37.5歳の人生スナップ Vol.65
2019.06.11
LIFE STYLE

元SEが飲食経験ゼロからの挑戦。UMAMI BURGER・海保達洋(48)の惚れ込む力【後編】

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海保さん
「UMAMI BURGER JAPAN(ウマミバーガー ジャパン)」のCEOを務める海保さん。

L.A.生まれの人気ハンバーガーレストラン「UMAMI BURGER(ウマミバーガー)」。アパレルブランドの輸入代理業を生業とする会社にいた海保達洋さん(48歳)は、西海岸で出合ったその美味しさに惚れ込み、日本に持って帰ろうと決意する。

そして自身も含め、飲食経験ゼロのスタッフたちとの挑戦がスタートした。

2017年3月、青山に第1号店をオープンさせるまでは試行錯誤の連続だったと海保さんは振り返る。

「ウマミバーガーの本部と直接やりとりをして、社内スタッフをアメリカに派遣し、日本にスキルを持って帰ってきてオープン……と流れを口で言ってしまえば簡単に聞こえますが、結構苦労しましたね」。

サンタモニカ店をベースにしたという青山店は、いわゆるハンバーガーショップ然とした雰囲気ではなく、小洒落たレストランのように落ち着いた空気が流れている。しかし、そこには本部との隠れた攻防戦があったのだとか。

内観
洗練されたダイナー。清潔感のある気持ちのいいスペースとなっている。

「店舗のデザインコンセプトが定まらないなか、店内に忍者の絵を描いてほしいとか、盆栽を置いてはどうか、と本部から言われたり、いろいろありました(笑)。でも、それじゃあ日本人が来たいと思う店舗にならない。私もデザインに口を出したりして、根気強く交渉してオープンまでこぎつけましたね」。

天井の内装
青山近辺のマップを下敷きとして、イラストを載せた天井の内装。デザインデータを作成したのは海保さん自身だ。SE(システムエンジニア)だった前職の経験が意外なところで活きたという。

日米間での積極的な意見交換があったからこそ、オリジナルとカスタマイズとをうまく混ぜ合わせた現在の店舗が完成した。もちろん軸にある「うまみ」というキーワードはぶらさずに。

内観
店内には屋号である「UMAMI」の文字。こちらは実際にサンタモニカ店にもあるデザイン。

飲食業未経験のスタッフばかりで苦労はなかったのだろうか?

「プロジェクトに参加したのは、シェフを除いて全員アパレル出身。たしかに運営のハードルは高かったと思います。ただ、何も知らないからこそ素直な気持ちで、ウマミバーガーの味や雰囲気をアメリカから日本に持ってくることに邁進できたんじゃないかと思います。飲食業の出身者だったら、日本のシステムでは……とか、考えちゃいそうじゃないですか。とはいえ、大変だったのは間違いないですけどね」。

試行錯誤を繰り返した甲斐もあり、オープンして以来、メニューの質も店舗の雰囲気も、アメリカ本部からの評価はとても良いという。

海保さん

「パティの味は本国とまったく同じに再現しています。さらに日本オリジナルなのが、バンズ。日本人の口に合うように……という点を加味して作りました。日本のバンズはうまい、と向こうのシェフにお墨付きをもらえたときはうれしかったですね」。

そして、いまもアメリカ本社との攻防戦、もとい濃密なコミュニケーションは続く。日本オリジナルメニューの考案や、ラグジュアリーな雰囲気のあるフードコート(=フードホール)への出店を図るなど、ハンバーガーを、ステーキやハンバーグのようにディナーとしても楽しんでほしいという想いをもって、日々進化を続けている。

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世界を相手に夢中になれるものを探す

システムエンジニア、アパレル、そしてウマミバーガー……それぞれ全く違う業種ではあるが、海保さんの中には一貫した価値観がある。それは「世界に目を向ける」という点だ。

「海外のいいものを日本へ、という視点は昔から変わっていない気がしますね。それこそパソコンに夢中になっていたときも海外の情報には常にアンテナを張っていたし、アパレルにしても飲食にしても世界を意識してしまう。自分がアメリカとか西海岸が好きっていうのもあるんでしょうけど」。

そのなかで出合った、ウマミバーガー。2015年に西海岸で食べたときの衝撃は、海保さんを行動に駆り立てた。

海保さん

「正直その頃、悩んでいたんです。ここ数年アクセサリー業界の伸び悩みがあって、シルバーアクセサリーだけではしんどいっていうのは会社としても実感があった。何か新しく日本の人を夢中にできるものを探していて、それが僕にとっては、L.A.で食べたウマミバーガーだった。あの日、僕のなかには挑戦へのメリットが見えたんです。それをきちんと計画に移して、実行しただけ……っていうとカッコ良すぎますかね(笑)」。

一見、人との出会いに身を任せ、気の赴くままに生きているようにも見える海保さんだが、その裏には惚れ込んだものへの強い自信と実行力がある。そして培ってきた経験は業界の垣根すらもするりと越えていった。

「いまの会社だけに通用するルールは、会社をやめてしまえば意味がない。だから、どこに行っても使える力を磨いておくことが必要かなと常に意識しています。それはパソコンの知識にしてもコミュニケーション能力にしても熱意にしても……普遍的でかつ人よりも得意な何かを身につける。あとは自分が惚れたものを信じることですね」。

自分が夢中になったものを、まっすぐ信じ抜く力。海保さんは熱く、そして冷静な目で今日もアメリカン・カルチャーに目を光らせている。


小島マサヒロ=撮影 藤野ゆり(清談社)=取材・文

# 37.5歳の人生スナップ# UMAMI BURGER# ハンバーガー
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