自分の店だ』と感じてもらえるような店を作りたかったんだ」。

ラリーさんの人柄やセレクトセンス、作家が真心を込めて生み出したプロダクトたち、そして、それらに惹かれてやってくる人たち。「OK the store」は、人と人のつながりが作り出す唯一無二のショップで、誰もがここを「自分の店!」と感じられるからこそ愛されてやまないのである。そのDNAを受け継ぐ「I’M OK」も、これから同じ道を歩むに違いない。

最後に、店名の「OK」に込められた意味を教えてもらおう。
「僕は店のオーナーだけど、お客さんもスタッフも作家も、みんな同じ立場だと思ってる。その人がその人らしく在ることを、お互いが尊重する。それが心理学でいうところの “I’m OK. You’re OK”という考え方だよね。店の名前を『OK』にしたのは、僕がこの考え方をいちばん大切にしてるからさ。それにOKって、世界の誰もが知る言葉の中で2番目に有名だしね(笑)」。
ちなみに、世界一有名な言葉は「コカ・コーラ」っていうのはよく言われるアメリカンジョークだ。さて、近くを訪れた際はぜひ足を運んでみてほしい。若き日のラリーさんが目指した店は、ここにある。「I’M OK」は確かに、僕たちの店なのだ。

[店舗詳細]
アイムオーケー
03-6427-0001
東京都渋谷区猿楽町10-8 1F
http://iam-ok.jp/
清水将之=写真 ぎぎまき=取材・文