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2018.11.27

ライフ

神に愛された世界チャンピオン 〜AI Forever〜

ただくつろぐだけでも気持ち良い時間を過ごせ、サーフィンをした瞬間に人生は大きく変わってしまう。ひとつのシーンからそんな海の魅力を発見していくコラム。

今回は「AI Forever」


当初、死因はデング熱だとされていた。2010年、32歳の若さで急逝した元世界チャンピオンのアンディ・アイアンズのことである。その後も明確な死因は公表されなかったが、今年発表された映像『KISSED BY GOD』(邦題『神に愛された男』)が新しい事実を告げる。要因のひとつは薬物依存だったというものである。
カウアイ島で一文無し状態の家に生まれながらサーフィンで人生を変え、しかし長く抱えていたそううつ病との正しい向き合い方を獲得できず、精神安定剤を含めた薬物の過剰摂取が体を蝕んでいったのだ。リスキーな波へ勇猛果敢に突っ込む姿に勇気づけられた者は多く、時代をリードしていたケリー・スレーターとの名勝負も数多ある。
連勝街道を突き進むケリーが精緻なマシーンなら、対抗馬のアンディは野性味に溢れたサーファー。デカダンスなサーフスタイルで波を手なづけ世界を魅了したが、自身の精神は制御できなかったことが、残念である。

1978年にカウアイ島で生まれ、2010年に逝去したアンディ・アイアンズは、そううつ病を患いながら世界チャンピオンに3度輝いたプロサーファー。本作は、妻リンジーや離婚した両親、実弟のブルース、旧友などアンディの身内から多くの言葉を引き出したドキュメンタリー作品。現在iTunesなどで日本語字幕版を購入できる。またリンジーが中心になり、精神疾患などに悩む若い世代のためにアンディ・アイアンズ財団が設立された。

 
トム・サーベイ=写真 小山内 隆=編集・文


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