2019.06.10
LIFE STYLE

ハリウッド版新作の監督語る。ゴジラが「キングオブモンスターズ」の真の理由

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5月31日から公開の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』。公開3日間の興行収入は2014年の『GODZILLA ゴジラ』や2016年の『シン・ゴジラ』を上回っている
5月31日から公開の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』。公開3日間の興行収入は2014年の『GODZILLA ゴジラ』や2016年の『シン・ゴジラ』を上回っている(写真:©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.)

1954年に誕生、これまでに30作以上のシリーズが製作され、日本国内のシリーズ累計動員数が1億人を突破している怪獣映画の金字塔『ゴジラ』。2014年にはハリウッドが映画化した『GODZILLA ゴジラ』が公開され、全世界興行収入530億円という大ヒットを記録した。そしてゴジラ生誕65周年という記念すべき年となる2019年、続編となる『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が公開。日本でも公開3日間で興行収入9億円を超える大ヒットを記録している。そこで今回、マイケル・ドハティ監督に、日本が誇る国民的アイコンである『ゴジラ』への思いを聞いた。

小さい頃からの願いがかなった

――世界中で人気のある『ゴジラ』映画のオファーを受けたときはどうでしたか。

とてもワクワクしたし、緊張感もありました。でもいちばん大きかったのは、小さい頃からの願いがかなったということ。子どもに戻ったような気持ちでした。

――もちろん監督は『X-MEN2』や『スーパーマン リターンズ』といった超大作で脚本を担当しておりますし、『ブライアン・シンガーのトリック・オア・トリート』といったホラー映画の監督もされ、気鋭のクリエーターであることは知られています。それでも予算2億ドル規模の映画の監督に起用されるということは、抜擢という見方ができますがいかがでしょうか。

小さい作品でも大きな作品でも、感じるストレスやプレッシャー、情熱というのはみんな同じです。『スター・ウォーズ』のヨーダも言っていましたが、サイズは関係ないんです(笑)。

だから企画の大小にかかわらず、同じ情熱でやっている。ただ、確かに『ゴジラ』の場合は、65年の歴史もあるし、世界中に熱いファンがいるので、ほかの作品に比べるとプレッシャーは大きいかもしれません、でも個人的には映画の規模や、制作費の大きさなどは関係ない。監督にとっては、どの作品も大きく感じるものですから。

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――前作の『GODZILLA ゴジラ』にギャレス・エドワーズ監督が抜擢されたときも、彼はまだ長編映画を1本しか撮ったことがなく。新人のクリエーターを大抜擢したという印象がありました。レジェンダリー・ピクチャーズという会社は、才能があれば、若手であっても引き上げるという社風があるのでしょうか。

確かにそういうところはあると思う。2020年公開予定の『ゴジラvsキングコング』(仮題)だって、アダム・ウィンガードが監督を務めるけど、大きな作品の経験がそれほどあるわけではない。だから若くて情熱のある監督を抜擢するという傾向はあるんだと思う。

でも映画史をひもとけば、『ジョーズ』のときのスティーブン・スピルバーグ、『エイリアン』のときのリドリー・スコットといった例もあったわけだし。そういう意味では昔からそういう伝統はあったと言えるのかもしれません。若くて、今までチャンスを与えられてなかったからこそ、いいものにするべくより努力をすることにもなると思います。

本作でのモスラはゴジラを助ける重要な存在だ
本作でのモスラはゴジラを助ける重要な存在だ(写真: ©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.)

――エンドクレジットを見ていたら、ゴジラや、キングギドラを演じる役者が、「HIMSELF」と書いてありました。

あれよかったでしょ。僕が考えたんですよ(笑)。

ゴジラは世界の「大スター」

――東宝側としては、ゴジラたちは「東宝所属の俳優」であり、ハリウッドの映画化にあたって俳優を貸し出すような気持ちでいると聞きました。東宝の“大スター”であるゴジラたちと仕事をしてみていかがでしたか。

ゴジラって「世界の大スター」じゃないの(笑)。でも彼らは最高でしたよ。とってもプロフェッショナルだったし。ただキングギドラはディーバ(オペラの歌姫)だったんで、ちょっと気性が激しくて大変だったかな(笑)。

――東宝とのやりとりを聞きたいのですが。東宝がクオリティ・コントロールを行ったのが前回の『GODZILLA ゴジラ』からで、1998年の『GODZILLA』はデザインに関与できなかったため、デザインがゴジラとかけ離れてしまったという話を聞きました。そういうことも踏まえつつ、今回、東宝からここは守ってほしい、といった声などはあったのでしょうか。

東宝は最高のコラボレーターでしたよ。僕がアドバイスを請うと、参考資料など、必要なものを全部提供してくれた。今回はクリーチャーデザイン(登場生物・モンスターのデザイン)と、クリーチャーの描写について最終的なゴーは東宝が出せるという契約だったが、彼らは僕たちが出すものすべてを気に入ってくれた。本当に最高のパートナーシップでした。できれば今後、東宝映画の監督もしたいなと思います。そうすれば日本にも滞在できるしね(笑)。

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――東宝から資料を提供してもらったとのことで。おそらく貴重な資料の数々だったと思うのですが。ゴジラファンとしてこれは!というものもあったのではないでしょうか。

いちばん思い出に残っているのは小道具ですよね。オキシジェンデストロイヤーも見せてもらったんですよ! それと僕が大好きな1954年版の『ゴジラ』の絵コンテを見せてもらいました。それはまるで聖書を見ているようで。いにしえの人の筆致で書かれていたものを見るかのようなおごそかさがあった。ゴジラの生まれたときの、生のスピリットがそこに詰まっている感じがしました。

写真のラドンなど、多くの怪獣が登場するのも本作の特徴
写真のラドンなど、多くの怪獣が登場するのも本作の特徴(写真:©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.)

――ゴジラ、モスラ、ラドン、キングギドラと、人気の怪獣が4体も登場すると聞いたときはいかがでしたか? プレッシャーも大きかったのでは?

少しはプレッシャーも感じたけど、同じくらい喜びがあった。挑戦でもあったけど、栄誉を与えられることにワクワクもしました。僕はポスプロの後半になって、よく考えたらゴジラ映画初のアメリカ人監督だということに気づいたんですよ。

ローランド・エメリッヒはドイツ人だったし、ギャレス・エドワーズはイギリス人だったから。その重み、プレッシャーについては、そのときになって初めて感じたんです。でもある程度のプレッシャーというのはいい点もあるんです。緊張感を保てますからね。

東宝の怪獣は、どれも美しい

――キングギドラはゴジラの宿敵であり、恐ろしくも美しい存在ではなければいけないと思うのですが。そのあたりで気をつけたことはありますか。

東宝の怪獣は、どれも美しいですよね。だからわれわれは、彼らに魅力を感じるんだと思う。デザインもどこかなじみがあるようでいて、神秘的な、神話的な要素もある。それぞれにユニークですよね。しかもその個性とマッチしている形、色彩があります。

「キングギドラは東洋風のドラゴンの要素を反映させている」とドハティ監督は語る
「キングギドラは東洋風のドラゴンの要素を反映させている」とドハティ監督は語る(写真:©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.)

キングギドラというのは、ゴジラと同じようにデザインがユニークだからこそ、ここまでのアイコンになれたと思う。今回は、東洋のドラゴンをイメージしてデザインをしている。「ゲーム・オブ・スローンズ」じゃないけど、映画であれ、テレビであれ、西洋風のドラゴンはよく出てくるけど、東洋風のドラゴンはあまり出てこないですよね。今回のキングギドラはそういう要素を反映させています。

どちらかというと大蛇のような、エレガントな要素を付与しているんですよね。もともと僕は子どもの頃から東洋のドラゴンが大好きで。小さい置物をコレクションしてきたんです。だから東洋のドラゴンをリサーチしたうえでデザインをしたというわけなんです。

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――『GODZILLA ゴジラ』から始まった「モンスターバース」シリーズは、『キングコング:髑髏島の巨神』『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』、そして来年公開予定の『ゴジラvsキングコング』(仮)へと続きます。こうした世界観が、しっかり統一感を持った形でクオリティ・コントロールされているなと感じたのですが、例えば「マーベル」にはケビン・ファイギがいるように、「モンスターバース」におけるキーパーソンはいるのでしょうか。

ケビン・ファイギみたいな存在は本当に希有な例だと思うんです。子どもの頃からマーベルコミックを読んで育って。大変なファンでありながら、スマートなビジネスマンでもある。彼のような人はなかなかいない。だから「モンスターバース」の場合はチームとして、全体のクオリティ・コントロールを行っています。

とくに今回のプロデューサーにも名を連ねているメアリー・ペアレントと、このお話をやらないかとオファーをしてくれたアレックス・ガルシアなどは中心人物だと思います。この2人は撮影現場にもずっといたし、編集中もずっといた。監督を選ぶところから始めたので、中心的存在といったら彼らでしょうね。

そしてもちろん、すべての「モンスターバース」を始めたのは、レジェンダリーの創設者でもあるトーマス・タル。ご存じのとおり、今、彼は会社にはいないんですけど、プロデューサーとしてはまだ本作にも名を連ねていますよ。

「ゴジラ」が自然や科学への興味を培ってくれた

Michael Dougherty(マイケル・ドハティ)/1974年アメリカ・オハイオ州出身。2003年の『X-MEN2』や2006年の『スーパーマン リターンズ』などに脚本家として参加。
Michael Dougherty(マイケル・ドハティ)/1974年アメリカ・オハイオ州出身。2003年の『X-MEN2』や2006年の『スーパーマン リターンズ』などに脚本家として参加。2007年アメリカで公開の『ブライアン・シンガーの トリック・オア・トリート』で長編映画監督デビューを果たす。2015年には『クランプス 魔物の儀式』のメガホンをとっている (撮影:梅谷秀司)

――そもそもドハティ監督はどうやってゴジラと出会ったのでしょうか。

3歳か4歳の頃、ケーブルテレビで東宝のゴジラ映画を放映していて、それを見たのが最初の出会いでした。そして土曜日の午前中にはハンナ・バーベラ版のアニメーションのゴジラもやっていた。だから東宝映画とアニメ版の両方をテレビで見ていて。毎週土曜日はゴジラデーだったということです。

――ゴジラから影響を受けたこと、学んだことなどはありますか。

例えば科学、自然に対する興味を培ってくれたのは「ゴジラ」でした。それから神話的なアジアの文化への興味を深めるきっかけにもなりました。今の自分を形作る多くのトピックスを最初に育んでくれた存在でもあります。

――ドハティ監督はこの映画で、日本人がゴジラに感じているような畏怖の念や、神々しさもしっかりと描いているように感じたのですが。

僕自身、ゴジラをそういうふうに見てきたし、僕に半分、アジア人の血が流れているということもあるかもしれないですね。

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――勧善懲悪じゃないですが、ゴジラも時代によって人類の敵になったり、味方になったりと変遷を繰り返してきました。でも本作のように敵、味方の両方に見えるように描いたというのは、やはり1954年のオリジナル版に対する目配せという意味あいがあるのでしょうか。

その曖昧さが僕は好きで。だからこそ、よりゴジラも複雑な存在になる。でもゴジラが善悪であることが問題ではない。人類が善か悪かということが問題なんだと思う。ゴジラはそれに対してリアクションするだけなんだから。

――監督の正義に対する考え方というのは、白黒はっきりしたものというよりは、善悪両方あわせもったものであるということなのでしょうか。

間違いなくそうですね。白黒ハッキリとした見方ではなくて、グレーという部分も受け止めるタイプではありますね。さらにそのグレーにもいろいろなグラデーションがあると思っています。

「ゴジラB.C.」を作りたい

――まさに監督の映画は単純な勧善懲悪ものではなく、考えさせる映画だと思いました。

『ゴジラ』映画はそうでなくてはダメだと思うんです。

前作の『GODZILLA ゴジラ』に続き、芹沢博士役で登場する渡辺謙(右)。とサリー・ホーキンス(左)。
前作の『GODZILLA ゴジラ』に続き、芹沢博士役で登場する渡辺謙(右)。とサリー・ホーキンス(左)。国際色豊かなキャスティングとなっている(写真:©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.)

――カイル・チャンドラーさん、ヴェラ・ファーミガさん、ミリー・ボビー・ブラウンさんをはじめ、渡辺謙さん、チャン・ツィイーさんなど、国際色豊かなキャスティングとなりました。この背景を教えてください。

今回のキャスティングには本当に満足している。物語自体が、危機に直面したときはみんなで解決しないといけない。力を合わせて、いろんな人たちがひとつになる。だからいろんな背景を持つ人たち、いろんな年齢の人たちが登場するのは当然のことだと思っています。

――新たな設定で作り直すとしたらどんな『ゴジラ』映画を作りたいですか。

「ゴジラB.C.」という映画はいいかもしれないですね。人類とゴジラのファーストコンタクトの時代の作品を撮ってみたい。例えばそれは日本に将軍がいた時代でもいいけど。人類が初めてゴジラに接触したときに、昔の人たちはどうリアクションするのか、どうコミュニケーションをとるのか。もしかしたら他の怪獣と戦うために、人類が一緒に行動するのかもしれない。そういう映画に興味がありますね。

(文中一部敬称略)


壬生 智裕:映画ライター
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