オーシャンズとレジャー 37.5歳から始める大人の趣味入門 Vol.95
2019.02.03
LIFE STYLE

焙煎は真剣勝負。“1粒”にこだわった猿田彦珈琲のレジ横ブレンド

連載「レジ横コーヒーのおいしいヒミツ」
お目当てのドリンクをレジで注文、カウンターで受け取る。コーヒーショップのよくある光景。でもちょっと待った。せっかくなら、レジ横に鎮座している豆にも目を向けてみよう。そこにあるのは、各ショップが考えた“ベストなコーヒー豆”へのアプローチなのだから。

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恵比寿から発祥した、新進気鋭のカフェ「猿田彦珈琲」を知っているだろうか。都会的な装いに目を奪われるかもしれないが、豆へのこだわりも見逃せない。厳選されたスペシャルティコーヒーだけを使用し、なかには焙煎を鑑賞できる遊びのきいた店舗もある。今回は、そんな猿田彦珈琲の焙煎士・村澤智之さんに、おすすめのレジ横ブレンドを教えてもらった。

深煎りの本格派コーヒーに、甘みをチラリと覗かせて。「猿田彦フレンチ」

「猿田彦珈琲の目指しているのは、老若男女に愛されるカフェ。どんな人でも好みの味に巡り会えるように、さまざまなタイプの豆を取り揃えています」(村澤さん、以下同)。

年齢も性別も関係ない。トレンドを敏感に嗅ぎとりながら、古きよきコーヒーも押さえているのが猿田彦珈琲のスタイルだ。そのルーツは、創業者の大塚朝之氏の“インスピレーション”にあるという。

「大塚がカフェを開業するとなったとき、脳裏によぎったのが『老夫婦から孫の世代まで訪れて、垣根なくコーヒーを楽しんでいる場所』だったそうです。そのビジョンを形にするべく生まれたのが、猿田彦珈琲でした」。

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猿田彦珈琲の商品はどれも、この哲学と紐づいている。たとえば、こちらの「猿田彦フレンチ」もそうだ。“理想の深煎り”を追い求めて生まれたブレンドは、ビターになりすぎない絶妙な味わいへと落とし込まれている。

「最近はコーヒーの味わいも多様化し、浅煎りの複雑なフレーバーを楽しまれる方も増えてきました。一方で、昔ながらの苦いコーヒーを好まれる方も、やはり根強くいらっしゃいます。こちらは深煎りのしっかりしたコーヒー感を味わいながら、生豆と焙煎による甘みも感じられるブレンド。従来のコーヒーファンはもちろんのこと、どなたにもハマる一杯だと思います」。

しかし、猿田彦フレンチは業界でも類を見ないほどに深煎りの豆だとか。甘みを保てるのはいささか不思議だ。

「そこは配合と焙煎のなせる技ですね。すっきりとしたコスタリカをベースに、グアテマラ、ケニアなどを配合して重厚さを与えています。また、時間とともに味の変化を楽しめるのも特徴で、冷めるごとに角のとれた丸みのある口当たりになります」。


飲みやすさNo.1。世代を超えてシェアしたい「猿田彦マイルド」

猿田彦フレンチとは反対に、軽快な味わいを際立てたのが「猿田彦マイルド」だ。文字通りマイルドに仕上げた、中煎りのブレンドである。

「とにかく飲みやすい一杯です。何杯でもグイグイ飲めるような、すっきりとした口当たり。もちろん猿田彦フレンチも合いますが、猿田彦マイルドは特にミルクとの相性が良く、奥さんや親世代まで含めて、家族みんなで楽しめますよ。女性人気も高いので、ギフトに選んでも喜ばれるのではないでしょうか」。

ベースとなっているのはグアテマラの味。先ほどは“重さ”を出すのに使われていたため、飲みやすいコーヒーに抜擢されているのは意外かもしれない。

「焙煎の方法を変えることで、グアテマラの違った表情を引き出しています。また、生産国こそ同じグアテマラですが、厳密に言うと別のエリアで栽培されたものを使っています。コーヒーはその土地の標高、気候、土質の違いなどでガラリと味わいを変えるもの。そこから目的に合った豆を探し、研究を重ねてブレンドしています」。

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美味しさの追求にゴールなし。焙煎士の流儀

このように、わずかな違いも見逃さないコーヒーという生き物。その味を支える大役を担っているのが、村澤さんのような焙煎士だ。その日の天気、豆の状態、焼き色、香りなどを確認しながら、ベストな焼き加減を見極める。少しでも間違えれば、豆は簡単にヘソを曲げてしまう。

焙煎前の生豆。ここから焙煎することで、お馴染みのブラウンの色になる

「豆は工業製品ではないので、1粒として同じものはありません。同じ時間、同じ火加減で焙煎しても、仕上がりは毎回別ものになります。1回の焙煎にかかる時間は10分から20分ほどで、あっという間に過ぎていく。毎回、真剣勝負ですよ」。

たとえば、冬には豆も冷たくなっていて、暖かい時期と同じようには焙煎できない。細かな調整で安定した品質を創りだすのも、焙煎士の腕の見せどころだ。

必要なのは膨大なトライ&エラー。焙煎士になって3年目になる村澤さんは、これまでの膨大な焙煎の記録を、1回ずつノートに書き記してきたという。どの豆を、どのように焙煎したら、どう仕上がったか。それでも「一人前の焙煎士になるにはまだまだ」と笑う。

「美味しさの追求にゴールはありませんから。どこまでも続く道を歩いているような感覚ですよ。焙煎を繰り返せば繰り返すほど、そう実感させられます。もっと勉強と経験を重ねて、より美味しいコーヒーを皆さんに届けていきたいですね」。

どっさりと積み上げられた、黒いシミのついたノート。1冊目の表紙には「15.10.5〜」と書かれている。ゴールなきノートはこれからも、日付を更新していくのだろう。

村澤さんだけではない。猿田彦珈琲のブレンドは、豆の栽培から選別、配合まで、そこに携わる人びとの情熱の結晶だ。そのホットな味わいを、ぜひ楽しんでみてほしい。

知識を知れば知るほど、楽しみ方も広がっていく。コーヒーの世界は奥が深い。

【取材協力】
猿田彦珈琲

佐藤宇紘=取材・文

# オーシャンズとレジャー# コーヒー
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