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2019.09.19

ライフ

為末 大の東京パラリンピック考「“当たり前”が覆される世界を感じてほしい」

東京パラリンピック開幕まで残り1年を切った。今大会はパラ史上最多となる4400人の選手が参加。オリンピックでは実施されない競技を含む22競技の熱戦が行われる。
8月23〜24日に開催された「新豊洲サマーナイトフェス」では、車いすバスケットボールのデモンストレーションやパラリンピック体験などが大規模に行われ、計2万人が来場し、大盛況。開会セレモニーでは、義足開発ラボラトリーが併設された「新豊洲Brilliaランニングスタジアム」の館長・為末大さんが挨拶を行った。
為末 大
陸上選手として三度のオリンピックに出場し、2012年の現役引退後はスポーツや社会、教育に関する活動を幅広く行う為末さん。元オリンピアンである彼が考えるパラリンピックの意義と見所とは――。
 

2020年、東京の「バリアフリー」が試される

為末大
「僕が東京パラリンピックで注目しているのは、東京の街は本当に『バリアフリー』ですか? ということ。期間中、アスリートはずっと選手村に居ると思われがちですが、実際は毎日のように外出する選手が多いもの。買い物にも、観光にも行きます。そうすると電車に乗ったり、街を散策したりするわけですよね。目が見えない方や車いすの方が、どこまでスムーズに東京を楽しむことができるか、世界各国から厳しい目でチェックされるわけです。彼らが困ることがあれば、それだけユーザーフレンドリーじゃなかったと反省しなければならないし、新たな課題も見えてくると思います」。
たとえば、青山一丁目で車いすの人が待ち合わせをする際、地上に上がってくるまでに15分もかかるという。迷路のように入り組んだ東京の駅で、障がい者がどれだけ日々苦労しているか、発信力のあるパラリンピアンを通して、課題が浮き彫りになるかもしれない。
さらに、障がい者だけではなく、それ以上の問題点の気づきになるかもしれない、と為末さんは語る。
「障がい者社会と日本の高齢化社会の現状は、じつは非常に似通った状況にあります。健常者でも年齢を重ねれば目が見えにくくなる、体が動きにくくなる、歩けなくなる。いずれ僕らにはそういった未来が待っているはずなのに、その苦痛を理解することはなかなか難しいじゃないですか。本人にしかわからない苦労にどこまで寄り添えるか。高齢化社会の問題点も含めて、パラリンピックは課題をより見えやすくしてくれるはずですよ」。


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