ブライドルレザーを裁断し、重ねて、ステッチ留めしただけのシンプルなエルメスのトレイ。なのに、これほど優美な造形を獲得してしまうとは。こうしたものを作るためには、素材のクオリティを見極める目と、迷いのない裁断&縫製を実現する手と、素に徹し華美を抑える心が必要。つまり真の職人技が必要なのだ。
さてこのトレイをどこに置くか、何を入れるか。エルメスによれば「限定することなく自由に使ってほしい」とのこと。デスクに置いてペンを立てる? 玄関でキートレイにでもする? 自由だからこそ、この美しいトレイを活かすための想像力が求められる。
職人の修業というわけじゃないけれど、このトレイを手に入れたとたん、お洒落な空間作りの“トレイ”ニングが始まるのかもしれないね。
鈴木泰之=写真 柴山陽平=スタイリング