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2018.12.07

ライフ

個性派揃いの劇団「大人計画」で松尾スズキが見出す演劇の醍醐味

知らなきゃ男が廃るが、知ってりゃ上がる。気にするべきは、顔のシワより脳のシワ。知的好奇心をあらゆる方向から刺激する、カルチャークロスインタビュー。

「子供の頃から笑いを仕事にしたかった」

まつおすずき●1962年、福岡県生まれ。「大人計画」主宰。作家や演出家をはじめとして多方面で活躍。’97年に岸田戯曲賞を受賞。2004年に『恋の門』で映画監督デビュー。小説『クワイエットルームへようこそ』『老人賭博』『もう「はい」としか言えない』は芥川賞の候補にもなった。 スーツ11万5000円/ビームス F、シャツ2万2000円/ギ ローバー、タイ1万6000円/フランコ バッシ、靴6万9000円/ジョセフ・チーニー(すべてビームス 六本木ヒルズ 03-5775-1623)、ハット2万8000円/キジマ タカユキ 03-3770-2174、メガネ4万円/オプティシャン ロイド 03-3423-0505
作家、演出家、俳優、映画監督など、さまざまな分野で活躍する松尾スズキ。その活動拠点となる劇団「大人計画」が今年で結成30周年を迎えた。これまで大人計画は、宮藤官九郎、阿部サダヲ、皆川猿時、荒川良々、平岩紙といった多彩な才能を輩出してきたが結成時は素人集団。1988年に26歳で旗揚げした当時を松尾は次のように振り返る。
「福岡から東京に出てきて、何のコネもないなか雑誌で劇団員を募集したんです。集まったのは素人ばかり。俺のやりたいことがわからなかったんでしょうね。次々にやめていきました。でも、そのうちテレビの人たちが舞台を見に来てくれて、取り上げてくれたんです。大人計画の存在が電波に乗って広く伝わり、興味を持った俳優たちが集ってきた。そこに宮藤や阿部がいました」。
最初から松尾がこだわっていたのは笑いだ。子供の頃から「何でもいいから笑いに関する仕事に就きたい」と思っていたという。
「といっても、縦社会が厳しい芸人は自分に向いていない。それならばと、劇団を作って、作家性の強い笑い、ストーリーに組み込まれた笑いを手掛けたいと思ったんです」。
マルチプレーヤーの松尾を筆頭に劇団には個性派が揃う。はたして松尾は、劇団員を選ぶときに何を大切にしているのだろうか。
「どこか欠落を抱えた人間に惹かれますね。『僕、お笑いできます!』と自信満々で来られるより、『手を挙げて』と言ったときに手を挙げられない人が気になります。何か才能が眠っている気がするんです。自分では積極的に表現できないけれど、セリフを与え演出をつけると予想以上の面白い演技を見せてくれることがある。それが演劇の醍醐味なんです」。
12月18日(火)から舞台の上での笑いを追求してきた大人計画と松尾スズキの歴史を振り返るイベント、『30祭』が開催される。代表作の上映やトークショーなど多くの企画が予定されるなか、目玉は松尾スズキのコンサート。その内容はというと。
「最近、ミュージカルの連中と仲良くなって、彼らのスペックを活かしたものをやりたいと思ったんです。ジャズとかミュージカルのスタンダードを、俺がフルバンドを従えて歌うっていうのも、ナンセンスで面白いかなと思って」。
40代のときに倒れ体力の限界を感じたそうだが、今年の12月で御年56歳。6月に上梓した小説『もう「はい」としか言えない』は芥川賞候補になるなど快進撃は続きそうである。
「今、40代の最盛期と同じくらいの量の仕事をしてるんです。50代も意外と元気(笑)。『30祭』も意欲的に笑わせにいきたいですね」。
松尾スズキ+大人計画30周年記念イベント
『30祭(SANJUSSAI)』

日程/2018年12月18日(火)〜30日(日)
会場/スパイラル(東京都港区南青山5-6-23)
※イベント詳細は大人計画(http://otonakeikaku.jp)へ
「松尾スズキ」として活動して30年、大人計画も30周年を迎えた平成30年の冬に開催される記念イベント。劇団の30年の歩みがわかる大博覧会、『愛の罰』などの名作上映会、トークショー、松尾スズキとそのファミリーによるコンサートなど、多岐にわたるコンテンツが用意される。
柏田テツヲ(KiKi inc.)=写真 安野ともこ(コラソン)=スタイリング 矢口憲一=ヘアメイク 村尾泰郎=取材・文


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