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2018.10.15

ライフ

週末に移動図書館をはじめた男の、「今がベスト」な生き方とは?

連載「37.5歳の人生スナップ」
人生の折り返し地点、自分なりに踠いて生き抜いてきた。しかし、このままでいいのかと立ち止まりたくなることもある。この連載は、ユニークなライフスタイルを選んだ、男たちを描くルポルタージュ。彼らの生活・考えを覗いてみてほしい。生き方のヒントが見つかるはずだ。
「37.5歳の人生スナップ」を最初から読む

会社員が移動図書館を手掛けることになったきっかけとは

「ここの本棚は、すべて僕がセレクトしているんです」。
そう言って中野健二郎さん(39歳)は、陳列された本をひとつひとつ丁寧に説明していく。本棚には、タトゥーや銭湯などのカルチャー本がずらり。かと思えば、岡崎京子やさくらももこといった少女漫画が見え隠れしており、中野さんの、あらゆる「好き」が詰め込まれていた。

中野さんは現在、会社員としてWebデザインの仕事に従事する一方で、休日は「PARADISE BOOKS」という移動図書館の運営や、ブックセレクトの活動を行っている。
代官山駅からほど近い、ここ「P.B Restaurant」のブックセレクトも、中野さんが手掛けているもののひとつだ。

最近何かと話題のストリートアーティスト、バンクシーに関する本が並ぶなど、本のセレクトは時事性も忘れない。並べられた本はすべて、中野さんの私物だという。
「持ってる本ですか? どれぐらいだろう。ひと部屋いっぱいになるぐらいはありますね」。
中野さんは、自身の愛読書でもあるコレクションを移動図書館として、各地で出店、提供している。2017年だけでも野外フェスに数多く参加した。テントやライトで装飾された「チルスペース」の設営もすべて中野さんによるものだ。
テントの中でくつろぎながら読書ができる。
これまでの活動をまとめた冊子も見せてもらった。すべて中野さんが撮影した写真だという。
「最近は活動も少しずつ広がって、スペースを設置するための費用などは支援してもらえるようになりましたが、最初はほとんど自分の持ち出しでやってました」。
聞けば、特に移動図書館で何かを販売するわけでもないという。つまり、ほとんど無償の活動なのだ。サラリーマンとして働く傍らで、移動図書館を始めた経緯を教えてもらった。


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