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2018.08.22

たべる

熱海に佇む一流店。「鮨 梅清」で“職人の遊び心”を堪能する贅沢

海の街<熱海編> Vol.10
男には、家でも職場でもない、サードプレイスが必要だ。それは解放的で、発見があり、人との出会いのある場所であってほしい。その候補として挙げたいのが、熱海である。今回は青山からポートランドへ、そして熱海へ辿り着いた職人が提供する極上寿司のお話。
「海の街<熱海編>」をはじめから読む

玉砂利の敷かれた入り口を抜け、のれんをくぐると、白木の上質なカウンターが迎えてくれる。今年5月末にオープンしたばかりの「梅清」は、熱海の賑わいの中心地にありながら、洗練された雰囲気をまとう寿司屋だ。

カウンターを挟んで店主の芹澤幸光さんと一対一で向かい合う。芹澤さんが寿司を握り始めると、店内の空気がピンと張りつめる。いつも行く居酒屋とは明らかに異質な雰囲気に、背筋が伸びるような思いになった。

しかし、話してみると、芹澤さんはとても気さくな職人さんだ。素材、握りの技術、いろいろなことを丁寧に教えてくれる。
「アワビ、サザエ、伊勢海老。ここには熱海港や網代港で水揚げされた新鮮な魚介類がたくさんあります。特にこの辺りのサザエは絶品。天然の黄金出汁はいろいろなメニューに使えますしね」(芹澤さん、以下同)。

まずは“究極の食中酒”と地物のアワビを堪能

まずは寿司に欠かせない酒選びから。「梅清」には純米吟醸を中心に、白ワイン、酒粕焼酎、吟醸酒と地物の梅で作った梅酒まで、それぞれこだわりぬいた逸品が揃っている。

「究極の食中酒を、どうぞ」。迷っている筆者を気遣い、芹澤さんが選んでくれたのは、宮城の特別純米酒「伯楽星」。酸味を抑えた柔らかな口当たりだけど、それでいて甘すぎない。まるで寿司を楽しむために作られたようなバランスのいい日本酒だ。

これに合わせ、酒のアテに出してくれたのが地物の煮アワビの刺身、そしてサザエの出汁と溶き卵を合わせた茶碗蒸しだ。アワビは肝と一緒に舌に運べば旨味があふれ、茶碗蒸しは優しい海の香りが鼻孔をくすぐる。


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